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立教大学、ビル・ゲイツ氏に名誉博士学位を授与――学生に向けてゲイツ氏が特別講演、質疑応答も

2000年06月16日 00時00分更新

文● 編集部 桑本美鈴/撮影 小林伸也

立教大学は、米マイクロソフト社会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏に名誉博士学位“Doctor of Humanities”を授与、6月16日に学位授与式を同大学内で行なった。

学位章のフードを授与され、ご機嫌のゲイツ氏。授与式、およびその後行なわれた講演会、質疑応答でも始終にこやかだった。昨日とは大違い?
学位章のフードを授与され、ご機嫌のゲイツ氏。授与式、およびその後行なわれた講演会、質疑応答でも始終にこやかだった。昨日とは大違い?



同大学の名誉博士学位は、“文化の向上または人類の幸福のために顕著な貢献をした外国人”に与えられるもの。これまでに49名の外国人に授与しており、ゲイツ氏は50人目に当たる。名誉博士学位には、“Doctor of Divinity”(名誉神学博士)、“Doctor of Science”(名誉理学博士)など専門分野に特化したものもあるが、ゲイツ氏に授与された“Doctor of Humanities”(適当な日本語訳がないため通常は英語表現のみ)は、特定の専門分野に限定せずに広く人類の進歩と社会の発展に尽くした人に与えられる。

名誉学位授与式では、立教大学総長の大橋英五氏が、名誉学位授与の辞を記したサイテーション、学位記、学位章をゲイツ氏に授与した。

学位記を手にするゲイツ氏学位記を手にするゲイツ氏



立教の校歌『栄光の立教』を会場内の全員が斉唱。ゲイツ氏も声を出していたかどうか定かではないが、ちゃんと“我等が母校 見よ見よ立教”と口を動かしていた。口パク?立教の校歌『栄光の立教』を会場内の全員が斉唱。ゲイツ氏も声を出していたかどうか定かではないが、ちゃんと“我等が母校 見よ見よ立教”と口を動かしていた。口パク?



特別講演会で、学生に向けてメッセージ

学位授与式の後、立教学院創立125周年を記念し、ゲイツ氏の特別講演会が行なわれた。ゲイツ氏は、“次世代インターネットへの挑戦”と題し、会場の立教大学や立教高校などの学生に対し、熱弁を振るった。

講演会会場は学生を中心に満員御礼。立教大生はもちろん、一般からの聴講希望者が殺到したため、来場者は抽選により決定された。立教の学生の間でも6~7倍の競争率だったという
講演会会場は学生を中心に満員御礼。立教大生はもちろん、一般からの聴講希望者が殺到したため、来場者は抽選により決定された。立教の学生の間でも6~7倍の競争率だったという



講演の冒頭、ゲイツ氏は「今日は名誉ある博士号授与だけでなく、皆さんとの対話を楽しみにして来た。私自身は大学を卒業できなかったのでうれしい。父は喜ぶだろう」と挨拶講演の冒頭、ゲイツ氏は「今日は名誉ある博士号授与だけでなく、皆さんとの対話を楽しみにして来た。私自身は大学を卒業できなかったのでうれしい。父は喜ぶだろう」と挨拶



「今は変化の時代だ。変化は技術によってもたらされる。PCは個人用のツールとしてインターネットと接続されているが、ビジネスや学習、エンターテインメントも変革させている。自動車やTVなど、どの技術革命よりもはやい速度で主流として使われるようになった」

「現在、社会はデジタル世界へ移行している。例えば、今後の子供たちはCDやレコードを不思議に思うはずだ。音楽はデジタルデータ化したほうが質の劣化もなく物理的な問題も減る。カメラもデジタルに移行している。百科辞典もそう。インターネットの辞典のほうが紙の辞典より多くの情報を収録しているし、検索も楽だ。デジタル媒体はコストが低いだけでなくデータを共有もできるメリットがある」

「デジタル化されていないのはメモを取る行為だ。現在、PCや他のデバイスを使ってメモを取る人は少ないが、それは適切なハードが少なかったから。われわれが開発するタブレット型のPCにより、メモをデジタル化できる。これによってビジネスや学習のやり方も変わるだろう」

「このように、現在は革命の出発点にある。今後10年間は、過去25年間以上の変化が起こるだろう。この技術進歩は、コンピューターのチップの奇跡によってもたらされた。チップは2年でコストが半減し、2倍の処理能力になる。これにより10年間で大きな進歩をもたらせるだろう」

「私は学生時代、コンピューターを使うチャンスに恵まれたが、当時はコンピューターは消極的に見られていた。コンピューターは政府や大手企業のものだったのだ。それが個人のツールに発展したことで、創造性が高まり、情報を共有できるようになったのだ」

「現在のコンピューターは、まだ原始的なものだ。大きいし、物を見たり対話したりできない。自身の世界観も持っていない。これらは今後10年のソフトの開発で変わる」

「今後インターネットはブロードバンド接続が主流になるだろう。また、ほとんどの家庭ではワイヤレスでインターネット接続が実現されるだろう。タブレットPCやスクリーン付き携帯電話を持ち歩いて、どこからでもインターネットにアクセスできるだろう。PCは、今後マイク機能が付き、文章編集しながら対話できるようになる。カメラ機能も付くだろう。画面もよくなり、よりよいユーザーインターフェースが実現する」

「インターネットは急速に変化している、5年前、自社のURLを表記した看板や広告はあっただろうか? 今や、当たり前のように看板や広告にURLが表記されている。現在インターネットの波は成熟した第3フェーズに突入している。今後は、ウェブサイトを自分用にカスタマイズした形で閲覧でき、見るだけでなく注釈を付けたり対話したりできるようになるだろう」

「今後5年間に出荷されるさまざまな製品は、手書き入力や言葉の理解、視覚といったナチュラルインターフェース機能を搭載するだろう。インテリジェンスをPCに取り込むことが重要。ビジネス環境では、すべての情報がデジタル化されたペーパーレスや、PCを利用したコラボレーションであるデジタルダッシュボードが実現する」

「家庭環境では、魅力的なエンターテインメントアプリケーションが登場するだろう。ネットワークも進化し、同じTV番組を別々の場所で観ている友人同士が、お互いにその番組について意見を交換できるようになる。SF本のような話がだが、このようなシステムの開発は実際に行なわれている。ネットワークそのものが抜本的に変わっていくだろう」

「インターネットはすべての人たちに大きな影響を与える。さまざまなデバイスでインターネットに接続できるようになる。また、すべての経済がインターネットに接続すればデジタルエコノミーとなるだろう。若い人たちがうらやましい。素晴らしい未来の第1歩を踏み出しているのだから」

「1日に受け取る電子メールは何通?」ほのぼのした質問にゲイツ氏笑顔で回答

講演の最後に、来場した学生たちからの質問にゲイツ氏が答える質疑応答の時間が設けられた。普段の記者団からの手厳しい質問とは打って変わった素朴かつユニークな質問に、ゲイツ氏は始終にこやかに回答した。

学生からの質問に答えるゲイツ氏学生からの質問に答えるゲイツ氏



――現在の情報社会のメインツールであるPCは、21世紀になってもメインツールであり続けるのでしょうか。優れた携帯電話などが出てきているので、今後もメインツールでいられるのか疑問です

ゲイツ氏「PCはフルスクリーンのデバイスだ。例えば、Microsoft Wordやビデオ編集といったツールを操作するにはフルスクリーンが必要。一方、例えばiモードは素晴らしいツールだ。この2つは補完的な関係にある。将来は、TVや携帯電話、PCがワイヤレスネットワークで接続され、主要なツールとして使われるだろう。自分が関心を持っているものの情報すべてを1つのデバイスで入手するのは難しい。将来は小さなスクリーンとフルスクリーンの製品が共存していくだろう」

――2児の父親であるゲイツ氏に聞きたいのですが、息子さんが大学を中退して会社を設立したいと言ったらどうしますか?

ゲイツ氏「私はハーバード大学を一時的に休学しているのであって、今でも休学扱いなんだ。いつでも戻れる。追い出されたわけではないよ(笑)」

「私は当時、会社設立についていかに決意を持っているかを両親に示した。それが悲惨な結果にならないと両親はわかってくれ、私を支持してくれたんだ。私の両親と同じように対応したいね」

――PCは世界の言語を超えられるのでしょうか。機械翻訳はどこまで進化するのでしょう

ゲイツ氏「共通の言語がない限り、その問題は残る。機械翻訳については、完璧なものを実現するためには世界を理解しなければならない。これはAIの問題だが、AI自体はさほど大きな進化を遂げていないのが現実ではないだろうか。私は今後20年間も完璧な機械翻訳の実現には懐疑的だ。だが、英語の活用自体はインターネットのおかげでさらに普及するだろう。第2言語を学んでも無駄にはならないと思うよ(笑)」

――今までのいちばん大きな失敗は何ですか? またそれをどうやって克服するのですか?

ゲイツ氏「確かに、私は学生時代もビジネスの世界に入っても、たくさんの間違いを起こしてきた。その都度われわれはお互いを責めたりしないで新しいアプローチを出してきた。以前OS/2と決別したが、私にとってはいい経験だった。当時は恐ろしい経験だったけどね」

「『マイクロソフト製品は、バージョン3で成功する』とよく言われるが、何度出してもだめな製品もあるし、最初から成功する製品もある。チャレンジが重要だ。ポール・アレンと私はいっしょに夢を持って会社を設立した。その後も多くの友人に恵まれた。現在は社長のスティーブ・バルマーが活躍してくれるおかげで、私はプロダクトに専念できる。今後出てくる問題はバルマーといっしょに解決していく。信頼関係が重要。危機を機会に変えていきたいね」

――失敗しても落ち込まないの?

ゲイツ「私は楽観的な人間かもしれないが、いかに合理的にこの世界を見るかが重要だと思う。落ち込まないわけではないが、問題が起こったときはできるだけ落ち着いて対処したいと考えている」

――ソフトウェアのエンジニアにはどんな発想が必要?

ゲイツ「3つ挙げられる。まず、私は多くの本を読んだ。読書が好きで、若いころはいろいろなコンペに参加して何冊本を読むか競い合ったね。私以外は全員女の子だったよ。それから、数学が好きだった。モデルを構築しアルゴリズムの理論について考えた。数学的な物の見方はコンピューター科学において重要だ。そして、素晴らしいエンジニアたちのソフトを見た。また私のソフトはエンジニアたちに見てもらい、どうしたらいいか指摘してもらった。そうするとよくなるんだ。何事にも上には上がいる。常に学習し多くのソフトを書くようにした。若いころから集中的にやれば高いスキルを得られるだろう」

――マイクロソフトの今後の方向性について教えてください

ゲイツ氏「答えはシンプル。素晴らしいソフトウェアを実現することで世界を変える。確かに、ソフト以外に対して投資をしているが、われわれが専念しているのはあくまでもソフト。完璧なソフトが実現されるまで、この事業に特化したい」

――デジタルデバイド*についてどう考えていますか?

*インターネットへアクセスでき、使いこなせる人と使えない人との格差のこと

「学生でアクセス権を持っていない人がいるが、われわれはすべての学生にポータブルPCとインターネットへのアクセス権を持たせたい。すべての学生に提供するには時間がかかるが、支援していきたい。PCの低価格化によりさまざまな国や地域で人々がPCを入手できるようになってきている。また、米国の子供たちは近くの図書館でインターネットを利用できる。生徒ひとりひとりがあらゆる家庭でPCを持つことが究極の目的だ」

「日本の学校では、まだまだPCが普及していなくて驚いている。大学レベルでもそれほど普及していないのは不思議だ。大学レベルなら簡単に実現できるはず。しかし、初等/中等学校レベルでは確かに大変なので、努力しなければならない」

「先進国以外では、優先順位を考えなければならない。先進国以外では、医療が発達していないがために病気で死亡する子供がたくさんいる。どのデバイドを取り上げるかという際、“健康”と“教育”なら、健康のほうが大事だろう。まず健康に取り組まなければ。そこなら大きな貢献ができる。現在は資金援助を努力している」

――PCによって、対面コミュニケーションがなくなるのでは?

ゲイツ氏「なくなるとは思わない。人々はいつも同じ時、同じ場所にはいられない。PCを使ったコミュニケーションは、わざわざそこに行かなくてもいいというメリットはある。特にビジネスでは有効に作用し、仕事がはやく終わる。そうすれば、はやく家に帰れて、子供たちと対面コミュニケーションができるよ(笑)。それに日本の人は、世界のどの国の人よりもグリーティングカードを多く出しているよ。PCが普及した現在でも、その数は減ってないでしょ(笑)」

――いま欲しいものは何ですか? これからの目標は?

ゲイツ氏「(欲しいものは)プライバシー! (笑)。目標は、まず私の子供たち(娘4歳/息子1歳)をいかに育てるかが私にとってのチャレンジだ。仕事では、よりよりソフトを作ること。私のゴールは完璧なソフトを作ることにある。これは長いマラソンだと考えている。まだ13km程度しか走ってない。まだまだ改善しなければならない」

――電子メールは1日何通もらう?

ゲイツ氏「1日に100~200通。そのうち30~40は返答が必要なメール。その他のほとんどは売上などの報告で、返答の必要がないもの。メールの処理には2時間かけているね」

――最後に、日本の若者にメッセージをお願いします

「皆さんはこれからの将来、過去の人たち以上に明るい未来に向けて努力できるだろう。素晴らしいツールで皆さんの成長を支援したい」

講演終了後、代表の学生からゲイツ氏へ花束が贈呈された。来場者からの割れんばかりの拍手の中、ゲイツ氏は笑顔で壇上から退場した。

花束を受け取るゲイツ氏
花束を受け取るゲイツ氏



立教大学は、聴講を希望しながら当選にもれた人たちや、直接会場に来られない人たちのために、インターネットによる同時中継を同大学のホームページで行なった。また、同内容の録画映像は、6月17日正午よりホームページからオンデマンド配信される予定。

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