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JASRAC、音楽の電子透かし技術に評価を加える国際プロジェクト“STEP2000”を実施

2000年06月16日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)は15日、デジタル音楽流通に関する電子透かし技術の評価プロジェクト“STEP2000(Society, Technical Evaluation for Promoting practical utilization of digital watermark)”を発表した。デジタル音楽流通に関わる事業者が、電子透かし技術を選別する際の指針となるよう、商品化された実績を持つことを条件に、一般企業から電子透かし技術を募集するというもの。提出された技術に対しては性能テストを行ない、一定の基準を満たしたものについては“認定証”を発行する。

JASRACのほか、著作権管理団体の国際組織であるCISAC*やBIEM**が、同プロジェクトの運営主体として名を連ねているほか、米国の著作権管理団体ASCAP***など11ヵ国13団体が後援することを表明している。すでに国内外でインターネットを利用した音楽配信サービスは始まっているが、著作権管理団体が主体となった、国際評価な電子透かし技術の評価プロジェクトは、今回が初めて。

JASRAC理事長の吉田茂氏。JASRACは昨年6月、“DAWN2001”という構想を発表した。これは、デジタル音楽配信業者に対し、コピープロテクト、利用報告、電子透かしの埋め込みを条件として、利用許諾を行なうというもの。電子透かしについて、“STEP2000”で評価されるということは必要条件にはならないが、“デジタル音楽流通に関わる事業者が電子透かし技術を選別する際の指針”という意味では、同構想の実現に向けた布石でもある JASRAC理事長の吉田茂氏。JASRACは昨年6月、“DAWN2001”という構想を発表した。これは、デジタル音楽配信業者に対し、コピープロテクト、利用報告、電子透かしの埋め込みを条件として、利用許諾を行なうというもの。電子透かしについて、“STEP2000”で評価されるということは必要条件にはならないが、“デジタル音楽流通に関わる事業者が電子透かし技術を選別する際の指針”という意味では、同構想の実現に向けた布石でもある



今回のプロジェクトに関して、JASRACの委託により、事務局業務は(株)野村総合研究所が、電子透かし能力評価のための実験業務はNRIと(有)日本音響研究所が担当する。
実験参加企業は、プロジェクト事務局が提供する課題曲(WAVE形式)に対し、電子透かしを入れ、電子透かし情報を挿入/抽出するための機材とともに提出する。電子透かしによるプロテクトは、ヘッダーにデータを挿入する方法と異なり、データの除去や改ざんが困難な一方で、データの一部を変換することによる音質の低下などの問題があった。今回のプロジェクトでは、データの耐性のほか、音質、透かし情報の挿入/抽出処理時間、他社の透かしを上書きしても各々管理が行なえるか――といった項目に審査を加える。

募集期間は7月14日までで、実験参加費は無料。実験は9月14日までに終了する予定。性能テストをクリアした技術に対して“認定証”を発行するほか、9月15日以降に企業名を公表する。

今回のプロジェクトは、国際的にも信用できる電子透かし技術を認定しその普及促進を狙うものであるが、レコード会社やデジタル機器メーカー100社以上が加盟する国際的な業界団体SDMI***でも、著作権保護ルールの策定と同時に、技術の検討や標準化を行なっている。電子透かし技術については、米Verance社****の技術を採用することを決定し、すでにこれを採用したインターネット音楽配信サービスをスタートさせた内外のレコード会社もある。

記者会見では、SDMIが進める標準化作業とどこが違うのか、互いに矛盾しないのかといった質問が挙がった。これに対しJASRAC側は、「SDMIの目的は技術の標準化作業であるが、“STEP2000”は電子透かしの普及啓発活動ということで目的が違う。協力しないということではなく、透かし技術の向上に繋がるという意味では、相互補完的なプロジェクトになる」とした。“STEP2000”プロジェクトでは、ワールドワイドで電子透かし技術を募集するが、Veranceがこれに応募するかどうか、また仮に応募した場合でも、SDMIに加え著作権保護団体のお墨付きが下りるのかどうか、今後の動向が注目される。

*CISAC:Confederation Internationale des Societes d'Auteurs Compositeurs **Bureau International des Societes Gerant les Droits d'Enregistrement et de Reproduction Mecanique

**American Society of Composers, Authors and Publishers

***Secure Digital Music Initiative

****SDMIは'99年8月、知的財産権保護のためのシステムを開発を行なう米ARIS Technologies社の電子透かし技術を採用すると発表した。ARIS Technologiesは'99年11月、同じく電子透かし技術などの開発を手掛けていた米Solana Technology Development社と合併し、新会社“Verance”を設立した

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