東京有明の東京ビッグサイトで“第8回産業バーチャルリアリティ展”が14日から開催されている。単なるエンターテインメント用途ではなく、事業向けのシミュレーターや立体画像、立体音響などの最新の製品や技術を展示するイベントで、43社が出展した。
リアルな立体映像に多くの来場客も注目
3D表示を行なうための仕組みには偏光グラススコープを使う方法と、画像側で立体像を見せる方法の2通りがある。前者にはグラスなしでは意味をなさないことや、装着者に重さなど負担をかける点が、後者には目が疲れやすいというデメリットがあったが、状況はあまり変わっていないようだ。そんな中で注目されたのが、ゲーム機などアミューズメント機器製造のサミー(株)が展示した『VOLUMATRIX』だ。凸面鏡を利用して、実際とは異なる位置に像を結ぶようにするシステムで、もちろんグラスレスでオリジナルの像に処理を施す必要もない。会場ではそのリアルな立体映像に多くの来場客が注目していた。また複数のパネルによる映像を特定角度の光源で照らし出すことでホログラム映像を生み出す『Zebra Imaging Mosaic』などのシステムも展示されていた。
サミーの『VOLUMATRIX』。中央に見えるミニカーなどのオブジェクトは実は3D映像。その下に置かれた実像を離れた位置に見せることができる。角度を変えると下に実物が見えて、立体像が消えていく。前方投影型もある |
重さや粘性をフィードバックする空間GUIシステム
3D情報をコンピューターに入力する手段としては、3Dレーザースキャナーやデジタイザー、フォースフィードバック機能が付いた、日本バイナリー(株)の『PHANTOM』などの機器がおなじみだが、今回新しいデバイスが登場していた。フォースフィードバック機能付き入力デジタイザー『PHANTOM』のオプション。モニターの映像を投影して表示でき、VR空間と操作の手元を重ねることができる |
ひとつは(財)イメージ情報科学研究所が展示していた、3次元マウスとでもいうべき『空間GUIシステム』。8本のワイヤーで宙づりになったボタン付きのグリップをマウス代わりに操作するもので、3次元の動きを入力できるだけでなく、各ワイヤーに直結したモーターによるフォースフィードバック機能によって重さや粘性を感じることができる。システムが大がかりなのは今後の課題だが、面白い存在と言えそうだ。もうひとつはポールに固定された液晶パネルを用いた『WindowVR』。液晶パネル内のセンサーが傾きを関知し、その動きに応じた映像を液晶パネルに表示する仕組みだ。
3次元のフォースフィードバック機能付きの『空間GUIシステム』。中央のグリップをつかんで操作する。物体の重さを感じたりできるためエレクトリックコマースなどでの応用も考えられている |
アームに取り付けられた液晶パネルの動きをそのまま入力データにできる『WindowVR』。ジョイスティック代わりのグリップも付いている |
このほか、鉄道や道路などの運転状態を再現するシミュレーターや、バイクの動きを再現するライド型のムービングシミュレーターなどが展示されていた。詳細は写真を参照のこと。なお、このイベントは16日の金曜日まで開催されている。
3次元CGを透過型のスコープ上に投影して、実空間と重ね合わせることができる可視化システム。CGのブロックと実際のブロックを重ねるデモを行なっているところ |
3次元CG世界を歩き回らせることができるウォーカーのライブラリー『World Walker』。30種類のキャラクターが用意されており、歩く・座る・ドアを開けるなどの日常動作を指定できる。VR空間の検証などに使う |
右の医療診断映像をリアルタイムでレンダリングして色づけなどを行なうシステム |
ローランド(株)は自社開発の立体音響システム『RSS』を展示した。音をさまざまな方向に飛ばすことができる |
医療分野で広く使われている三洋電機AVシステム(株)のメガネレス3Dディスプレイー。モニターの前面に装着した液晶パネルによって右目用と左目用に像を分割させる仕組み。上に取り付けたCCDカメラでユーザーの動きを追随して、その目の位置に合うように自動調節される |
3次元レーザースキャナーも展示された。磁気センサーとレーザー光線を連動させてデータを生成する |
変わった格好だが、これもライドシミュレーター。方向や傾きをセンスしてVR空間に入ることができる |
もちろんおなじみの乗り物シミュレーターも展示された。鉄道や道路、工事車両用などが実用化されている |
富士重工業(株)が展示したバイク型のライドシミュレーター。小さいスペースで3次元の動きを再現することができる |