キヤノンアートラボは、28日まで、東京・南青山のスパイラルガーデンにおいて、第4回プロスペクト展“DRIVE”を開催している。
南青山のスパイラルガーデンで開催中の第4回プロスペクト展“DRIVE”。床に映る緑色の映像は、湾岸戦争などの空撮映像を編集しているらしい |
“DRIVE”は、ニューヨーク在住のメディアアーティスト、ジョーダン・クランダル氏による作品。これは、映像、ビデオ、モーショントラッキング*、暗視ビジョン*、ウェアラブルカメラ*、サーモイメージカメラ*などのテクノロジーを駆使して編集した映像をDVD化し、会場の空間全体を使って表現するビデオインスタレーションである。
“DRIVE”とは、何かを動かす、追いたてるという意味だが、その対象となるものには目に見えるものと、目には見えないものがある。それは機械であったり、テクノロジーであったり、心理的な感情であったり、欲望であったりする。なにげなく見過ごしがちな人の無意識な動作や欲望が、テクノロジーの観点からどのようにデータ化され、それぞれの動きを関係付けることができるのか。
モーショントラッキング*:高速で動く物体を物理的な軌跡としてリアルタイムに記録する技術。この技術をフイルム編集の段階で使用するのは今回がはじめての試み。コンピューターが人体の動きに追従して、その動きを映像にオーバーラップさせる
暗視ビジョン装置*:軍事技術を手掛けているITT社によって開発された、完全な暗闇でも機能するビデオカメラ
ウェアラブルカメラ*:超小型で、近接した映像を撮影できる装着型のビデオカメラ
サーモイメージカメラ*:物体の表面温度や人間の体温を熱パターンで可視化し映像化するカメラ
見る者は見られるものでもあるという表裏一体の関係
舞台中央のメインスクリーンには、モノクロの映像が映し出されている。都会の日常的でパブリックな風景から、一見エロチックに見えたり、暴力的に見えたりする男女のプライベートな光景。その映像にシーケンス的に現われるトラッキング技術とモニタリングアレイ技術。ターゲットによって視界の対象を絞り込んでいくストラテジック・シーイングである。観客の視線のベクトルは無意識にターゲットウィンドーへと向いていく。一瞬、暗視ビジョンで撮影したグリーンのフレームが挿入され、闇夜に埋もれた映像を映し出す。見る者と見られる者という対象がある。やがて見る者は、自分も監視されているという新しい関係性を意識するかもしれない。DRIVEしていると思っている主体=観客は反作用を受け、主客が逆転してしまうのだ。
メインスクリーンの映像に現われるターゲットウインドー |
舞台中央の前面に置かれたサーモイメージカメラ用の専用ゴーグルをかける。覗いてはいけないものをこっそりと見るような、ちょっとスリリングな感じを受けた |
瞬間瞬間の表象的なイメージを、プロセスとして意識させる
男性の運動の動きを映し出すビデオ映像と、透明なオブジェ。反復動作する人の動きは、あたかも機械のように見えてくる。映像の下側に映し出される動作を表わす? いくつかの数値は、身体のメカニズムを表現するデータのようにも見える。しかし、作者の意図は、この数値を曖昧で詩的なイメージとして考えているのかもしれない。また、併設されている透明なオブジェは、人間が踏み出す瞬間の足の裏を表現するもの。機械を学んだことのある人は、モーダル解析のモデルのように見えるだろう。瞬間瞬間の表象的なイメージをデータとして解析、あるいはデータベースとして蓄積していくといったプロセスを意識させるような表現がなされているようだ。
映像の下側に映し出される数値は、身体のメカニズムを表現するデータのようにも見える |
これらの展示以外にも、超小型ウェアラブルカメラで撮影した近接映像(多分女性であろう瞳の瞬きが小さなモニターに映し出されている)や、女性が対話をしている映像作品も出展されている。これらの作品とその作品の配列の仕方に注意してみると、それぞれの作品の関係性が分かって面白いかもしれない。
- ドライヴ関連情報 【第4回プロスペクト展“DRIVE”】 会期:5月28日まで11:00から20:00まで 会場:青山スパイラルガーデン 東京都港区南青山5-6-23スパイラル1階 入場料:無料