コンパックコンピュータ(株)は17日、大企業の基幹業務や通信業界向けの、ハイエンドエンタープライズサーバー『Compaq
AlphaServer GS320』、および『同GS160』を発表した。731MHz動作の*『Alpha 21262A』プロセッサーを最大32基(GS160では16基)、最大256GBのメモリーを搭載可能。OSは*『Compaq Tru64 UNIX』および『OpenVMS』をサポートする。GS320の価格は、1プロセッサー、1GBメモリーの最小構成で9590万5000円から。6月上旬に出荷開始予定となっている。
*Alphaプロセッサー:ディジタル
イクイップメント社(DEC、現コンパックコンピュータ)が開発した、64bitRISCプロセッサー。現行の21262Aは0.25μmプロセスで製造されており、コードネームは“EV67”。現時点の最高動作クロックは731MHzだが、今年後半には800MHz台の製品も予定されている。
*Tru64 UNIX(トゥルーロクヨンユニックス):DECがAlphaServer用に開発した64bit
UNIX『DIGITAL UNIX』。コンパックコンピュータがDEC買収と共に開発を受け継ぎ、名称が変更された。
*OpenVMS(オープンブイエムエス):もともとはDECがVAXミニコンピューターシステム向けに開発したOS“VMS”が、'91年に名称を変更した。VMSはVirtual
Memory Systemの意。
『Compaq AlphaServer GS320』 |
AlphaServer GSは、4つのプロセッサーと4つのメモリーモジュールをクロスバース一致で接続した“クォド・ビルディング・ブロック”(QBB)を、最大で8個まで階層型クロスバースイッチで接続する構成となっている。
QBBの採用により、現在搭載しているプロセッサー(EV67)だけでなく、*EV68をはじめ、次世代以降のEV7やEV8をサポートし、同じ筐体を利用しながらQBB単位で差し替えることによって、異なる速度、異なるプロセッサーを混在させた環境での動作を保証している。また、AlphaServer
GSシリーズでは、QBB単位で分割して動作させることができ、複数のOSを同時に実行することもできる。
*EV68:0.18μmプロセスで製造される21264プロセッサー。2000年末から2001年初頭にかけて投入予定で、動作クロックは1GHzに達するとされる。EV7は2001年にリリース予定の次世代のAlphaプロセッサー。EV8はさらにその次世代のプロセッサー。
OSとしてTru64 UNIXとOpenVMSをサポートするが、Linuxも「Alphaは常に“Linux
Ready”。顧客からの要望があればいつでもサポート可能」(同社エンタープライズ製品本部長市原氏)としており、市場のニーズがあればすぐに提供するという姿勢を見せた。
コンパックコンピュータ代表取締役社長の高柳肇氏 |
コンパックが提供しているサーバーブランドには、AlphaServerのほか、『Compaq
NonStop Himalaya』、『Compaq ProLiant』がある。
AlphaServerの発表会で挨拶した、同社の高柳肇代表取締役社長はこれらのサーバーの戦略の位置づけについて、「Himalayaはまったく24時間365日停止することを許されないミッションクリティカル用途向けの最高のアプリケーションサーバー。ProLiantはウェブやホスティング向けの、インテルアーキテクチャー最強のサーバー」と説明、その上で「AlphaServerは、64bitOSを採用した高可用性、高拡張性を備え、大規模なEビジネスに求められるウェブやホスティングサービスから、ハイ・パフォーマンス・テクニカル・コンピューティング(HPTC)にも対応する高性能のサーバー」であるとした。
高柳氏は「この“Wildfire”(AlphaServer GS320のコードネーム)は、DEC買収の際に、ぜひとも欲しいと思っていた製品で、待ちに待っていた。コンパックの名機として呼ばれるだろう製品だ」と述べた。またこの発表会自体も東京のほか、ニューヨーク、ロンドンでも同日に開催されており、コンパックのGS320/160に寄せる期待の大きさがうかがわれるものとなった。
米コンパックコンピュータ、High Performance Servers Business Unit副社長のドン・ハーバート氏 |
米コンパックのHigh Performance Servers Business Unitで副社長を務めるのドン・ハーバート(Don
Harbert)氏によると、このAlphaServer GSシリーズはすでに200ユニットが予約済みで、年末までに世界で200億ドル(約2兆1000億円)の売り上げを見込んでいるという。ターゲットとする業種と内訳は、通信業界向けが40パーセント、Eビジネス向けが30パーセント、HPTC向けに30パーセントとした。
なお、日本の通産省工業技術院・先端情報計算センター(TACC:Tsukuba
Advanced Computing Center)にAlphaServer GS160(16プロセッサー、32GBメモリー、Tru64
UNIX)を納入しており、これが世界で最初の顧客であるという。TACCでは、研究情報公開データベースの構築と検索サービスの提供を行なう予定。
コンパックでは、今回発表したAlphaServer GSシリーズを、大規模エンタープライズ向けサーバーとして、導入前から運用までのコンサルティングサービスや、99.99パーセントの可用性を保証する(実現できなければ返金する)サービスを提供するとしている。同様のエンタープライズ向けサーバーを提供しているサン・マイクロシステムズ(株)や日本アイ・ビー・エム(株)などの戦略にも影響を与えそうだ。