このページの本文へ

【INTERVIEW】ブックマークをベースにしたオンラインコミュニティーを構築--Blink.comのガロンCOO

2000年05月02日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

インターネットを楽しむ際に欠かせない機能のブックマーク。このブックマークをウェブ上に保管し、あらゆる場所から自分のブックマークを利用できるようにする“オンラインブックマーク”と呼ばれるビジネスがある。

すで何社かこの手のサービスを開始しており、登録ユーザー数を競い合っている段階だ。ここに独自の検索エンジン技術を引っさげて参入したのが、米Blink.com(ブリンク・ドット・コム)だ。そのBlink.comは、この5月にも日本市場への上陸をもくろんでいる。

今回は、同社のCOOを務めるロス・ガロン(Ross Garon)氏に、同社の戦略と日本進出に関してインタビューした。

--日本法人を設立すると聞きましたが、その目的と日本法人の概要を教えてください。

「弊社では、日本を米国に次いてもっとも重要なマーケットとして捉えています。そのため、現地法人の“ブリンク・ドット・コム株式会社”を設立し、進出を図ることにしました。すでに会社は設立済みで、co.jpドメインも取得しています。日本語サイトの開設は5月中を予定しています。英語サイトで登録した情報は、日本語サイトに引き継ぐことが可能です」

「スタッフとして、日本人のエンジニア3名を雇いました。社長も日本人に就任してもらいます。日本でビジネスを行なうには、製品やサービスを日本語化するということ以上のものが必要です。日本人にあった、日本向けのサービスが必要となります」

Blink.comのCOOを務めるロス・ガロン氏。ニューヨークの証券会社にて、東京オフィスの主席代表を3年間務めたという経験を持つ。Blink.comきっての日本通として、同社の日本法人設立に尽力している
Blink.comのCOOを務めるロス・ガロン氏。ニューヨークの証券会社にて、東京オフィスの主席代表を3年間務めたという経験を持つ。Blink.comきっての日本通として、同社の日本法人設立に尽力している



--日本市場を重要視する理由は?

「日本のインターネット市場は非常に大きく、成長率も著しく高いという特徴があります。また、日本は世界の中でも特異なマーケットなのです。なぜかと言うと、インターネットユーザーの25パーセントが、3つ以上の携帯デバイスを所有しているんですよ」

「特に、日本のワイヤレスマーケットは、世界を遥かにリードしていると感じています。米国の2年先を行っていると言っていいでしょう。ですから、日本市場でワイヤレスに適したサービスを提供することができれば、今後アメリカでワイヤレスが伸びてきたときに、同様のサービスを素早く展開することが可能になると考えています」

--Blink.comはすでに日本語に対応しているのですか?

「残念ながらキーワード検索はできないのですが、日本語のウェブサイトを登録することは可能です。画面表示も日本語に対応していますので、ウェブサイトの名前はちゃんと表示されます」

Blink.comの英語サイト上でも、日本語の表示は可能。若干文字化けする個所もあるが、5月開設予定の日本語サイトでは解決しているはずだ
Blink.comの英語サイト上でも、日本語の表示は可能。若干文字化けする個所もあるが、5月開設予定の日本語サイトでは解決しているはずだ



--それでは、Blink.comの概要について教えてください

「Blink.comは、3つのコンポーネントから構成されています。1つ目は、ユーザーの個人情報(ブックマーク)を管理する機能です。2つ目は、情報を共有するためのコミュニティー機能です。そして3つ目が、新タイプの検索エンジン技術です」

「世界では、何百万人ものユーザーが自分のブックマークを持っています。そのブックマークをデータベース化し、ユーザー全員がそのデータベースにアクセスできるようにすれば、有用なウェブサイトの情報を共有できるようになります。それは、人が選びだした(Human Selected)データベースといえるものです」

Blink.comに用意された“Public Library”機能。ユーザーのブックマーク情報をベースに、人気のあるウェブページをポータルサイトのスタイルで並べている
Blink.comに用意された“Public Library”機能。ユーザーのブックマーク情報をベースに、人気のあるウェブページをポータルサイトのスタイルで並べている



「現在、Blink.comには延べ2500万件のウェブサイトが登録されており、そのうちユニークなサイト(実際のサイト数)は500万サイトに上ります。これは、Yahoo!のディレクトリーに比べて実に4倍の登録数になるのです」

「このようなブックマークの組織化や共有という機能に加え、我々は独自の検索エンジン技術を開発しました。それが“プリファレンス・エンジン・テクノロジー”(Preferrense Engine Technology)と名づけた技術です」

--プリファレンス・エンジンとは、具体的にどのような技術なのでしょうか?

「特定のウェブページに類似した他のウェブページを検索するという技術です。キーワードなどに頼らず、独自のアルゴリズムを利用して、類似性の高いサイトを検索します」

「通常の検索エンジンには、いくつか不満な点があります。1つ目は、関係のないサイトがヒットするということ。2つ目は、特定分野の情報に弱いということ。たとえばYahoo!では数百人のサーファーが新しいウェブサイトの登録を行なっていますが、あらゆるジャンルを網羅できるわけではありません。特定の分野に限定した場合では、的確なサイトが登録されているとは限りません」

「3つ目としては、検索に使う“キーワード”選びが難しい点が挙げられます。特定の個人名や企業名を探したいのであればキーワード検索は力を発揮しますが、“金融分野で有益な情報を探したい”といった漠然とした検索の場合、適当なキーワードを考えるのは非常に困難です」

「では、何百、何千、何万人ものユーザーのブックマークを元にしたデータベースを想像してみてください。各々のユーザーは何らかの特定分野に興味を持っており、その分野に則したウェブサイトをブックマークしています。これは非常にパワフルなデータベースになると思います」

--それでは、プリファレンス・エンジンには、Blink.comを利用しているユーザーのブックマークを利用しているということでしょうか?

「Blink.comでは、どのサイトがベストかという質問には誰も答えられませんが、みんなが見ているサイトはどれかということならわかります。各ユーザーが情報を出しあうことによって、よりよいデータベースを作っているのです。これはLinuxの開発にも似ていますね」

「また、特定のサイトを登録しているメンバーの人数やヒット数は、サイトの類似性を求めるために重要なデータですが、それが全てではありません。弊社では独自のアルゴリズムを開発し、類似性を判断しています。そのため、類似性が高いと判断されたサイトであっても、必ずしもメンバーのヒット数が多いとは限りません」

--ロボット検索型の検索エンジンとはどのように異なるのでしょう?

「まず、Yahoo!型の検索エンジンで優れたサイトを紹介したいのであれば、サーファーの人数をどんどんと増やす必要があるでしょう。また、ロボット検索型の検索エンジンであれば、彼らの持つアルゴリズムを日々改良する必要があります。しかし、改善はそう簡単なものではありません」

「ロボット型の検索エンジンは非常に大きなデータベースを持っているのが特徴ですが、“このサイトはあのサイトよりも関連性が高い”といった結果を出すのは難しいでしょう」

--プリファレンス・エンジンは登録メンバーにならないと利用できないのでしょうか?

「キーワード検索のみであれば、メンバー以外でも利用することができます。ですが、プリファレンス・エンジンの機能をフルに活用したいのであれば、メンバーになる必要があります。特に、“Related Links Search”(あるサイトに似ているサイトを検索するという機能)を利用する場合は、ユーザーのブックマークフォルダを登録してもらう必要があります」

「現在でも、日本語のページを検索することも可能です。しかし、日本人の登録ユーザーが少ないのでデータベースが充実しておらず、あまり的確な検索はできません。ですから、日本のみなさんに積極的に参加してもらい、コミュニティーに貢献してもらいたいと期待しています」

--現在のユーザー数は?

「20~30万人です。日本人のユーザーもわずかですがいます。登録に際しては個人情報もいくつか訊ねていますが、それはコミュニティーに貢献してもらうためです。個人情報の公開を望まないのであれば、登録に際して最低必要なのは、ログイン名とパスワードだけです」

--プリファレンス・エンジンは、日本語に対応した技術なのでしょうか?

「ウェブサイトの日本語化に際しては、多くの作業が必要です。ですが、プリファレンス・エンジンのアルゴリズムに関しては、改変を加える点はないと思います。プリファレンス・エンジンは、“メンバーがどのようにウェブサイトを管理しているか”という情報を利用して、類似性を見つけ、検索を行ないます。そのため、いかなる言語にも対応できるのです」

--ブックマークを保存するサーバーは自社で用意しているのですか?

「実は、ブックマークのデータサイズはそれほど大きなものではないのです。ですから、サーバーはもちろん、技術面でも自社でまかなっています。MITで博士号を取得したエンジニアも在籍しているんですよ。日本では、ノーザンライツコンピュータ(株)製のLinuxサーバーを用意しています。とてもいいサーバーですよ」

--ビジネスモデルはどのようなものでしょうか?

「広告と技術ライセンス、それにEコマースを組み合わせたものとなります。ただしEコマースはそれほど重要視しておらず、広告収入とライセンス収入が柱になります。実際、Blink.comのサイトにおける広告バナークリック率はかなり高いのです」

--モバイル機器からのアクセスには対応していますか?

「Windows CEでは問題なく利用できますし、WebTVでも利用できます。また、iモードのような日本独特のモバイル機器にも対応していきたいと考えています」

--他社とのパートナーシップ関係についてはどうなっていますか?

「現在のところ、ZDNETとパートナーシップを組んでいます。今後は、特定の分野に特化したコミュニティーサイトと組んでいきたいですね。たとえば、Javaのコミュニティーとはすでに提携していますし、旅行サイトのようなサイトと組むことができれば、その分野で最強の検索エンジンを構築することが可能だと考えています」

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン