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日本NCR、CRMツール『NCR Relation Optimizre』を発表--顧客の行動をベースに、最適なサービスの提供を可能に

2000年04月18日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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日本NCR(株)は、“CRMリレーション・ツール”の『NCR Relationship Optimizer』(リレーションシップ・オプティマイザー)を、5月から販売すると発表した。営業活動はすでに開始しており、特にeビジネスを実践する企業向けに、有効なマーケティングツールとして売り込んでいく。価格は3500万円から(カスタマイズ費用除く)。利用に際してはRDBMSの『NCR Teradata』が必要。

NCR Relationship Optimizer(以下NCR RO)は、商品・サービスの問い合わせや購買履歴といった“顧客の行動”を情報化し、その情報を統合的に分析することで、個別の顧客に対して効果的なマーケティング方法を提案するというもの。企業側にとっては、各々の顧客に応じた最適なサービスやキャンペーンを、的確なタイミングで提供することが可能になるという。

顧客の“イベント”をマーケティングに活かす“イベント・ドリブン”

NCR ROは、2つのアプリケーションから構成されている。一つは、顧客とのやり取り(トランザクション)のなかから、顧客のニーズに反映した行動を“イベント”という形で検知する“イベント検知マネジャー(Event Detective Manager=EDM)”。もう一つは、検知されたイベントから顧客のニーズを予測し、“顧客主導型”のマーケティングを展開する“コミュニケーション・ベクトル・マネジャー(Communication Vector Manager=CVM)”。

顧客とやり取りは随時RDBMSに記録されており、その記録からEDMが顧客の行動パターンやビジネスルールに応じて、イベントを検知する。CVMは、複数のイベントをベースに対象顧客を抽出し、企業側が期待できるサービスやその提供タイミングを予測して、然るべき顧客対応部署に自動通知を行なう。

このように、顧客の動向を元に最適なマーケティングを提供する機能を、同社では“イベントドリブン(Event Driven)”と呼び、世界で初めてNCR ROが提供するものだとしている。

CVMはフローチャートに似たインターフェースを持ち、企業側の担当者が、処理の流れを視覚的に把握することが可能。それぞれのアクション内容は自由に設定することができ、フローチャート内のアイコンをクリックすることなどで、設定画面を呼び出すことができる。


CVMのインターフェース。担当者は各アクションの設定や実行状況を随時確認することが可能  (クリックで拡大表示します)

顧客に対するサービス内容(キャンペーンなど)を策定するのは、あくまで企業側の人手による作業だ。そこにNCR ROを導入することで、そのサービスに最適な顧客の選定、タイミングの決定、業務処理の流れなどを一元的に管理・把握することが可能となる。また、サービスの効果測定を行なうためにダミーの顧客リストを作成して効果を比較したり、eメールによるキャンペーンではメールの自動配信なども実行することができる。

「顧客との関係を最適化するツール」

都内で開催された発表会において、同社代表取締役社長の上田寿男氏は、CRM ROを「顧客との関係を最適化(オプティマイズ)するツール」だと紹介。データウェアハウス(DWH)に蓄積された膨大なデータを利用して、顧客ごとに最適なプランニングを行なうためのツールであると説明した。

日本NCRの上田寿男代表取締役社長。NCR ROは「どのルートで、いつ、何をコンタクトするか?」という判断をサポートするツールと説明した日本NCRの上田寿男代表取締役社長。NCR ROは「どのルートで、いつ、何をコンタクトするか?」という判断をサポートするツールと説明した



同社はCRM(Customer Relationship Management)分野に注力しており、RDBMSのNCR Teradataを核に、最適なタイミングで最適なサービスを“真の顧客第一主義”として提供する環境の提案を行なっている。このCRMを実現する要素としては、“最適な顧客に”“最適な商品・サービスを”“最適なタイミングで”“最適なチャンネルを通じて”提供するという、4つの要素が挙げられている。

今回のNCR ROでは顧客に応じたアクションの策定が可能となっており、今後は顧客行動の分析と予測を行なう“Analysis Manager”機能と、あらゆるチャンネルからの顧客データを一元化する“Interaction Manager”の開発を進め、今年中にも提供を行なう予定。これらの機能をNCR ROと統合することで、「統合的なソリューションシップ・マネージメントを提供する」(上田氏)とのことだ。

商品・サービスが似通っている現状において、マーケティングで差別化を図る

今回の発表会には、米NCRの会長兼CEOを務めるラーズ・ナイバーグ(Lars Nyberg)氏も出席した。日本NCRでは17、18日の両日に渡って都内でフォーラムを開催しており、ナイバーグ氏は同フォーラムで基調講演を行なうために来日している。

ナイバーグ氏は、「各企業が持っているデータ(情報)を元に、企業が行動を起こすためにDWHが必要」だと語り、同社が提供するNCR TeradataなどDWHの重要性を強調した。また、各企業間における競争が激しくなる中、商品やサービスが似通って(コモディティー化して)きていると指摘。

米NCRのラーズ・ナイバーグ会長兼CEO、「DWHとその技術は、顧客とのより深いつながりをもたらす」とアピール米NCRのラーズ・ナイバーグ会長兼CEO、「DWHとその技術は、顧客とのより深いつながりをもたらす」とアピール



その中で差別化を図るためには、顧客対応の分野が重要であるとし、「いかにトランザクションから意味を汲み取って、ビジネスにつなげるか? それがRelationship Technologyだ」と、NCR ROに利用されている技術をアピールした。

すでに米国ではNCR ROは発売されており、航空会社、電話会社、銀行などを主な顧客にしているという。元々、開発にはオーストラリアの銀行が関わっており、金融分野に強いノウハウを持つとしている。また11日には、小売分野の分析ツールで強みを持つ米セレス・インテグレイテッド・ソリューションズ社を買収。セレスの技術とNCR ROを統合することで、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの機能を補完でき、業種を問わないCRMを提供可能になるとしている。

他社製品との違いは?

eビジネスの本格化に伴い、顧客の動向を情報化しデータベース化する作業は、以前よりはるかに容易になっている。最近では、これらのデータを活かしたマーケティングを提供するツールが、各社から発表されている。

たとえば、ネットパーセプションズ・ジャパン(株)では、顧客ごとに個別のマーケティングを行なう技術“リアルタイム・リコメンデーション・エンジン”を利用した『Net Percetions for E-commerce』を商品化している。また、NTTグループでも同様のツール『AwarenessNet システム』を14日に発売しており、日本アイ・ビー・エム(株)に供給することでCRM市場への進出を狙っている。

日本NCRでは、これらのツールとの違いを“イベント・ドリブン”にあるとアピール。単なるトランザクションではなく、イベントを検出し、それをベースの情報とする点で違いがあるという。また、「キャンペーンの提案から実施までを一貫して行なうのはNCR ROが初めて」(同社テラデータ・ソリューション本部 金井啓一部長)とも強調している。

NCR ROは、導入に際して同社のRDBMSであるNCR Teradataをセットで導入する必要がある。昨今、eビジネスを実践している企業でRDBMSを持っていない企業は皆無に等しく、その意味で、マーケティングツールのみの目的でNCR ROを導入するのは、コストの面からも厳しいものがある。ただ、今後eビジネスが伸張するにつれ、製品の差別化はますます難しくなり、各企業はより洗練された顧客管理を必要とするようになる。その分野で、どの企業が市場のリーダーに成りうるか、競争はまだスタートラインに立っただけにすぎないだろう。

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