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「顧客データを活用し、顧客重視のビジネスを」――“NCR Solutions Forum 2000”

2000年04月17日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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日本エヌ・シー・アール(株)(日本NCR)は17日、“NCR Solutions Forum 2000”を都内で開いた。18日まで2日間の日程。“e-時代のデータ・ウェアハウス”をテーマに、膨大な顧客データを分析・活用するCRM(Customer Relationship Management)の重要性を企業担当者にPRするイベント。初日は基調講演を含む総論的な内容で、各講師は「CRMを活用し、企業主導から顧客主導のビジネスモデルに切り替えないとネット時代に企業は生き残れない」などと従来型経営からの転換を強く促した。



ただの取引を深い関係に変えるリレーションシップ・テクノロジー

冒頭、米NCR会長兼CEOのラーズ・ナイバーグ(Lars Nyberg)氏がスピーチを行なった。

米NCR会長兼CEOのナイバーグ氏 米NCR会長兼CEOのナイバーグ氏



ナイバーグ氏は同社の“リレーションシップ・テクノロジー”について語り、「インターネットにより顧客との直接的な接触が増えると、顧客についてのデータも増大する」と指摘。その上で、「このデータをリアルタイムに近い形で分析し、顧客との取引をさらに深い関係に変えるのがリレーションシップ・テクノロジーだ」と述べ、詳細な顧客分析に基づく効果的なマーケティングや戦略決定が、企業の競争力アップに不可欠だと訴えた。

ネット時代に対応できない企業は生き残れない

基調講演では、多摩大学教授の中谷巌氏が“デジタルエコノミーと企業経営”をテーマに、ネットワーク時代における企業の将来について語った。

中谷巌氏 中谷巌氏



中谷氏はまず、先週末から米国と日本の株式市場で起こった株価の急落について触れた。中谷氏は、「膨張した株価の調整は行なわれるだろうが、デジタルエコノミーが終わることはない。すでにデジタル革命の火ぶたは切って落とされている」と述べ、今回の急落が“バブル崩壊”ではなく、過熱気味の市場を調整する動きであると強調した。

中谷氏によれば、従来型の経済では企業がマスの消費者に向けて最大公約数的な商品を販売する、売り手主導のビジネスモデルだった。だが「インターネットの普及で情報コストが劇的に下がると、買い手主導のビジネスモデルへと変化してきた」として、BTO方式によるパソコン販売や、逆オークションといった新しいサービスを挙げる。「ビジネスの主役はサービスになり、顧客重視のワントゥワンビジネスが中心となるだろう」と語り、顧客管理システムが経営戦略の決め手になるとの見通しを示した。

そこで現在の日本企業を見ると、実力と成果を反映しない給与体系が足かせとなってインセンティブは低く、戦略決定とオペレーションが分かれていないため、意志決定は遅い。さらに「情報戦略を会社全体の問題として捉えず、情報システム担当者任せにしている面がある。情報戦略はビジネスモデルそのものの転換であり、明確なビジョンのない経営者はもういらない」と厳しく指摘した。

最後に、中谷氏が社外取締役を務めるソニー(株)社長の出井伸之氏の言葉を紹介。「『インターネットは隕石』。6500万年前の隕石落下が恐竜を滅ぼしたように、インターネットによって経済の主役は交代する。ここで頑張らないと、今の企業は生き残れない」と警告して講演を締め括った。

究極のワントゥワンは“富山の薬売り”


米デューク大学教授のマーサ・ロジャース氏 米デューク大学教授のマーサ・ロジャース氏



続いて米デューク大学フクア・ビジネス・スクール教授のマーサ・ロジャース(Martha Rogers)氏がワントゥワンのマーケティングについて解説。ロジャース氏は「ワントゥワンとは、それぞれの顧客にそれぞれの方法で対応すること」と定義した上で、実施のためのステップとして(1)個別に顧客を識別する、(2)価値やニーズで顧客を差別化、(3)効率と効果の高い方法で顧客と接触、(4)企業活動のカスタマイズ――の4段階を挙げた。

この際に必要になるのが、実際の取引記録やウェブのクリック履歴といった顧客データ。だがある顧客のデータが別々のデータベースにばらばらに格納されていたのでは意味がない。そのため、各顧客のデータを統合的に管理・活用できるデータウェアハウスの構築が必要になってくる。

ロジャース氏がワントゥワンの例として挙げたのは“富山の薬売り”。「顧客を一軒一軒回って薬を販売する形式で、もう250年間つきあいがある場合もあるという。ワントゥワンの目標はこのような顧客と企業との密接な結びつきだ」などと語った。

米NCR上級副社長のマーク・ハード氏 米NCR上級副社長のマーク・ハード氏



米NCR上級副社長のマーク・ハード(Mark Hurd)氏は、CRMやワントゥワンマーケティングを実現する同社の製品について説明。同社のデータウェアハウスシステム『Teradata @ctive Warehouse』はスケーラビリティーに優れ、TB(テラバイト)レベルの顧客データを低コストで活用できるとして、2TB以上のデータを持つ(株)あさひ銀行がユーザー事例として紹介された。

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