日本SGI(株)は、同社のLinuxビジネス戦略を発表した。これまでは各部署で行なっていたLinux対応を一本化し、“Linuxビジネス推進タスク”を設置。今後、同社ビジネスの基幹部分としてLinux分野を推進していく構えだ。また、日本アイ・ビー・エムのデータベース製品『DB2
UDB』を、同社のLinuxサーバーに搭載して販売する内容の提携も実施する。その他、Linux技術者の認定組織であるLPI
Japanにも積極的に参画し、Linuxコミュニティーへの貢献を図るとしている。
Linux分野への注力を明らかに
日本SGIでは'99年9月の『SGI 1400 サーバ』発売以来、Linux分野への参入を表明してきた。これには、'99年8月に米SGIの会長兼CEOに就任したロバート・ビショップ(Robert Bishop)氏の意向が強く働いているという。記者発表会では、米SGIのビショップ会長がビデオメッセージを披露。「日本は長いトンネルを脱出できたのではないか」と語り、日本SGIの業績が上向いていることを歓迎するコメントを残した |
'98年10月に日本SGI社長に就任した和泉法夫氏は、就任当時「ハイエンドサーバーの世界においても、SGIのアーキテクチャーは大変優れている」と語っており、同社の売上をワークステーション中心からサーバー中心へと移行させた人物。現在、同社の売上は6割がサーバーによるもので、前年比で2倍の伸びを示しているという。
都内で開催された記者発表会において和泉社長は、「コンピューターメーカーが本気でLinuxを推進していかないとならない」と強調。企業にもオープンソース化が求められるLinux分野では、商業ベースに乗せるのが難しいとされているが、この点について「テクノロジーリーダーがオープンソース化しなければ難しい」と語り、同社の技術力で業界をリードできるという自信をのぞかせた。
「オープンソース化はメーカーにその気がなければ進まない」と強調する和泉社長。「IA-32は捨石でいい」という過激な発言も飛び出し、IA-64においてLinuxサーバーのリーダーになる姿勢を明らかにした |
現在は、Linux関連のハードウェアとしてはサーバー製品のみをラインナップするが、同社では今年中にもワークステーションにLinuxを拡大していく予定。和泉氏は「グラフィックでLinuxは魅力的」と語り、Open
GLで従来から強みを持つグラフィック分野に積極的にLinuxを導入していく姿勢を見せた。
グラフィック関連製品は現在、同社製のUNIXであるIRIXをベースとした製品を提供している。ここに順次Linux製品を投入し、クライアントマシンまでを含めた環境を提供していく予定だ。
Linuxの専門部隊を発足
同社ではこれまでも各部署においてLinuxビジネスに取り組んできたが、4月1日付で“Linuxビジネス推進タスク”を設置。30人の人員で、Linux事業を専門に推進する体制を構築した。推進タスクではLinux製品の提供、パートナーとの協業推進を図るとともに、Linuxコミュニティーへの貢献も積極的に行なう。同社には日本 Linux 協会(JLA)の理事が3名在籍しているが、この3名全員が推進タスクに移籍している。Linuxビジネス推進タスクは、3つの組織で構成される。一つは“Linux営業推進”で、Linux製品の商談をサポートするほか、Linux向けアプリのSGI Linuxにおける動作確認を行なう。また、ディストリビューションの日本語化作業に関わるほか、同社のLinux製品『ProPack』との互換性検証も担当する。
“Linuxソリューション推進”は、同社が4月に開設したテクノロジー・センターを中核に、Linuxプラットフォームに対応したソリューション製品を開発するというもの。“Linuxサービス推進”では、日本の需要に合わせたサポート/サービスプログラムの開発を行なう。また、LPIやRed Hatの認定技術者を養成するほか、コンサルティング業務も行なう。
同社ではこの推進タスクに加え、サポート担当部署においてもLinux製品のサポートを行なうべく、社内教育を実施しているという。Linuxビジネスの現状に関しては「まだ商売にはなっていない」(和泉社長)とのことだが、今後Linuxビジネスを推進することで、「儲かるビジネスにする」(同)ことを狙っていくとしている。
また同社は、クラスター製品分野に強みを持っている。Linuxはクラスター構成に向いたOSであり、日本SGIではサービス分野でLinuxビジネスを推進するとともに、クラスター製品への積極的なLinuxの導入を図っていく予定だ。
Linuxコミュニティーへの貢献を重視
同社は、Linux技術者の認定試験を実施するLPI Japanの事務局を務めており、LPI Japanの理事長には同社副社長の成井弦氏が就任している。LPI Japanは企業からの寄付金で運営される中立的な組織で、7月にも日本語による技術者認定試験を実施する予定だ。LPI Japanの理事長を務める同社副社長の成井弦氏 |
特徴的なのは、同社では社員がLinuxの開発を社外活動として行なうことを推奨している点だ。Linuxビジネス推進タスクには、JLA理事などLinuxコミュニティーに関わるエンジニアが在籍している。同社では、これらのエンジニアがLinuxの開発に関わる際の社外活動を、同社業務の一環として認めているという。
IBMなどとも協業、『DB2 UDB』を積極展開
今回の発表会では、日本アイ・ビー・エム傘下のニイウス(株)と提携を交わしたことも明らかにされた。ニイウスではデータベース製品『DB2 UDB』の提供を行なっており、日本SGIでは同社のクラスタリング技術などをDB2 UDBと結合し、ビジネスユーザー向けにLinuxサーバーの販売を行なう。ニイウスでも、DB2 UDB向けのアプリケーション開発においては、Linux対応を優先させる考えだ。また、同社は大塚商会グループの(株)テンアートニにも出資。日本語Linux環境やネットワーク機器の開発、Javaを利用したウェブアプリケーションの開発などを推進するとしている。