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異業種からの参入も目立った国内初のオンデマンドアワード大賞――On Demand Printing Japan 2000より

2000年04月14日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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“On Demand Printing Japan 2000”の目玉の1つに、オンデマンド印刷を利用して優れた先進的なサービスをしているプリントプロバイダーを表彰する“オンデマンド アワード 2000”がある。14日、この発表と授賞式が青山TEPIAのTEPIAホールで行なわれた。

インターネットなどを通じ公募された同賞への応募社総数は29社。応募社には、一般的な印刷会社、フォーム印刷会社、サービスビューローといった印刷関連の業種以外に、情報処理業、広告代理店、段ボール製造業、文具デリバリー業といった業種からのエントリーも多数あり、同アワードへの関心の高さ、拡がりを示す形となった。

審査は、CAPベンチャーズ社とGSM社のほか、JPC理事長である猪股裕一氏をはじめとする印刷関連の有識者が加わり、より包括的に審査が行なわれた。3つの募集カテゴリー別に、部門賞合わせて8社が受賞し、その中より各カテゴリーごとに大賞が贈られた。

CAPベンチャーズ社とGSM社以外に、印刷関連の有識者が加わり審査が行なわれた(右は審査委員長のJPC理事長である猪股裕一氏)
CAPベンチャーズ社とGSM社以外に、印刷関連の有識者が加わり審査が行なわれた(右は審査委員長のJPC理事長である猪股裕一氏)



TeXデータをオンデマンド印刷に取り入れた中西印刷

インターネットなどを用いて、先進的なドキュメントサービスを提供している企業またはプロジェクトに対して贈られる“イノベーティブ技術部門”の大賞には、京都の老舗印刷会社、中西印刷(株)が選ばれた。

同社は、DocuTechを活用し、オンデマンド印刷の特性を生かしたTeXデータの入稿体制を確立した事が認められての受賞となった。

“活字で可能であった組版を全てコンピューターで実現する”という妥協のない姿勢と、手間が掛からず前工程コストを削減できるTeXデータをいち早くオンデマンド印刷に取り入れた両面が評価されたもの。印刷工程のコストダウンが可能なオンデマンド印刷では、データ作成工程に手間とコストが掛からない仕組みを開発する必要がある。TeXデータを学者が書いてくれる学術誌分野では、小ロットのオンデマンド印刷のメリットが生かせる。

デジタル印刷技術を用いてビジネスのリエンジニアリング、デジタル化の促進、コストダウン、生産性の向上などを実現した企業、またはプロジェクトに贈られる“ビジネスにおけるデジタルプリント部門”には、(株)ダイデンが選ばれた。

同社は全社員開発体制を敷き、販売に結び付けている“誰でも使えるオンデマンド印刷”の未来像を見せた点が評価された。容易にウ運用できる機種を使い、全社員が顧客のニーズを汲み上げてアイデアを出す。さらに、自分でオンデマンド印刷機を使って新製品を日常的に開発し、アルミホイルや繊維にプリントする技術を使って独自商品をヒットさせている点はユニークと言えるだろう。

授賞式の模様。
授賞式の模様。



異業種からのオンデマンド参入も目立つ

デジタル印刷の代表的なアプリケーションであるパーソナライゼーションを実現し、効果をあげている企業またはプロジェクトに贈られる“ワントゥワン・コミュニケーションズ部門”には、“日産パーソナライズド・ビップ・カタログ共同プロジェクト”が選ばれ、(株)博報堂とエスケーディ(株)が共同で受賞した。
 
同プロジェクトは、グラフィックデータのバリアブル印刷を実現した点や、クライアントである日産自動車VIPプロジェクトにおいて最高の効果を上げることに成功したことが評価されたもの。クライアント、広告代理店(博報堂)、デジタル印刷業(SKD)の協力と、自動車ユーザーそれぞれが気になる点を合わせ、1万数千枚のカタログをバリアブル印刷でつくり、買い替え促進に大きな効果を与えた。このプロジェクトでは、セールスマン教育とリンクさせて、特定の好みを持つ顧客へのアプローチ方法をノウハウとして活用するといった手法へ発展する可能性がある。オンデマンド印刷がビジネス手法を変えていく一例として注目できるだろう。

このほか、受賞社には、段ボール製造業の藤沢紙工(株)、文具デリバリー業のアスクル(株)、フォーム印刷業の福島印刷(株)などがあり、改めてオンデマンド印刷分野への異業種からの参入が示された。また、老舗印刷会社であるカシヨ(株)や『プレストーク』の(株)デジタル印刷工房のように早くからオンデマンド印刷に取り組んでいた印刷専業の受賞も意義深いものがあった。

ワントゥワン・ビジネスに応えるためには……

米国では数年前よりオンデマンド印刷が注目され、印刷業の中ではある程度の普及を見ている。しかし、日本においてオンデマンド印刷はそれほど定着しているとは言えない。これは日本が遅れているのではない。米国ならば労働環境条件の制約により成し得なかった小ロットの印刷を、日本では人員の工夫などでクリアーし、クライアントの要求に応えてきた実績があるからだと言える。

しかし、これからはコンシューマーに向けたパーソナライズ化が進み、ワントゥワン・ビジネスが一般化する。ワントゥワン・ビジネスを進めるために、今回受賞した企業のように、企業顧客の印刷需要とさらに高度になる顧客の要求に応えることがこれからの印刷業には必要なる。もちろんそうした問題意識とノウハウを身に付けた異業種からの参入もますます激化するだろう。この動きは、高度に自動化されたオンデマンド印刷機器の導入をさらに押し進めることになる。来年のオンデマンドショーはさらに一般企業からの注目を集めることになるかも知れない。

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