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【“テクノロジーと障害者”ロサンゼルス国際会議レポートVol.5】UDIT関根千佳氏--障害者が使いやすい技術は、健常者にも魅力ある技術

2000年04月10日 00時00分更新

文● 岡部一明

3月20日から25日、ロサンゼルスで、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校(California State University, Northridge:CSUN)の主催により開催された“テクノロジーと障害者”国際会議。米国在住のジャーナリストである岡部一明氏が5回にわたる完結編を報告する。

受け付け付近はいつも混雑
受け付け付近はいつも混雑



日本からも約100名の参加者

会議にはアメリカ以外35ヵ国からの参加があった。その中でカナダに次いで多かったのが日本で、約100名の参加があった。その内22名の視察団を組んでやってきた(株)ユーディット(UDIT)代表取締役社長の関根千佳氏に話を聞いた。

日本から22人の視察団を組織した関根千佳氏
日本から22人の視察団を組織した関根千佳氏



「この会議に来れば分かるのですが、重度障害者の人たちがバシバシ歩いていますよね。全盲の方も白杖や盲導犬で歩き、頭部しか動かせない方も電動車椅子で動く。発表もデモンストレーションもするし、販売員だってやってます。完全に自立して働いています。名刺をもらえば会社の社長をしてたり、大手コンピューター会社のエンジニアだったり。障害者と健常者の差なんて全然ないんです」

関根氏はこの会議は6回目になる。毎回ここで“目から鱗(うろこ)が落ちるような体験”をし、最新の技術に触れるという。そんな中で、彼女がいつも残念に思うことは、日本からの参加者、障害者自身、技術者も含めて、それが少ないこと。このような状況を少しでも変えるために、このような視察ツアーを組織したという。

「何かアビリティー(能力)があれば、ディスアビリティー(障害)を超えられる、ということの象徴がこの会議です。自分たちに必要なテクノロジーをつくるのも自分たちだ、という熱気が会場には溢れています」

障害者も健常者も積極的に参加
障害者も健常者も積極的に参加



情報のユニバーサルデザイン研究所

彼女は、日本の場合、政府がお金を出してどこかの企業につくらせても“安くならない、使いやすいものが出てこないというジレンマ”に陥っていると指摘する。「ここに皆を連れて来ることで、民間から技術が出てくるようにしたいなと思った」こともツアーを組織した動機の1つだという。

関根氏は、10数年前、米国に住んだ経験を持つ。この時の経験から、障害者の問題への関心が芽生えたという。米国では、障害者も自立して街に繰り出している。彼女は最初、そんな姿を見て、「米国って障害者が多い国だな」と思ったという。高齢者が電動車椅子に乗って買い物に出る。バスに乗れるのかと思っていると電動リフトが降りてきて自分で乗る。校庭で高校生にバスケットを教えている人が車椅子だったり--。

そのうちに彼女は、逆に日本でそういう光景を見ることが非常に少ないということに気付き、当時社員であった大手コンピューターメーカーで障害者支援機器のプログラムに取り組んだ。そして3年前、ついに独立を果たし、現在の会社UDITを設立した。UDITとは、Universal Design Institute for Information Technology(情報のユニバーサル・デザイン研究所)を指すと同時に、“You do it! ”障害者や高齢者に、「あなたが主役よ! 」と伝える意味を込めているという。この方面の支援を行なう会社がほかにないので自分で起業する決心がついたと語る。

「障害者にとって使いやすい技術は、今、障害を持っていない人にとっても魅力ある技術になるのです」

日本は今、急速な高齢化社会に向かっている。厚生省の推計によれば、現在15パーセントである65才以上人口は、2015年代に25パーセント、数にして3000万人を超えるという。「日本の企業は、こうした高齢化の動きにまったく対応できていない」と関根氏は指摘する。「障害者というと福祉の対象という意識が強いですが、実際はそこに巨大なマーケットがあります。障害者や高齢者を社会貢献の対象にしか見ないのは間違いです」

それどころか、障害者、高齢者など多様な使用者を前提に商品をつくることが、イノベーションの発端にもなると関根氏は言う。例えば、ライターは片腕をなくした兵士がタバコを吸う時のニーズから生まれたし、グラハム・ベルが電話を発明したのも聴覚障害者に音を伝える目的があった。現在脚光を浴びはじめた音声入力の技術も首から下が動かない障害者のための技術から出発したという。

音声認識機器のデモを行なう展示ブース
音声認識機器のデモを行なう展示ブース



「障害者にとって使いやすい技術は、今、障害を持っていない人にとっても魅力ある技術になるのです」と関根氏。こうした機器、技術のデザインを“ユニバーサル・デザイン”という。障害者用に特別の技術をつくるのでなく、誰にとっても使い易いものをつくる、と発想を転換している。関根氏はこれを、“障害者のニーズを完全に把握した上でつくられた一般製品”と定義する。おそらくこの概念は、障害者が使いやすい技術を安く広く普及させることに寄与するだろうし、障害者を福祉の対象から市場の牽引者に変えていく力にもなるのだろう。関根氏の会社UDITは、情報技術でこのユニバーサル・デザインを追求する日本で希な会社なのだ。

「この会議は年に1回ですが、これに来ないと世界の動きが読めなくなります。だから何があっても来ます。特にインターネット関係ではこの会議が最も情報が集まります」と関根氏。

UDITは、ウェブページの開設を行なっている。アクセシビリティを考慮したウェブページが品のある美しいページにもなることを示す好例のサイトだ。米国内の情報も含め、この分野のさらに詳しい情報はここを参照して欲しい。

犬さんもお疲れのようで
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