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携帯電話で映像をコントロールするメディアアート――“コールサインエキシビジョン”が大阪で開催中

2000年04月06日 00時00分更新

文● Yuko Nexus6

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携帯電話のメールをメモにする発想を取り入れて

「僕は高校で美術教師をしてるんですが、最近は授業中にメモを回すかわりに携帯でメール打ってるんですよ、生徒が(笑)。携帯を通じた独特のコミュニケーション感覚を作に取り込みたい、と思ったのがそもそもの始まりです」(小谷氏)

小谷さんは以前にも携帯を使った作品を発表している。外から触れないようにディスプレイされた携帯電話が「メールを送って」と呼びかける作品だ。鑑賞者は、目の前にある携帯にメッセージを書き込むために、わざわざ自分の携帯でメールを打たねばならない。メッセージは電波となりどこか遠くにあるサーバーを経由してようやく目前の携帯に着信する。
 
何ともまどろっこしい話だが、この“無駄”こそが携帯のもつメディア特性かもしれない。もともと「便利だから」普及したはずの携帯が、むしろ「まわりくどさ」や「無駄なコミュニケーションの楽しみ」を偏愛させるという逆説。会場に流れる画像には、街角で携帯に向かって話す雑踏の中の若者たちが映されている。誰もがが目の前の他者ではなく、サーバコンピューターに向かって話している。どこか切なくて、はかなさすら感じさせる現代の情景だ。しかし、自分だって携帯を使う時には、思わず知らずそんなしぐさをしている……。

会場外から遠隔参加する方法に関しては、やや課題が残されている。外部から指定された番号にコールすると会場の映像が切り替わるのだが、それがコールしている本人には分かりにくい。同時にウェブ中継を見ていれば確かに映像が変わったことは分かるが、実感に乏しいのである。この点に関しては小谷氏も認めておられるので、次回作ではバージョンアップが図られることと思うが、遠く離れた者同士がインタラクティブに対話することの困難(インターフェイスデザインの難しさetc.)を示すものであると言える。

会場の番画廊は大阪淀屋橋のビジネス街に古くから残る西洋館 “大江ビルヂング”にある。黒電話・ソロバン・ボールペン時代のビル内に、ハイテクメディアアートというミスマッチが楽しい
会場の番画廊は大阪淀屋橋のビジネス街に古くから残る西洋館 “大江ビルヂング”にある。黒電話・ソロバン・ボールペン時代のビル内に、ハイテクメディアアートというミスマッチが楽しい

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