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“第1回ビジネスジャパンオープン”開催!! ビジネスは押してダメなら引いてみな(後編)

2000年04月04日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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3月29日、東京・港区のダスキン白金研修センターにおいて、大前研一氏プロデュ-スによるビジネスプランコンテスト“第1回ビジネスジャパンオープン”が開催された。ビジネスジャパンオープンは、有望な起業家たちを見出し、ベンチャー事業を支援していくためのプロジェクト。アイデアはあっても、資金や人的資源がないアーリーステージの起業家たちのために、ビジネスを支援するプラットフォームを作ることを目的としている。このイベントは、今後年2回ずつ開催する予定。後編は、惜しくも賞を逃したものの、ビジネス案件として優れた7件を紹介する。

“海外で日本製アニメ・キャラクター商品販売”――浜口直太氏(日本コンサルティング・インターナショナル)、板越ジョージ氏(JC ITASHO,INC.)

日本製アニメーションとキャラクター商品を実店舗とオンラインで専門的に販売していく“e-animeshop.com”を展開していく。2000年度中にNASDAQ上場を目指す。直営店による販売を2年まで、その後フランチャイズ、ライセンスによるロイヤリティーで収益をあげていく。最終的に5000店から1万店舗の展開をめざす。板越氏は、「米国でコンテンツを販売していくうえで、一番人気があるのがアニメだと考えた。“ものの毛姫”のフィギャーや“エヴァンゲリオン”などのキャラクター販売権を持っている。バーチャルだけではだめで、やはりクリック&モルタルというコンセプトが必要だと思った」


日本製アニメーションとキャラクターで全米制覇をめざす
e-アニメショップ・ドット・コム(準備中)


“リアルタイムメディア情報提供会社”――深谷由紀貞氏(アメリカ在住)

加工を前提としている放送事業形態との差別化を図るリアルタイム画像コンテンツに着目。たとえば、海水浴場などにCCDカメラを置いて海の家の情報をストリーミング放送する。欲しいが、なかったコンテンツを集めて“ストリーミングのポータルサイト”をつくる。インフラが整備され、常時接続、高速通信が安価に実現できるようになれば、供給会社のビデオサーバーに家庭からの画像をため込んでいくなどの新しい展開ができる。深谷貞氏は、受信者のバリアフリーでだけでなく、モバイルが発信基地になるような“発信者のバリアフリー”も考えていくという。

“小売業の商品ロスをなくし、利益率を良くしよう”――山内三郎氏(アドバンス・サービス)

「小売業において、なぜ損益が出るのか?」という問題に対し、「商品管理のルールが徹底されていないからだ」と説くのは山内氏である。この業界では、教育はもちろんだが、管理マニュアルがなく、伝統的に口頭で引き継がれているという慣習がある。このビジネスは、物理的に商品がなくなってしまうという商品ロスの実態を知り、データを分析、研修会(万引きなどに対する防犯レベルなど、注意すべき時間帯を知らせるなど)をすることで、減益をなくすというもの。山内氏は、「現場で行なってきた人的サービスを、ネット上でラーニングシステムとして提供していく。しかし、ノウハウを提供するだけでなく、サービスを提供していきたい」とした。

“なごみドット”――高柳公一氏(なごみ)

女性向け手作りクラフト商品のグローバルな展開をめざす。日本の手づくりクラフト商品は、海外で高い評価を得ている。しかし、分野が細分化されていて、組み立てマニュアルも日本語仕様である。インターネットを活用し、海外向けにマニュアルをローカリゼーションして製品を売り出していく。市場規模は2兆円から3兆円。商品を売ったあとのサポートもする。たとえば、展示会などの情報やコミュニティ-、作品を販売したい人のためにオークションなども考える。「電子化されても手作りは決してなくならない。手作りSOHOウェブサービスを展開していく。日本の文化を守り、名前のように“和める”ようなサイトにしたい」


和めるサイト“なごみドットコム”。日本のクラフト商品を全世界に

“HRMナレッジベース”――重田孝夫氏(ロードスター・アソシエイツ)

気配りなどの優れた行動事例を収集、整理、提供し、オープンなデータベースを構築する。ユーザーを引き込むために、ウェブ上で360度評価診断プログラムを無料で提供する。収益は関連の有料セミナーやコンサルティング、ウェブ上での適正テストで賄う。将来的には行動事例データベースが集まれば、それが大きな価値を持ち収益につながっていく。重田氏は、「2003年に年商10億円ぐらいを見込む。オープンなアキテクチャーの中で、行動事例を研鑚し、誰もがアクセスできるようなモデルを作りたい」と、抱負を語った。

“Keeper”――服部卓也氏(MarketMakers)

投信ポートフォリオを分析するためのインターネット投資顧問サービス『Keeper』を開発する。自己資産を管理するために、データと情報、分析結果をデータベースに統合し、ツールとして販売。個人投資家と銀行、証券会社のネットワーク『MoneySm@rt』、事業法人とのネットワークを結ぶ『PensionT@rks』を用意する。その上で、合成されたポートフォリオを分離する『StyleAdvisor』を計算ロジックとして利用するというもの。

“フーズマーケット事業”――田中亨氏(デジタルファーム)

会員制で、インターネット上で食材の取引をするセラーとバイヤーのためのマッチング市場とコミュニティーを創出する。セグメントに分けて食材情報を提供し、それによって市場に集う“リレーティブ”と呼ばれるような企業――厨房メーカー、包装資材メーカーなどからプロモーションフィーを徴収するというモデルである。田中氏は、「今後、ウェブ上で食材取引を展開する企業は増加していく。3年間で2万社ほどを会員数にするのが目標。メールマガジンも13種類ほど出しており、これらも活用していく」とした。


マッチング市場とコミュニティーを創出するデジタルファームのウェブサイト

“オンライン会計システム”――藤井博之氏(ウェルズ)

会計システムのASPサービスをする。インターネットを使って、一連の会計情報から、企業の決算、申告までをするもの。サービスには“松”、“竹”、“梅”の3タイプがある。“松”は基本ソフトで無料にする。“竹”と“梅”は、予算会計機能などのオプショナル機能を付けて有償化。中小企業と会計士の出会いの場としてプラットフォームをつくっていく。“21世紀会計事務所を考える会”を発足し、7月から約100社でスタートするが、来年3月には6000社をめざして展開するという。

最後に、大前研一氏が登壇し、全体の講評と閉会のあいさつをした。大前氏はおもむろに剣玉を取り出して、パフォーマンスをしながら以下のように述べた。

「ビジネスは押してダメなら引いてみなである。1つのやり方で成功できると考えないで、あらゆる方法を試みる必要がある。それがビジネスの原点となる。今回集まった案件はいずれもレベルの高いビジネス案だった。最近では、将来を担う若い起業家や新しい事業に対して投資するという流れが出てくるようになった。ドットコムショックをドットコムチャンスととらえてチャレンジしてもらいたい」と、参加者を激励した。

考えが行き詰まったとき、剣玉から教訓を得たという大前研一氏
考えが行き詰まったとき、剣玉から教訓を得たという大前研一氏

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