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「企業の知識を集結し変化の荒波を乗り越える」――“ナレッジマネジメント2000”開催

2000年03月23日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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企業の知的資産活用を考えるイベント“ナレッジ・マネジメント2000”(主催・(株)日本経済新聞社、協力・日本ナレッジ・マネジメント学会)が23日、都内で開かれた。ナレッジマネジメントとは企業の知的資産を結集することで競争力を高める新しい経営手法。カンファレンスでは、「経営環境はめまぐるしく変化しており、企業の知識を結集して準備しておかないと素早く対応できない」などと大変動を乗り切る武器としてのナレッジマネジメントの重要性が強調された。



ナレッジマネジメントは、“知的資産管理”や“知識経営”などと訳される経営手法。企業とその社員が所有する知識を結集して共有し、新しい価値の創造や経営の効率化に役立てるという考え方で、IT分野でリードする欧米企業ではすでに一般的となっている。同イベントは、日本ではまだ認知度が低いナレッジマネジメントの普及を図るものだ。

高梨智弘氏
高梨智弘氏



カンファレンスではまず、(株)日本総合研究所理事で日本ナレッジ・マネジメント学会専務理事の高梨智弘氏が講演した。高梨氏はナレッジマネジメント導入の背景として、経営環境がめまぐるしく変化し、予測不能となっている点を指摘。「他社との競争に勝ち抜くためには、相手が打って出てきてからでは間に合わない。状況変化に素早く対応できるよう、組織が持つ知識を結集して準備しておかねばならない」と語った。

紺野登氏 紺野登氏



続いて、(株)コラム代表の紺野登氏が実践面について解説。ナレッジマネジメントは成功事例の共有や活用で収益をアップさせる“知的資産管理”の面からスタートするが、「本来のナレッジマネジメントは“知識経営”にある」とし、知識をベースとした経営革新にまで踏み込んでいく。最終的には知識の観点から事業と組織を再構築し、顧客にとっての企業価値を高めることが目標になるという。

またカンファレンスでは、すでにナレッジマネジメントを導入して成果を上げているエーザイ(株)とアサヒビール(株)の例が紹介された。

エーザイ理事で知創部部長の八十田典克氏 エーザイ理事で知創部部長の八十田典克氏



エーザイは早くからナレッジマネジメントに取り組んできた企業として知られている。同社の企業理念“hhc(human health care)”に基づく組織改革を進める部署として社長直属の“知創部”を創設、ユニークな活動を展開している。同部部長の八十田典克氏によると、「過去の事例紹介だけでは現状にそぐわない場面も出てくる」として、過去から得た知識をもとに「新しい知識を創造していく」ことが狙いだという。各種の研修や社内コンテストなどを効果的に組み合わせ、誕生した知識は社員に浸透し、さらに新しいノウハウを生んでいるという。

アサヒビール業務高度化推進部長の奈良篤氏
アサヒビール業務高度化推進部長の奈良篤氏



アサヒビール副理事で業務高度化推進部長の奈良篤氏は、同社の営業マンを主な対象としたシステムについて解説した。

同社は業績の急激な上昇で業務量が増え、それに対応するため大量採用を行なった結果、社員教育が行き届かず営業ノウハウが伝わらなくなってきていたという。そのため情報共有のための場として“営業情報玉手箱”と名付けた社内サイトを立ち上げた。このサイトは社員全員が自由に情報を登録できる仕組みになっており、一線の営業マンが出先からモバイル端末で情報を投稿している。情報伝達と共有のスピードがアップしたことで、意志決定や問題解決も迅速化するなどの効果を上げているという。

奈良氏は「ナレッジマネジメントは単なるシステムではない。社員一人ひとりが自分のために情報と知識を活用し、さらに組織のために情報と知識を提供する。この一連の流れを絶え間なく繰り返していく人間と組織をつくることだ」と述べ、講演を締めくくった。

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