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【東京エアロスペース Vol.3】その他の展示--3D群集シミュレーションなど

2000年03月23日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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航空宇宙産業の展示会である“東京エアロスペース2000”が、22日からの5日間、東京・お台場の東京ビッグサイトで開催されている。主催は(社)日本航空宇宙工業会。航空機メーカーや部品メーカーが数多く出展するなか、3DCGを利用した群集シミュレーションソフトや、3-D体感シミュレーターが異彩を放っていた。一般公開は25日と26日の2日間。

防衛庁にも納品、3Dシナリオツール『PeopleShop』

(株)リアルタイム・グラフィックスのブースでは、3Dのシナリオ作成ツール『PeopleShop』の展示を行なっていた。これは米Boston Dynamics社の製品で、'99年12月には米Computer Graphics World 誌が制定する“Innovation Award”を受賞したという代物だ。最新のバージョンは1.3になる。

PeopleShopは、3Dで作成された街並みや建物といった地形モデル上に、やはり3Dで描かれた人物モデル(キャラクター)が動き回るというもの。それぞれのキャラクターには動線(パス)が設定されており、タイムラインに従って指定された経路を移動する。また、ユーザーがキャラクターに対し、リアルタイムで動きを指定することも可能だ。

3Dシナリオ作成ツール『PeopleShop』。3Dの地形モデル上に、人物や自動車といったキャラクターが動いているのがわかる
3Dシナリオ作成ツール『PeopleShop』。3Dの地形モデル上に、人物や自動車といったキャラクターが動いているのがわかる



キャラクターにはそれぞれ動きのパターンを持たせることが可能で、群集シミュレーションとして利用することもできる。同様のソフトとしてはプレイステーション2に採用されている『Rampage』(米アニメーションサイエンス社)があるが、PeopleShopでもソニーからの引き合いがあったという。

3Dシナリオはあらゆる視点から見ることができるほか、LAN環境では複数のクライアントから別々の視点でひとつのシナリオを見ることも可能。さらに、ユーザーの動きをモーションキャプチャーすることで、3Dシナリオの中で実際の人間が動き回るといった使い方も可能だ。

主な用途としては、交通事故の再現、デパートや駅構内における人の動線シミュレーション、災害発生時における救出シミュレーションなどが挙げられる。日本総販売代理店のリアルタイム・グラフィックスによると、国内では防衛庁を始め、電力会社や重工業関連のメーカーなどに導入実績があるとか。今後は市町村での防災用途などに売り込んでいきたいとしている。

対応OSはWindows NT Workstation。価格については、シナリオと3Dキャラクターを作りこんだ状態で納入されるため個別となるが、1セットあたり300万円程度からとなっている。会場のデモでは、Windows NT4.0を搭載したPentium III-500MHzマシンにメモリーを256MB積んだ状態で、同時に約20人の群集をシミュレーションしていた。これまでに、大阪駅構内で300人の群集シミュレーションを再現した実績があるとのことだ。

米Boston Dynamics社は、MITの人工知能研究所から'92年にスピンアウトして設立された。同社ではPeopleShopのほかにも、3Dの人間キャラクターを作成する3Dツールの『DI-Guy』を開発している。PeopleShop内で動く人間キャラクターも、DI-Guyで製作されているという。

グラストロンを応用したアミューズメントライド

ソニー(株)のアミューズメントシステム部では、グラストロンをベースに開発した3-Dグラストロンを採用した『アミューズメントビジョンライド』のデモを実施していた。

これは、ジェットコースターを模したライドに、3-Dグラストロンを装備したもの。電動モーターを利用した3軸制御を行ない、ライド全体を前後左右・上下に動かし、3Dの体感シミュレーションを楽しむことができる。また、システム全体が本体内に収められているため、特別な付帯工事を必要とせず容易に設置できるのが特徴だ。

ソニーの『アミューズメントビジョンライド』。背広を着たオジサンたちが嬉しそうに自分の順番を待っていた
ソニーの『アミューズメントビジョンライド』。背広を着たオジサンたちが嬉しそうに自分の順番を待っていた



3-Dグラストロンは頭部にスッポリと被せる形状となっており、外部の景色を遮断できるため、3D映像をよりリアルに楽しむことができるとしている。3D映像は、アミューズメントライドに接続された“システムコントローラー”で制御しており、ソフトウェアを入れ換えることで、ローラーコースターやモータースポーツ、アドベンチャーなど様々な映像を楽しめるという。

会場には2席仕様のモデルがデモ展示されていたが、このほかにも1人用の『アミューズメントビジョンライドS1』も用意されている。こちらでは肩を押さえるショルダーバーが省略されており、その代わりシートベルトとグリップが用意されている。

今回の会場展示では、体験型の展示がほとんどなかったためか、アミューズメントビジョンライドはかなりの人気。展示されていた場所はソニーブースから2コマ離れた場所にある川崎重工のブース内で、受付で整理券をもらうことができる。競争率が高いので、早めに整理券を入手しておいたほうがよさそうだ。

インターネット向けの人工衛星と、宇宙用CPU

ダイムラークライスラーエアロスペース社のブースでは、人工衛星を利用したインターネット通信の概念モデルが展示されていた。同社のほかに、三菱電機のブースでも衛星利用のインターネット通信を紹介。具体的なシステムの解説などは見られなかったが、企業向けに高速なインターネット通信を売り込もうという姿勢だ。

衛星インターネットはすでに、米ディレクTVが提供する『DirecPC』が知られている。だが最近は、ADSLやケーブルインターネットといった高速通信が個人ユーザー向けに展開されていることもあり、衛星を利用したネットワークは企業向けにシフトしているようだ。

ダイムラークライスラーエアロスペースの展示。ちょっと大雑把過ぎて、説得力に欠ける気もする
ダイムラークライスラーエアロスペースの展示。ちょっと大雑把過ぎて、説得力に欠ける気もする



(株)東芝では、『宇宙用64bit CPU』の展示を行なっていた。これはMIPSIIIアーキテクチャーで設計されたRISC CPUで、クロック周波数は66MHz。耐放射線仕様になっているのが特徴。CPUの周辺を大ぶりに作っており、メモリーなどとともにMCM(Multi-Chip Module)化することも可能となっている。

東芝の『宇宙用64bit CPU』
東芝の『宇宙用64bit CPU』

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