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空間情報とデジタル情報をいかに重ね合わせてつないでいくか?――第2回次世代データベースとGIS・インターネットシンポジウム”(前編) より

2000年03月17日 00時00分更新

文● 正月孝広 masa@catwalk.ne.jp

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14日、大阪市北区にあるコミュニティープラザ大阪において、“第2回次世代データベースとGIS・インターネットシンポジウム”が開催された。これは、関西データベース協議会の主催で、同協議会が行なっている“'99最新技術フォーラム”の一環として催されたもの。“電子政府と空間データ”というサブタイトルで、地理情報システム(GIS)の最新技術動向を中心に、講演とディスカッションが行なわれた。本稿では招待講演の内容を報告する。

“Digital Earth”というメタファーで情報を扱う

最初の招待講演“空間データと映像の融合”に登場したのは、東京大学空間情報科学研究センター助教授、有川正俊氏。有川氏が籍を置くCSIS(東京大学空間情報科学研究センター)は、研究者のためのツール開発や、データ提供、人材育成を目的とした組織である。理系分野という枠にとらわれず、人文社会学、自然科学など幅広い視野で活動をしている。

東京大学空間情報科学研究センター助教授、有川正俊氏
東京大学空間情報科学研究センター助教授、有川正俊氏



有川氏は“Digital Earth”をキーワードに、空間データをよりよく活用する方法を研究している。現在進めている研究の問題点としては、データフォーマットの整備、インターネットでの流通の確立、情報鮮度の確保などがあるという。また、データを最終的に扱うインターフェースも大切であり、よりビジュアライズされた、操作の容易なソフトの開発も必要である、とした。

こういった問題点も多い中、GISには大きな可能性もある。現在のPCでは“デスクトップ”というメタファーを多く採用しているが、“Digital Earth”というメタファーで情報を扱うことが可能だからである。インターネット上でも現在のハイパーテキスト(リンク検索)やサーチエンジン(キーワード検索)に加え、“Digital Earth”として“位置”を検索する方法で情報を得る手段にすることも考えられるという。

これ以外にも、撮影した映像と、その撮影したカメラの実際の位置情報を取得して、映像と撮影現場の3D空間で同期を取るといった研究も行なわれている。これは3D空間内に映像を埋め込むものである。反対に撮影された映像の中に、名称などの情報を埋め込む研究もある。この場合は、特定の場所の情報収集に威力を発揮する。

有川氏は、これらの空間データを扱う場合に大切になるのは“重ね合わせ”だという。現実、仮想、時間、2D、3Dなどのあらゆるデータを知的に、かつ柔軟に重ね合わせる研究が今後も必要になると説明した。

街をデザインするのにCGを用いるのは、そこにリアリティーがあるから

次に、大阪大学大学院工学研究科教授、笹田剛史氏の講演が行なわれた。笹田氏は、空間をデザインをする業務のキーコンセプトに“コラボレーション”、キーテクノロジーに“CG”と“CGアニメーション”を据えた。空間データを自由自在に扱い、現実のデザインプロジェクトを推し進める笹田氏は、これまでに国内外を問わず100以上のプロジェクトを手掛けている。

大阪大学大学院工学研究科教授、笹田剛史氏
大阪大学大学院工学研究科教授、笹田剛史氏



今回は上海外灘地区再開発、関西国際空港プロジェクトなどの詳細をムービーを交えて紹介したあとに、現在携わっている岡山市再開発プロジェクトの手法を紹介した。

街をデザインする方法にCGを用いるのは、「そこにリアリティーがあるからだ」と笹田氏は語る。それぞれの街には個性があり、そこに住む人々のファッションから、建築物、クルマの種類に至るまでスタイルがあるという。まず、それらの写真を集め、デジタル(アーカイブ化)に変換し、街の受け皿を用意するところから作業は始まる。

そして“シナリオスクリプティング”を行なう。この作業は一言で表わせば“つなぐ”作業である。コンセプトとデザインをつなぐ。言葉とイメージをつなぐことである。そのためには、まず主人公の詳細を絞り込む必要がある。職業、年令、性別、スタイルなど具体的にイメージする。その人のワークスタイル、ライフスタイルへとイメージを広げていく。それをシーン(静止画)やストーリー(動画)の形でつないで表現し、相手に伝える。

相手に伝える表現にはいろいろなものがある。映画監督の黒澤明氏が制作過程においてイメージを伝えるために考案した黒澤流の“ト書き”、“絵コンテ”、“ストーリーボード”などの手法はとても参考になったという。このようにして、ストーリーを最終的にCGムービーの形式にしてコミュニケーションできるようにする。

街づくりにはいくつものシナリオがある。それらをリアルに伝えていく方法はCGが適しており、よりよいCG制作のためにも、素材であるデジタルアーカイブはとても重要だと述べ、講演を締めくくった。

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