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MPEG、IPMPに関する中間会合を開催--世界の著作権管理団体を交えてコンテンツ著作権記述方式の標準化について討論

2000年03月03日 00時00分更新

文● コンテンツIDフォーラム事務局

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ISOの下部組織にあたる標準化団体MPEG(Moving Picture Experts Group)は2月3日と4日、動画符号化形式の1つMPEG-7におけるIPMP(Intellectual Property Management & Protection:知的財産管理と保護)に関する中間会合をパリ市内で行なった。デジタルコンテンツに対する著作権保護システムを考える産学共同プロジェクトのコンテンツIDフォーラム(cIDf)事務局が、その様子をレポートする。

コンテンツの流通促進を目指した知的財産の管理保護に関する議論が活発になりつつある昨今、MPEGにおいても、これらが重要であるとの認識が浸透。デジタル動画の符号化技術であるMPEG-4、MPEG-7において知的財産の管理、保護方式に関する検討を開始した。

MPEG-7は現在作業中のマルチメディアコンテンツの内容記述に関する標準で、コンテンツの管理、検索、フィルタリングといった目的で用いられる。今回の中間会合の目的は、コンテンツ管理についての権利者および権利管理団体側からの要求を収集。その上で、MPEG-7で行なう知的財産管理、コンテンツの識別および知的財産権の記述に対する要求条件概要、MPEG-7のコンテンツ記述の文法、データ構造への要求条件を得ることにあった。

中間会合への参加者は、CISAC、IFPI、MPA、MCPS、PRSといった音楽・レコード業界の団体、FIAPFといった映画業界の団体、IDFやcIDfのようなコンテンツ一般の管理機構標準化団体、米InterTrust Technologies 社や米AudioSoft社などのデジタルコンテンツ管理システムの提供会社など、各国、各分野の代表的著作権管理団体のメンバーであった*

*CISAC(International Confederation of Societies of Atuhors and Composers:著作権協会国際連合)、IFPI(International Federation of the Phonographic Industry:国際レコード産業連盟)、MPA(Music Publication Association:米音楽出版社協会)、MCPS(Mechanical Copyright Protection Society:英録音権協会)、PRS(Performing Right Society:英演奏権協会)、FIAPF (International Federation of Filem Producers Associations:映画製作者連合)、IDF(International DOI Fundation)

MPEG-7で知的財産権管理がどこまで可能か

会合では、“検索などを主目的としたMPEG-7で知的財産権管理がどこまで可能であるか”という点が議論の中心となった。これに対し、著作権など知的財産権に関する記述は法的根拠に基づくべきものであるという観点から、(1)MPEG-7で行なう場合のデータ生成者の正当性保証、(2)データ改ざんの危険などの懸念が出席者から寄せられた。

また、著作権管理団体からは、現在行なっている著作権データ管理に加えて、MPEG-7データを付加する手間も問題とされた。さらに、著作者などの権利情報は頻繁に変更がなされるため、正しさの保証が困難であるとの指摘もあった。

これらに関して、ISBNなどの標準的ID番号や、cIDfが標準化を進めているデジタルの認識コード“コンテンツID”など、既に検討が先行しているコンテンツ管理の枠組みが存在している。このことから、MPEG-7で記述する知的財産管理情報は、それらへの参照情報のみに留めるほうが良いという結論に達した。

著作権権利者が著作権管理の観点からMPEG-7に望むこと

本会合で得られた権利者側からMPEG-7への著作権管理に関する具体的要求は、次の通りである。

・著作権法は国ごとに異なることから、MPEG-7による著作権記述は、各国で法的に有効な記述までは実現できないであろう。同じく、各国の法体系や文化的慣習の違いのため、MPEG-7の標準的記述子や記述スキームのみでは、コンテンツの著作権の記述を完全に行なうことは困難であろう。さらに、コンテンツの権利関係は頻繁に変更が行なわれるため、記述の正確さの確保も難しいであろう。
・権利管理のための個人、法人、団体などの記述や識別化に関しては、各地域や業界ごとに、歴史的経緯を経て既にでできあがっている。従って、MPEGで各業界に対応可能な統一的識別は困難であろう。
・上記問題は、CISACやcIDfなど知的財産管理機構による管理に任せたほうがよい。そのためMPEG-7標準においては、これらの枠組みに基づくコンテンツの識別を可能にすべきである。また、検索用サムネールなど、関連するコンテンツの識別についても同様に行なうべきである。

著作権権利者が著作権保護の観点からMPEG-7に望むこと

また、著作権保護に関しては、MPEG-7データによって可能となるコンテンツ検索機能が違法コピー入手のため用いられる場合など、MPEG-7が著作権侵害を助長する可能性に対する危惧が挙げられた結果、次のような要求条件が得られた。

・MPEG-7はコンテンツの正当な検索、フィルタリングのために用いられるべきで、違法コピーのアクセス、入手、利用のためにMPEG-7が利用されてはならない。
・MPEG-7のデータに含まれる知的財産は、保護が必要。
・MPEG-7はコンテンツの記述を行なうが、コンテンツの保護自体については外部のコンテンツ保護技術が適用可能できなければならない。
・知的財産権に関する情報をMPEG-7データで記述することは利用者にとって有益であるため、各コンテンツプロバイダーが独自に記述できることが望ましい。

コンテンツ識別子や保護技術に関する標準化をMPEG-7に期待する

本会合では当初、MPEG-7の知的財産権管理に関して参加者には懐疑的見方が目立った。これは、(1)参加者が権利管理団体や権利管理システム提供会社などであり、(2)自社が開発した機能やシステムとMPEG-7の関係が競合することに加え、(3)標準についての捕らえ方のずれが存在することによると思われる。また、知的財産保護は従来MPEGで標準化された画像圧縮方法等とは異なるため、IPMPデータ表現が可能であるということだけでは問題は解決していないという見方もあった。

しかし、会合の後半には、出席した権利管理団体等からも、MPEG-7標準化の意義について理解されるようになり、「コンテンツ識別子や保護技術に関する標準化に対してはMPEG-7に期待する」と、歩み寄りも見られた。まだまだ問題は山積しているが、このような地道な努力を通じ、より実用的で使いやすいMPEG-7技術の標準化が期待される。

なお、この特別会合の結果は3月に開催されるMPEGのオランダ会合へ提出される。

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