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【MACWORLD Expo/Tokyo 2000 Vol.17】アドビ、プロ向けレイアウトソフト『Adobe InDesign 日本語版』をスペシャルセッションで初公開!!

2000年02月24日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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アドビシステムズ(株)は、MACWORLD Expo/Tokyo2000の“Adobe InDesignスペシャルセッション”において、プロフェッショナル向けのページレイアウトソフト『Adobe InDesign 日本語版』の一部の機能を一般公開した。

欧米ではすでに成功を収めた『Adobe InDesign』

講演は『Adobe InDesign』のイメージビデオクリップからスタートし、最初に米AdobeSystemsのエグゼクティブバイスプレジデント、ブルース・チゼン氏が登壇、本製品の開発経緯と現状について語った。

まず、チゼン氏は「'80年代後半から'90年代にかけて、アドビとアップルは“PostScript”や“Photoshop”、“Illustrator”などの技術によってパブリッシングに革命をもたらしました。そして、WWWと広帯域幅の技術の登場によって、再びパブリッシングに革命をもたらす時がきたのです。これを私たちは“革命の2.0バージョン”と呼んでいます」と語り、パブリッシングが新しい局面を迎えていることを印象付けた。

さらにチゼン氏は、「昨年のSeyboldで“InDesign”を発表しました。欧米では昨年9月から出荷しましたが、新しいプロダクトの市場導入としては最も成功しました。すでに何十万本も出荷されています」と、欧米での成功を報告した。続いて、ビジネスコンビニのキンコーズ、新聞社のナイトリッダーなどのユーザーからの評価をビデオで紹介した。

さらにチゼン氏は、『InDesign日本語版』は単なるローカライズ製品ではないことを強調した。「日本においてパブリッシングの革命をもたらすには、日本固有の状況を考慮しなければならないと認識したからです。そこで“InDesign-J”というバージョンが出てくるのです」

エグゼクティブバイスプレジデントのブルース・チゼン氏。インターネットはパブリッシングに新たな革命をもたらす、と語ったエグゼクティブバイスプレジデントのブルース・チゼン氏。インターネットはパブリッシングに新たな革命をもたらす、と語った



日本の環境に適した独自の日本語バージョンを開発

続いて、『InDesign』の担当プロダクトマネージャー、プリシラ・ノーブル氏が登場した。ノーブル氏は、昨年の“Seybold Seminars Tokyo”のセッションでも講演した人物だ。

『InDesign』を担当するプリシラ・ノーブル氏。達者な日本語での講演はお馴染みなってきた『InDesign』を担当するプリシラ・ノーブル氏。達者な日本語での講演はお馴染みなってきた



。 ノーブル氏は、日本の印刷、出版の置かれた状況について「欧米では3年前に専用システムからDTPに移りました。しかし、日本では20~30パーセントのデザイナーや出版社しかDTPを使っていません。その理由は、これまでのDTPソフトでは美しい日本語組版ができなかったからです。さらに、使っている20~30パーセントの人たちのほとんどフルデジタルではありません。“Illustrator”や“Photoshop”を使っていたとしても、文字組版には使っていないのです」と語った。

こうした状況にあって、「これまでのレイアウトソフトは単にローカライズをしただけで、日本語のためには作られていません。また、日本のワークフローには、伝統的なワークフローがありました。そこでアドビはチャレンジしたのです」とし、『InDesign』を単なるローカライズではなく、日本語向けに開発していることを強調した。

アドビインターフェースを採用した『Adobe InDesign』の画面。『Photoshop』や『Illustrator』のユーザーにはスムーズに導入できるだろう
アドビインターフェースを採用した『Adobe InDesign』の画面。『Photoshop』や『Illustrator』のユーザーにはスムーズに導入できるだろう

美しい日本語組版を実現する、日本語専用の文字組版エンジン

“InDesign日本語版”にいくつかの独自の機能を加えられることになったが、その1つが日本語専用の文字組版エンジンの搭載だ。

「“InDesign”の文字組版エンジンには、シングルラインコンポーザーとマルチラインコンポーザーという2種類の組版エンジンが搭載されています。しかし、どちらも欧文用に開発されているので、そのままでは2バイト文字をきれいに組版できません。そのため、“InDesign日本語版”には、この2つの組版エンジンに加え、新たに日本語専用の文字組版エンジンを搭載しました」

さらにノーブル氏は「新しく“InDesign”に日本語組版専用のレイアウトグリッドを入れました。これは日本のレイアウト用紙のようなものです」と語った。

『InDesign』には、マージンとコラムの中にフレームなどを入れる欧文組版のやり方が備わっているが、このほかに、さらにもう1つ日本語組版専用のレイアウトグリッドを用意した。これはページごとに組版設定ができ、自動的にレイアウト用紙のようなものを用意できる。

また、テキストフレーム内のグリッド機能には、日本語の文字組用に横書き、縦書き用のフレームグリッドを備えた。さらに“級”と“歯”(いずれも0.25mmを基本とする尺度)もサポートしている。

正確な日本語の配置をするために、英語版でアルファベッドをベースラインで揃える文字揃え機能は、日本語のグリフを考えると使えるものではない。そこで、仮想グリッドで“下揃え”などの日本語の独自の文字組みを設定できるようにした。

このほか、禁則処理設定のカスタマイズやフレーム外へのぶら下がり、ルビ、圏点(傍点)、縦中横のサポートを実現している。さらに“OpenType”*をサポートしており、異体字切り替えや写植機のような斜体機能を実現している。


OpenType
*:アドビシステムズとマイクロソフトで開発している新しいフォントのフォーマット。アップルから“Mac OS Xでの大日本スクリーンのヒラギノ・フォント搭載”という発表があったが、この“ヒラギノ・フォント”のフォーマットは“OpenType”。ノーブル氏によれば、“OCFフォント”、“CIDフォント”、モリサワの“NewCIDフォント”なども使えるとのこと(筆者注)。

強力な日本語組版機能を備えた『Adobe InDesign日本語版』
強力な日本語組版機能を備えた『Adobe InDesign日本語版』


オープンアーキテクチャーで、容易になったプラグイン開発

ノーブル氏によれば、以前は製品を別々に開発していたが、いまではワークフローを考えて製品を開発しているという。そのため『Photoshop』、『Illustrator』、『InDesign』、『PressReady』*、『Acrobat』といったプロフェッショナルパブリッシングのワークフローも実現している。

*PressReady:日本未発売のインクジェットプリンターによる校正紙出力用アプリケーション

さらにノーブル氏は「コアテクノロジーについても同様のコアコードを使っています。これらの製品も同じコードが使われています。例えば、“CoolType”はフォントのラスタライズ、AGMは画面上と出力を同じにし、“CMS”はカラーマネジメントシステムです。また、“OpenType”を活用しているので、クライアントがWindowsを使っている場合でもクロスプラットフォームでもトラブルなく利用できます」とした。

また、デベロッパーへの対応については、「“InDesign”は新たにオープンアーキテクチャーを採用しています。これまでのアプリケーションはコアアーキテクチャーが大きかったため、デベロッパーはコアをいじることはできませんでした。しかし、“InDesign”はコアが小さいので扱いやすくなっています」。さらに『InDesign』はプラグインの環境を持っており、ユーザーインターフェースやツール、パレットなどがプラグインになっているので、新たにプラグインを作って入れられる、とした。

つまり、サードパーティーやシステムインテグレーターは、それぞれのソリューションをカスタマイズして、プラグインとして開発できるわけだ。同時にノーブル氏は「アドビにとっても、早く新しいアーキテクチャーを開発できるのです。すでに200以上のプラグインが開発されており、日本においても開発の話が出始めている」と語った。

最後にアドビシステムズのプロダクトマネージャー、宮本弘氏が実際に日本語版のデモンストレーションを行ない、具体的な操作方法などを披露した。

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