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【三菱電機研究開発成果披露会 Vol.2】ギガビットネットワークなど、マルチメディアコンテンツ流通の将来を見据えた技術を公開

2000年02月17日 00時00分更新

文● 編集部  井上猛雄

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2月9日、三菱電機(株)は、神奈川県鎌倉市の情報技術総合研究所において、同社の研究成果を公開する研究開発成果披露会を開催した。公開当日は、マスコミ関係者など100人近い見学者が集まった。

近年、高速なネットワーク上に、膨大な映像コンテンツが流通するようになると予想されている。このような背景から、三菱電機はマルチメディアコンテンツをギガビット級の高速ネットワークにより配信する技術や、映像コンテンツの検索技術などを研究している。本稿では、公開された研究開発の中からマルチメディア関連の研究をピックアップして紹介する。

“IPベースギガビットネットワーク技術”

この研究は、超高速なネットワーク技術として、郵政省主導による通信・放送機構(TAO)公募“ギガビットネットワークの利用活用研究”に応募し、採択されたもの。ギガビット級の高速ネットワークを使い、動画、静止画、音声、データなどのマルチメディアコンテンツをIPベースで利用する。

今回、研究用のモデルシステムとして開発されたのが、専用プラットフォーム“ギガビットステーション”。神奈川県大船の研究所内にある“ギガビットステーション”に、ATM*ベースのアクセス網“NTTメガリンクサービス”を接続、さらに通信・放送機構“TA0”の研究開発用ギガビットネットワーク“JGN”(Japan Gigabit Network:)を経由して、京都の“けいはんな情報通信研究支援センター”に結ぶ。ネットワーク速度やプロトコルが異なるため、ネットワーク間の相互接続性の検証ができたという。

*ATM:Asynchronous Transfer Mode:非同期通信モード

デモンストレーションとして、2048×2048ドットの高精細大型プロジェクターを利用した映像の配信実験が行なわれた。けいはんな情報通信研究支援センターに設置してあるカメラで撮った映像を送信し、リアルタイムに双方向で会話をしたり、同センターのデータベースに高速でアクセスして、大型プロジェクターに表示するといった実験を公開した。ISDN回線を使用した場合には、1枚の高精細画像を転送するのに25分ぐらい掛かることになるが、この実験では画像を高速に転送できる。

けいはんな情報通信研究支援センターにアクセスし、デ
けいはんな情報通信研究支援センターにアクセスし、デ


ータベースを利用しているところ。大型スクリーンには精
細な画像が映し出されている

ギガビットネットワークシステムを構成する各種ネットワー
ギガビットネットワークシステムを構成する各種ネットワー


ク機器。CISCOのIPルーターや、ギガビットイーサスイッチ、
スイッチングハブなどがある

実際には、2.4Gbpsの通信速度を可能とする“JGN”の幹線(アクセスポイントは横須賀)に接続するまでに、ATMベースのアクセス網を使用しているため、回線速度は十数Mbpsに抑えられていた。しかし、それでも十分に高速性を実感できた。将来的には、遠隔地の医療や教育といった分野、高精細画像を利用したGIS*システム、デジタルシネマなどにも応用できるようになるという。

*GIS:Geographic Information System(地上情報システム)

“MPEG4/MPEG7-7マルチメディアコンテンツ検索・配信技術”

MPEG4は、ネットワークによる配信に適した映像符号化方式として、ISO(Internatinal Standardization Organization:国際標準化機構)/IEC(International Electrotechnical Committee:国際電気標準会議)により標準化された圧縮技術である。また、デジタル映像コンテンツを特徴によって検索できるMPEG7も、2001年9月には標準化が予定されている。

このコーナーでは、さまざまなデジタルコンテンツをMPEG4で圧縮して、インターネット経由で配信し、さらに映像を検索するデモンストレーションが行なわれた。プロトコルはHTTP*とRTP*に対応し、32Kbpsから64kbpsで符号化伝送できる技術を採用。携帯端末での利用にも適したシンプルなビジュアルプロファイルを持つソフトも開発した。

*HTTP:Hyper Text Transfer Protocol:ハイパーテキストをインターネット上で交換するためにウェブサーバーで使用するプロトコル

*RTP:Realtime Transport Protocol:映像や音声のデータなどをインターネット上でリアルタイム転送するのに適したプロトコル

また、従来のキーワード検索だけではなく、MPEG7の特徴記述子を利用し、直感的に分類検索ができるようなデモもあった。具体的には、海中を泳いでいる熱帯魚の映像から任意の魚を選び、それを図鑑データベースから検索して調べるといった技術や、ゴルフの映像の中から似たスイングをしている映像ショットを選び出すといった技術を公開。

画面上の熱帯魚を検索しているところ
画面上の熱帯魚を検索しているところ



MPEG7では、映像の動きや形状、色、テキスチャーなどの特徴記述子を定義することで検索を可能にする。同社はMPEG7の標準化活動に参画しているが、これまでに形状や動きに関する特徴記述子や、検索に関する技術を提案し、実験モデルとして採用されている。

形状や動きを正規標準化し、最も特徴のある部分を選んで検索をするため、一般の人の顔の識別まではできない。しかし、特定の役者などであれば、その役者が出演している番組を電子番組ガイドから検索するといったことにも応用できるようになる。

これ以外にも、電子美術館、電子カタログや、ホームサーバーに記録したデジタル放送コンテンツの頭出しなど、その応用分野は幅広い。

“デジタル放送デモンストレーション”

デジタル放送のデモンストレーションでは、米国地上波デジタルテレビ放送に対応したモデルシステムをベースにしながら、2003年から始まる国内地上波デジタルテレビ放送規格に対応した、実運用に近いサービスを提供するシステムを公開。

システムとして、放送局のベースバンド系、送出系から、伝送系、宅内系までの一連の流れを紹介していた。決められた時刻になると、放送番組運行表(HDTV1ch、SDTV3ch)に従って、自動的に符号化装置(エンコーダー)へコンテンツを送出する。ここでコンテンツをMPEG2に変換した後、圧縮されたデータをマルチプログラム多重化装置で多重化、さらにスクランブル(暗号化)を掛けて、伝送系へと送出するいう自動番組放送システムを展示していた。

コンテンツを自動送出する業務用のシステム。右にある
コンテンツを自動送出する業務用のシステム。右にある


のは送出時間をセットする装置

エンコーダー、マルチプログラム多重化装置など。中央に
エンコーダー、マルチプログラム多重化装置など。中央に


HDTV用1chとSDTV用3CHのモニタリング装置がある

放送サービスの1つとして、家庭内の受像機に表示された番組表から、リモコンによって視聴チャネルを選択できる“電子番組案内”(EPG)がある。同社では“電子番組案内”のデータを自動生成するシステムも開発しており、先の自動番組放送システムに連動した形で動作するシステムも公開していた。このEPGデータ自動生成システムは、先ごろ米国のCBSに初めて採用されたという。また、全体を取りまとめたシステムは、岡山、高松、信越地区の地上波実験に使用されているという。

“次世代ホームネットワークシステム”

このコーナーでは、デジタル放送局や、CATV、監視用CCDカメラなどをホームゲートウェイを介して接続した次世代ホームネットワークシステムを展示。家庭内のホームネットワークのインターフェースとしては、IEEE1394を利用していた。ホームサーバーにダウンロードしたデジタルコンテンツを再生したり、監視CCDカメラからの映像を見るといったデモが行なわれていた。IEEE1394インターフェースの場合、ケーブルの引き回しの問題があるので、将来的には光ファイバーや無線などの利用も考えているという。

次世代ホームネットワークシステのデモ。右端に監視用
次世代ホームネットワークシステのデモ。右端に監視用


CCDカメラがある

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