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市民団体が自由な情報発信やNPO活動の発展を目指し、講演会を開催。講師にサンフランシスコ在住の岡部一明氏

2000年02月15日 00時00分更新

文● 若菜麻里

複数の市民団体で構成される“ViVa! 講演会実行委員会”は、2月12日、都内で講演会“NPOのインフラ作り 米国の環境・情報・社会変革NPOの事例を中心に”を開催した。講師は、サンフランシスコ在住で、『インターネット市民革命――情報化社会・アメリカ編――』(御茶の水書房)の著者の岡部一明氏。

日本では、ボランティア団体や市民団体に法人格を与えるNPO法(特定非営利活動促進法)が'98年12月に施行された。NPO活動の活発化や発展が期待されている中、多くの団体の共通の悩みは、資金力や組織力の弱さ。そうした団体の一番の関心どころである“金”、“マネジメント”、“場所”、“情報”が今回のメインテーマである。

コーディネーターを務めたNPOサポートセンター代表の山岸秀雄氏。「活動をして12年になるが、市民が情報を自分たちのものにして活動するには、ネットワーキングやリソース、資源が不可欠だ」
コーディネーターを務めたNPOサポートセンター代表の山岸秀雄氏。「活動をして12年になるが、市民が情報を自分たちのものにして活動するには、ネットワーキングやリソース、資源が不可欠だ」



主催団体の1つ、市民コンピューターコミュニケーション研究会の浜田忠久氏。開会にあたり、「インターネットを市民運動にどういかしていくかを考えていきたい」とあいさつ
主催団体の1つ、市民コンピューターコミュニケーション研究会の浜田忠久氏。開会にあたり、「インターネットを市民運動にどういかしていくかを考えていきたい」とあいさつ



サンフランシスコでは“行政は市民のもの”

岡部氏は、まずサンフランシスコをスライドで紹介した。「サンフランシスコはもともと、市民運動が盛んな土地だ。'60年代の学生運動やヒッピームーブメントの発祥の地であり、また同性愛者が市民権を得ている。人口の3割がアジア人で、黒人、ラテン系、先住民など、人口の半分が少数民族だ。シリコンバレーでは、新興の小規模な企業の半分がアジア系経営者で占められている。多民族社会が経済活動の基盤になっているのが、シリコンバレーだ」と岡部氏は、社会的な背景を説明した。

講師の岡部一明氏。'92年10月からサンフランシスコに在住し、米国の市民運動に積極的に関わっているフリージャーナリスト
講師の岡部一明氏。'92年10月からサンフランシスコに在住し、米国の市民運動に積極的に関わっているフリージャーナリスト



またNPO活動について、「ヤーバブエナ地区という再開発地域では、NPOが低家賃住宅を建てている。低家賃住宅の中には高齢者支援の食堂があり、みんなで食事ができる。毎週土曜日に街路樹を植えるというプログラムを組んでいるNPOもある。日本ではこういったことは行政の仕事だが、米国では、市民がやれば費用は半分から3分の2程度ですみ、地域の連帯や環境教育にもつながるため、NPOが率先している」と、行政とNPOの関係が、日本とは異なることを示した。

そのほか、スライドには、米IBMを退職したボランティアらが、高齢者にコンピューターを教える風景や、住民投票により建設された図書館で、300台のインターネット端末を操作する市民の姿が映し出された。図書館でインターネットが無料で閲覧できるのは、米国では当たり前。最近ではさらに、商業データベースも図書館で無償で検索できるようになりつつあるという。

米国ではNPOを支える4つのインフラが整備

ひととおりスライドを紹介した後、岡部氏は本題である、NPO活動に重要な四種の神器“金”、“マネジメント”、“場所”、“情報”について、語り始めた。

“金”

サンフランシスコに拠点を構え、全米およびワールドワイドで活動するタイズ財団は、'76年に設立。250個人による8000万ドル(約96億円)の基金をもつ社会変革財団だ。社会変革財団というのは、助成対象を、対処療法的な社会福祉活動をする団体というよりは、社会の根幹を変えていくためのアドボカシー(提言)を行なう団体に比重をおく財団のことだ。

タイズ財団は、年間2000万ドル(約24億円)を約1000の市民団体に助成。「この財団は、米国では普通の規模だが、この額は、(日本の代表的な財団である)笹川平和財団、トヨタ財団、三菱財団、日本生命財団の4団体の助成額の合計よりも大きい」という。

タイズ財団の活動の1つは、ドナー(篤志家)に対してコンサルティングを行ない、ドナーの資金を預かって運用することだ。寄付対象の団体がどれだけ信頼できるか、またその活動への社会的なニーズがどれだけあるかといったことをタイズ財団ではアドバイスしている。

“マネジメント”

タイズセンターは、“インキュベーター方式”によるNPO育成も活動の柱の1つだ。アメリカではベンチャー企業を育成するために、できたてのベンチャーに対して、机1つ分の共同事務所スペースをレンタルし、コピー機などを共同利用したり、事務局側で電話の取り次ぎサービスをするといった“インキュベーター”と呼ばれるビジネスがある。タイズセンターが行なっているのは、いわばNPO版の“インキュベーター”で、約300プロジェクトが参加しているという。これを利用すれば、NPOは、事務所スペースを借りたり、経理など事務的な仕事をタイズセンター側にアウトソーシングして、本業のプロジェクトに集中することができる。さらに、形式上は、タイズ財団の1プロジェクトという扱いになるため、NPO法人格を持っていなくても、税制控除が受けられる。

「新規のNPOは予算の9パーセントをマネジメントサービス料金としてタイズ財団に支払い、活動が軌道に乗ったときに、タイズセンターを卒業する。年間で約90のプロジェクトが新規に加入し、約20団体が独立している。1回限りの市民活動をする際にも、このサービスは利用されている」

“場所”

“場所”としては、45の環境関係NPOが入居する“NPOセンター”が紹介された。12の建物群(床面積1万4000平米)からなるその土地は、かつて軍事基地、今では国立公園だ。実質的に無償の55年間の長期リースで、タイズ財団が国から借用、建物は自前でNPOが改造し、太陽光発電などを利用した省エネ構造になっているという。

“情報”

米国では、NPOがコンピューターを戦略的に利用する傾向が強い。そのため、NPOに対して、コンピューター教育するNPOというのも存在する。代表的なNPOの1つ、“コンピュメンター”では、現在、2500人のメンターがウェブページに登録しており、年間で300件以上、メンターを現場に派遣している。その際に、研修を受けるNPOは、“コンピュメンター”に120ドル支払い、メンター自身は無償で作業をするシステム。なお“コンピュメンター”の年間予算は約200万ドル、スタッフは27名である。

NPOによるインターネットプロバイダーも多い米国

また米国では、NPOによるインターネットプロバイダーが多数存在する。'86年に設立したIGC(世界通信研究所)は、その老舗ともいえる存在で、“エコネット”や“ピースネット”、“レイバーネット”、“ウィメンズネット”などの主要ネットがIGCで統合され、巨大なネットを形成しているという。

「日本では'95年ごろから商業ネットワークが盛んになったが、IGCでは、'87年ごろ、すでにNPOとしてインターネット接続を市民に提供している」。また「米国では、“ライフライン”として、低所得者は、月間約500円の基本料金で市内電話はかけ放題。それ以外の所得者でも、約1200円で使い放題だ。また月39ドルの固定料金で、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)による高速な常時接続サービスが受けられる」。しかも、「アメリカには1000社以上の地域電話会社があり、田舎のNPO的な電話会社もある。そういう電話会社の約30パーセントがADSLをすでに提供している」として、米国社会のネットワークインフラの先進性を説明した。

さらに岡部氏は、「“市民運動は情報産業である”と私はよく口にする。人の意識を変えていくことや、新しい社会理念や価値観を出すこと、問題を提起し広めていくのが市民運動の役割であると感じている。デモや講座など、情報や知識の分野で活動するのが市民運動の任務」だとして、情報のインフラはお金以上に大切であることを強調した。

メディア関係で活発に活動するNPOも多数存在し、それらの団体が発行するミニコミ誌の中には、発行部数が600万部を超えるようなものもあるという。また、ニューヨークタイムズのような巨大メディアに意見広告を出すためのアドバイスをするNPOもある。また自治体のケーブルテレビ局では、無料で市民が自由にビデオを流すことができるという。

米国のNPO活動から本質的な違いを学ぶ

最後の質疑応答では、NPO活動にさまざまな形で関わっている参加者から、多数の質問が出された。中でも印象的だったのが、「米国の金持ちは、日本とは桁が違うため、日本でタイズ財団のような組織を旗揚げするのは無理がある。サンフランシスコのNPOがうまく活動している様子はよくわかったが、ではそれをどうやって日本に適用すればいいのか」という質問。

「時間がなく電子メールでしか告知できなかった」(主催者)としながらも、会場はNPO関係者らで満席
「時間がなく電子メールでしか告知できなかった」(主催者)としながらも、会場はNPO関係者らで満席



岡部氏は、「日本からサンフランシスコに視察に来る人の多くは、日本とは違いすぎる、マネできないという感想を持つようだ。だが、神戸から来た人は違っていて、“これだったら私たちにもすぐできる”とサンフランシスコの“エイズウォーク”などにヒントを得て、帰国後それを実行した。差がありすぎると思っている事柄が、実は意外と近いところにあるのではないかといつも思う」

「しかし真似をするのではなく、本質的な違いを学ぶということが一番重要なポイントではないか。そのため、私はわざと、違う部分を強調して話す。日本が米国とあまりに違うことに愕然とし、その中でどのように学ぶかを考えるという姿勢が大切だ」と、力説した。

なお市民団体“市民コンピュータコミュニケーション研究会”らは、市民団体が企画し情報を発信するためのウェブサイト“ViVa!”を運営、またオフラインで活動をしており、この講演会は、その一環として開催された。主催のViVa!講演会実行委員会には、次の市民団体が賛同している。“アースデイ2000企画・運営委員会”、“NPO研修・情報センター”、“NPOサポートセンター”、“環境NPO研究会”、“シーズ=市民活動を支える制度をつくる会”、“日本国際ボランティアセンター”、“日本フィランソロピー協会”、“文京市民フォーラム”、市民コンピュータコミュニケーション研究会など。

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