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大阪城燃ゆ! 白熱のバトルトーク――インターネット王国、どこへ行く!! 第3回 It's Bit River ~日本初、五大検索エンジン集結!より

2000年02月15日 00時00分更新

文● 服部貴美子 

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東京・渋谷を中心とする地区で活動するインターネット関連の有力起業家が集まって活発な情報交流をしていることで知られる“ビットバレー”(Bit Valley)。その関西版ともいえる“ビットリバー”(Bit River)の会合は、2月9日の催しで3回目を迎えた。

今回の会場は、大阪市・中央区の大阪城“城見ホール”。日本で初めて、五大検索エンジンのスタッフが、揃い踏みを果たした
今回の会場は、大阪市・中央区の大阪城“城見ホール”。日本で初めて、五大検索エンジンのスタッフが、揃い踏みを果たした



運営は、学生を中心とした非営利組織(NPO)、ETICの関西事務局が主体となって担当。ETICの事務局長である壁谷俊則氏が司会を務めている運営は、学生を中心とした非営利組織(NPO)、ETICの関西事務局が主体となって担当。ETICの事務局長である壁谷俊則氏が司会を務めている



5大検索エンジンの“ベンチャー”時代

前半のパネルディスカッションは、“YAHOO!”、“goo”、“LYCOS”、“excite”、“infoseek”という、日本を代表する5つの検索エンジンの運営担当企業の代表者たちを一同に集め、国内サイトの現状と将来展望、さらに関西のネットベンチャーへの期待について、意見を交換をしようという試みである。

パネリスト陣の簡単な自己紹介のあと、出席者からの質問を交えながら、1時間以上の討論が展開された。

この交流会の仕掛人の1人である、KSベンチャーフォーラムの田中一人氏が進行役この交流会の仕掛人の1人である、KSベンチャーフォーラムの田中一人氏が進行役



「ご両親は、皆さんの仕事内容について理解されてますか?」という田中氏の問いかけに「たぶん、分かっていないと思う」(infoseek、水島氏)とパネリストたちは、冗談まじりに回答したが、2~3年前に比べてインターネットの普及率が高まった今、サーチエンジンの知名度がアップしていることは確実であろう。

infoseekの水島氏(左)とLYCOSの平出氏
infoseekの水島氏(左)とLYCOSの平出氏



立ち上げ時からLYCOSを担当している平出氏は「'98年2月に契約、4月に設立、10月にサービス開始というスケジュールで、プログラムからタグ書きまで、スタッフ4名は寝る間もなく頑張った」 と当時を振り返る。それだけの労力を費やしても「立ち上げることの面白さは一瞬。ちゃんとした会社にしていくには、維持することの方が大切。24時間サポートや、無料サービスを充実させ、ロイヤリティーを高める努力をすべき」という。水島氏は、集まったベンチャーたちに対し、「攻めよりも守りが大切」であることを強調した。また、Yahoo! の喜多埜氏は「会社は、お金の使い方に厳しかった。使うときには出し惜しみしないが、使うだけの意味がなければダメ」と、資金投入の考え方についてアドバイスした。

Yahoo! の喜多埜氏は、「1日6200万ビュー程度ですね」と貫禄のコメントYahoo! の喜多埜氏は、「1日6200万ビュー程度ですね」と貫禄のコメント



検索機能を究めるか? 付加価値を出すか?

インターネット人口の増加により、各サイトのアクセス数は着実な伸びを見せている。「検索一筋」(infoseek、水島氏)、「チャットやコミュニケーションサイトとしての色合いも強くなってきた。有名タレントを起用したCMの効果も大きい」(LYCOS、平出氏)、「e-shoppingでは、セブン・イレブンでの受け取りサービスを開始し、好評を得ている。今後、自動車用品の販売も予定あり」(Yahoo!、喜多埜氏)など、他のサービスを付加することで、差別化を図る企業もある。

そこには、「ポータルは、ただの入り口ではなく玄関なのだから、自分の家の中=Yahoo! のコンテンツの中で、ずっと楽しんでいってもらいたい」(喜多埜氏)という思惑や、「検索エンジンがポータルと呼ばれるのは、インターネットが一大データベースだから。われわれは、そこに入っていくトラフィックを増やすことのみ追求しているだけで、ポータルを目指しているわけではない」(平出氏)という使命感が秘められているようだ。

関西で地域密着型のポータルを作りたいという会場からの意見に対し、喜多埜氏は「すでに地域情報ということに限定すれば、Yahoo!をしのいでいるサイトもあるのでは? 我々も、たとえば京都新聞と提携するなど、地域情報を充実させており、アメリカの『Yahoo! ロサンゼルス』と同様に、『Yahoo! 京都』などを生み出す可能性もある」と激励。水島氏は「われわれは、ややゼネラルになりすぎている面があり、生活密着型の情報提供は難しい。こちらにできないことを、ぜひとも実現させて欲しい」と述べた。

exciteの池田氏(左)とgooの国枝氏
exciteの池田氏(左)とgooの国枝氏



また、gooの国枝氏は、「テレビや新聞が特定の地域だけを取り上げ続けると批判があるかもしれないが、インターネットなら問題なくできるはず。たとえば、タレントの公式ページよりも、ファンの作ったページの方が人気が高いように、情報の多様性と“自分が紹介すれば、こうなる!”という視点が大切」とアドバイスした。

リクルートや富士通、ソニーといった新興勢力の台頭が話題となっているが、exciteの池田氏は、「当社も、検索だけにこだわらず、コンテンツの充実に力を注ぐつもり」と語り、家電や携帯端末、携帯電話、ゲーム機器など、あらゆる電化製品からの接続を意識した戦略への取り組みをにおわせた。それに対して、gooの国枝氏は「1100万ビューのうち、700万が検索であり、ここ数年でも減少傾向は見られない。他社のやり方は気にせず、gooに来てくれた方へのサービスを充実させるために、何で検索しているのか? というデータを、いかに活用していくかが今後の課題」と述べた。

一方、未来のユーザーをターゲットにしているのが、infoseekだ。「まだ、インターネットの普及率は2割程度。だから、シェア争いをするよりは、残りの8割の心をとらえる方法を考えたい。従来のメディアは首都圏に集中し、そこで作り込まれて地方へ発信されていた。しかし、インターネットは情報が偏在しているので、ポジティブなユーザーにだけでなく、パッシブなユーザーにも情報を集めてあげられるような、意味のあるポータルでありたい」(水島氏)と展望を語った。

大手をも脅かす関西の独創性に期待

最後に、関西のネットベンチャーに対して、gooの国枝氏が「距離の壁を超える仕組みであるにもかかわらず、情報が東京にやや集中している感がある。これを解消するのは、やはり関西のパワー」と述べると、水島氏は「まず権力を疑え! そこにビジネスチャンスがある」と、infoseek最高幹部の伊藤穣一氏の言葉を引用して激励。

exiteの池田氏は、関西発祥のファッションなどが、全国的にブレイクしてきたことに触れ「大手にはないアイデアが、増加を続けるユーザーを獲得する力になるのでは」と、関西人の独創性に期待を寄せるコメントを述べた。平出氏は「これからは、外資も参入してくる。わが社も外資系であるが、個人的には日本純正の企業に頑張ってほしい。短期間に効率的な投資ができるよう、緻密に計画を練ることが肝心」と、ネットバブルへの警鐘を鳴らした。

最後にYahoo! の喜多埜氏の「人がみたときに“便利だな”と思うサービスのアイデアがあれば、おのずと人やスポンサーが集まってくる。Yahoo! もソフトバンクもまだまだ発展途上。こういう場でいい出会いがあれば、まずは、メールで連絡を取ってみること。私たちも、そういう申し込みを歓迎したい」という発言に続き、進行役の田中氏が「みんなが、幸せになれるような事業を創っていこう」と抱負を述べ、ディスカッションは終了した。

交流会の模様

その後、会場は参加者たちの交流会に早がわり。胸の名札のシールの色分け(赤=ベンチャー企業、緑=支援団体、青=金融機関)を頼りに、約400名が名刺交換に、ビジネスプランのディスカッションにと、有意義な時を過ごした。

参加者にも現役の学生が多い。“ゆめみ”は京都大学情報学研究科に籍をおく深田浩嗣氏(左端)らが中心となり、チャット・ポータルを運営。先日、“株式会社ゆめみ”として登記手続きを完了したばかりという、注目の成長企業の1つである
参加者にも現役の学生が多い。“ゆめみ”は京都大学情報学研究科に籍をおく深田浩嗣氏(左端)らが中心となり、チャット・ポータルを運営。先日、“株式会社ゆめみ”として登記手続きを完了したばかりという、注目の成長企業の1つである



・ゆめみ亭(ゆめみ株式会社)
 http://www.yumemi.ne.jp

インターナショナル エデュケーション ネットワークの浜田祐一代表は、大阪大学在学。「英語学習者のための英文添削サービス」をネット上で展開しており、大阪市創業支援センターが4月に開催を予定しているベンチャーセミナーにも、パネリストとして出席する予定だインターナショナル エデュケーション ネットワークの浜田祐一代表は、大阪大学在学。「英語学習者のための英文添削サービス」をネット上で展開しており、大阪市創業支援センターが4月に開催を予定しているベンチャーセミナーにも、パネリストとして出席する予定だ



・インターナショナル エデュケーション ネットワーク
 http://www.international.ne.jp

今年の1月に大阪市中小企業投資育成より、新規投資を受けた(株)きゃぴてる、長谷川徹氏(左)。郵便貯金を組み入れた電子決済システム『CAPION』の成長には、実力あるクリエイターの発想と技術力が不可欠であるといい、「新しい出会いがあるとうれしい」と語った。右はシルバーエッグ・テクノロジー(株)の中川恵介氏
今年の1月に大阪市中小企業投資育成より、新規投資を受けた(株)きゃぴてる、長谷川徹氏(左)。郵便貯金を組み入れた電子決済システム『CAPION』の成長には、実力あるクリエイターの発想と技術力が不可欠であるといい、「新しい出会いがあるとうれしい」と語った。右はシルバーエッグ・テクノロジー(株)の中川恵介氏



・きゃぴてる
 http://www.capitel.co.jp/

・シルバーエッグ・テクノロジー
 http://www.silveregg.co.jp/

2月1日より本格的に営業をスタートした大阪市創業支援センターの吉田雅紀室長(左)と、野村証券(株)、大阪資本市場部の出原敏氏は、関西のネットベンチャーの躍進を陰から支えるキーパーソンといえよう
2月1日より本格的に営業をスタートした大阪市創業支援センターの吉田雅紀室長(左)と、野村証券(株)、大阪資本市場部の出原敏氏は、関西のネットベンチャーの躍進を陰から支えるキーパーソンといえよう



・大阪創業支援センター“あきない・えーど”
 http://www.akinai-aid.ne.jp/

・野村証券
 http://www.nomura.co.jp/

関西でのネットベンチャーの交流会は、“ビットリバー”だけにとどまらない。こちらは、“ベタバレー”の常連陣
関西でのネットベンチャーの交流会は、“ビットリバー”だけにとどまらない。こちらは、“ベタバレー”の常連陣



兵庫県加古川にある(株)グロ-バルが中心となり、兵庫のネットベンチャーの組織“Bit Bridge”も活動開始。グローバルの営業担当、横山康人氏(左)と、さくら銀行、小島克仁氏
兵庫県加古川にある(株)グロ-バルが中心となり、兵庫のネットベンチャーの組織“Bit Bridge”も活動開始。グローバルの営業担当、横山康人氏(左)と、さくら銀行、小島克仁氏



・グローバル(Bit Bridge構想)
 http://www.global-netmedia.co.jp

創業間もないベンチャーに混じって、大企業のネット担当者も参加。サントリーの山内雄彦氏(左)と石田匡房氏。「面白い発想の人がいれば」と、積極的に名刺交換を繰り返していた
創業間もないベンチャーに混じって、大企業のネット担当者も参加。サントリーの山内雄彦氏(左)と石田匡房氏。「面白い発想の人がいれば」と、積極的に名刺交換を繰り返していた



・サントリー(NOMAD)
 http://www.nomad.suntory.co.jp/

当初に比べて、女性の割合も増加傾向。インフォウエア・デザインの谷口登子氏(左端)は、フロンティアの事務局担当者の1人。山根君子氏(右から3人目)は、新進気鋭のフリーデザイナーである
当初に比べて、女性の割合も増加傾向。インフォウエア・デザインの谷口登子氏(左端)は、フロンティアの事務局担当者の1人。山根君子氏(右から3人目)は、新進気鋭のフリーデザイナーである



・インフォウエア・デザイン
 http://www.infoware.ne.jp/

マーズコーポレーションの北山友之氏は、前回に引き続いての参加。「ビットバレーが、ああいう形で終わってしまったので、イベントの加熱化を心配していたが、進行もうまく、じっくりと話のできる会でほっとしました」と語っていたのが印象的だった
マーズコーポレーションの北山友之氏は、前回に引き続いての参加。「ビットバレーが、ああいう形で終わってしまったので、イベントの加熱化を心配していたが、進行もうまく、じっくりと話のできる会でほっとしました」と語っていたのが印象的だった



・マーズコーポレーション
 http://mars16.com/

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