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【三菱電機研究開発成果披露会 Vol.1】テレビ、クーラー、照明などの家電製品を携帯電話などで制御できる時代がやってくる

2000年02月14日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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2月9日、三菱電機(株)は、神奈川県鎌倉市の情報技術総合研究所において、同社の研究成果を公開する研究開発成果披露会を開催した。公開当日には、マスコミ関係者など100人近い見学者が集まった。

三菱電機は、2001年を目標に中期経営計画を策定し、その事業戦略として“ITソリューション事業の拡大”、“システムLSI事業の徹底強化”、“基幹事業の収益力向上”の3本柱を打ち出している。この経営計画を実現するために、重要な研究課題については集中的にRD費を投入し、開発のスピードアップを図っている。今年度のRD費は未定だが、前年の1700億円以上になるとしている。また、4月からは社内ベンチャー制度も実施する予定だ。

本稿では、公開された研究開発の3つの研究をピックアップして紹介する。

“電力線モデム/コンパクトウェブサーバー”

公開された技術の中で、特にユニークだったのが、この“電力線モデム”である。これを用いれば、一般の屋内電灯線(AC電源ライン)を伝送路にして、家電製品同士のネットワークを簡単に構築できるようになる。通信速度は4.0kbpsから36.5kbpsで、ノイズの状態によって、自動的に切り替わる。

AC電源ラインに制御信号を乗せて伝送する技術なので、発生するノイズが特に問題となる。これは、独自の“分散トーン方式”を開発することで解決した。具体的には、130kHzから450KHzの通信周波数帯域に3本の周波数(それぞれ64kHzおき)を設定し、この3本のトーン(搬送波)のうち、最もノイズの影響が少ないものを選んで受信する仕組み。また、ノイズの状態が変化した場合でも、このトーン周波数を自動的にシフトさせ、ノイズを避けるような工夫を凝らしている。

。電力モデムは、デジタル信号の処理をDSPで行なうことで、ハードを最小限に抑えている。中央の2つの筐体が電力モデム。その左横に制御すランプやエアコンがある
。電力モデムは、デジタル信号の処理をDSPで行なうことで、ハードを最小限に抑えている。中央の2つの筐体が電力モデム。その左横に制御すランプやエアコンがある



さらに、さまざまな機器を、ウェブブラウザーで監視、制御できるウェブサーバーソフト『TSUBASA』(開発コード名)も公開。これを機器に組み込めば、公衆回線や携帯電話からインターネット経由で機器を制御できるようになる。たとえば、携帯ブラウザーで自動車のエンジンをかけたり、自動販売機の在庫を外から調べられる。また、ホームゲートウェイに組み込み、先の電力モデムと組み合わせることで、テレビ、クーラー、照明、監視カメラなどを外から制御できるようになる。電力メーターに組み込めば自動検針も可能だ。

『TSUBASA』搭載のゲートウェイ。DoCoMoのiモードにも対応イできるようになっている
『TSUBASA』搭載のゲートウェイ。DoCoMoのiモードにも対応イできるようになっている



将来的には『TSUBASA』の機能をワンチップ化して機器に組み込むことも考えているという。Javaでアプリケーションを構築するためのサーブレットAPIを実装しているため、さまざまな用途に利用できるようになるだろう。

“ボリュームグラフィックス用アクセラレーター”

通常の3Dグラフィックは、表示する表面情報だけを処理して画面に表示するが、ボリュームグラフィックでは、物体の内部情報まで含めて処理をする。このため、内部構造や半透明な物体を表示できるようになる。今までは、処理データが膨大なため、EWSを使用しても毎秒数枚程度しか処理できなかったが、ボリュームグラフィックス用アクセラレーターボード『VolumePro500』をPCに増設すれば、WindowsNT上でも毎秒30フレームの高画質表示が可能となる。

なお、搭載しているASCIをさらに高集積化し、性能を向上させた『VolumePro1000』を現在開発しているところで、年内中に発売するという。

PCに増設されている『VolumePro500』
PCに増設されている『VolumePro500』



3次元情報をリアルタイムに視覚化できるため、医療分野や非破壊検査、気象観測などに利用できる。今回の展示では、この『VolumePro500』を使用した3つの応用事例を紹介していた。

“雲霧観測システム”では、雨になる前の雲や霧を観測し、ボリューム表示できるシステム。このシステムでは、まず雲霧を観測するために、高出力でコヒーレント性の高いミリ波ドップラーレーダーを世界で初めて開発した。これを用いて半径20キロメートルの範囲で気象を観測し、気象レーダー部に採用した『VolumePro500』でリアルタイムに雲霧の状態を表示する。

また、医療分野の応用例として、生体の断層を視点を変えながら表示させるシステムや、CTやMRIなどで撮った生体断層像をモデリングして手術に役立てるナビゲーションシステムの紹介もあった。



 

リアルタイムで人体の内部の断層が見られる。視点を変えたり、拡大もスムーズにできる
リアルタイムで人体の内部の断層が見られる。視点を変えたり、拡大もスムーズにできる



“EMC大型電波暗室”

公開された施設は、1月に竣工したばかりのEMC(Electro-magnetic Compatibility:電磁両立性)電波暗室や、電源ライン試験室、静電気放電試験室などを含む3階建ての技術棟。EMC大型電波暗室は、縦25メートル、横18メートル、高さ10メートルという国内最大級の設備である。付帯設備として、直径6メートルのターンテーブルあり、ここで最大10トンの大型電子機器のノイズ試験や解析ができる。試験周波数範囲は30MHzから40GHzまで。
ここで、主要各国のEMC規格に適合するノイズ試験が行なえる。

竣工したばかりのEMC電波暗室
竣工したばかりのEMC電波暗室

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