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【マルチメディアコンテンツOSAKA Vol.4】黒澤映画のすべてが分かるCD-ROMタイトル“黒澤明デジタルミュージアム”~セミナープログラムより

2000年02月07日 00時00分更新

文● 正月孝広 

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デジタルコンテンツを前面に押し出し開催された“マルチメディアコンテンツOSAKAフェスティバル2000”。マイドームおおさかで、2月1日から3日の期間にわたり開催された。入場は無料。マルチメディアコンテンツOSAKAフェスティバル実行委員会の主催で行なわれ、今年で3回目となる。

このフェスティバルでは多数のプログラムが用意された。100を超えるブースの出展。“マルチメディアコンテンツOSAKAグランプリ2000”の紹介。毎日20分間隔で行なわれたメーンステージでのプレゼンテーションなど、充実した内容となっている。

そしてマイドームおおさか3Fのメーンフロアーからエレベーターで移動した8F会議室では、セミナープログラムも用意された。1日目は次世代ネットワークの展望、2日目はデジタルコンテンツの具体事例、3日目はクリエーター向けのソリューションセミナーとテーマを分けての開催である。このレポートでは、2日に行なわれた、“黒澤明デジタルアーカイブ”のセッションをお届けする。

マイドームおおさか8Fの会議室。多くの参加者が詰め掛けた
マイドームおおさか8Fの会議室。多くの参加者が詰め掛けた



“黒澤明デジタルアーカイブ”は、パネルディスカッション形式で行なわれた。パネリストは、まず、黒澤監督の映画では衣装を担当し、現在、黒澤プロの取締役でもある黒澤和子氏。東京大学大学院助教授、浜野保樹氏。(株)大林組のマルチメディアスタジオ、西口勇氏の3名が参加。

東京大学大学院助教授、浜野保樹氏(左)。黒澤監督作品で衣装を担当した黒澤和子氏(右)
東京大学大学院助教授、浜野保樹氏(左)。黒澤監督作品で衣装を担当した黒澤和子氏(右)



大林組のマルチメディアスタジオ、西口勇氏
大林組のマルチメディアスタジオ、西口勇氏



'98年9月6日に映画監督黒澤明氏が他界した。黒澤明監督によって製作された映画は全部で30本。国内はもとより海外での評価が高く、世界の映像クリエーターに与えた影響ははかり知れない。

撮影現場の資料から生前のインタビューまで、すべてを網羅

今年の夏、ハリウッドに登場するロバート・ゼメキスセンターには、スティーブン・スピルバーグ監督とジョージ・ルーカス監督がプロデュースするデジタルスタジオがお目見えする。このスタジオには2人が尊敬する巨匠の名前を付けることとなり、スピルバーグ監督は“STANLEY KUBRICK DIGITAL STUDIO”。そしてルーカス監督は“KUROSAWA AKIRA DIGITAL STUDIO”と名付けた。

黒澤和子氏は「映画以外には頓着のない人だった」と黒澤明監督を振り返る。書きなぐった脚本、イメージを落とし込んだスケッチなど、映画界にとって貴重な資料がたくさんあるが、ほとんど整理されていなかったという。これらの資料は監督とスタッフが意思の疎通を図るための道具にすぎず、どんな映像を撮影するかという本質を監督は常に見続けていたからである。

イメージをスケッチに起こすということは、具体的に形として分かっていないと描くことができない。そしてそのスケッチを見ただけで、セットの製作、ライティングの位置、カメラワークなど一目瞭然で動くことができたのが黒澤のチームだという。

これらの資料、そして衣装やポスター、また生前のインタビューなども交えてデジタル化したのが“黒澤明デジタルミュージアム”である。このCD-ROMでは映画“乱”で炎上した、“三の城”を3Dで復元。この城の中に展示してある衣装、資料などを歩いて見て回る演出がなされている。その膨大な資料のボリュームもあわせて、完成度の高い作品である。

ディスカッション中に紹介された“黒澤明デジタルミュージアム”の一場面
ディスカッション中に紹介された“黒澤明デジタルミュージアム”の一場面



「インターネットのことも、もっともっと勉強したかった」――黒澤監督

マスコミで紹介される黒澤監督像では、なぜかよく怒鳴っている映像が流れる。独り歩きする自分のイメージを見て、監督は「24時間怒っていたら疲れちゃうよね」と胸中を語っていたとのこと。
 
“人間、前向き前向き”と言い続け、知識に対してはどん欲な姿勢を保ち続けた黒澤監督。晩年は、「インターネットのことも、もっともっと勉強したかった」という言葉は印象深いものであった。

ディスカッションの最後に、インターネット上で情報を提供するホウェブ“kurosawa.or.jp”を現在準備中であると紹介した。正式なアナウンスの日程は未定だが、貴重な情報に出会える場所として期待したい。

黒澤監督の遺稿である“雨あがる”を小泉堯史の監督で映画化。第56回ヴェネチア国際映画祭で絶賛をあびる。黒澤和子氏も、もちろん衣装で参加している
黒澤監督の遺稿である“雨あがる”を小泉堯史の監督で映画化。第56回ヴェネチア国際映画祭で絶賛をあびる。黒澤和子氏も、もちろん衣装で参加している

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