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米IBM、ナノ技術に基づいた新たな通信技法を発見したと発表

2000年02月04日 00時00分更新

文● 編集部

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日本アイ・ビー・エム(株)の4日付けの発表によると、米IBM社は3日(現地時間)、配線を使用せずに、電子の持つ波の性質を利用して、原子レベルで情報を伝達する方法を、同社の研究グループが発見したと発表した。この新しい現象は、“量子蜃気楼(Quantum Mirage)”効果と名付けられ、非常に微細で配線を使用できない次世代のナノ(nm:1000分の1μm)サイズの電子回路を使用したデータ伝送に利用できる可能性を秘めているという。量子蜃気楼は、“近藤効果”と呼ばれ、'64年にその存在が理論的に解明されていたという。

量子蜃気楼効果は、IBMアルマデン研究所の科学者であるドナルド・アイグラー氏、ハリ・マノハラン氏、クリストファー・ルッツ氏の3名によって発見された。その研究によると、まず低温走査トンネル型電子顕微鏡(STM)を使用して、数10個のコバルト原子を銅表面上に“楕円”リング状に配置する。その楕円の焦点の1つに磁性コバルトの原子を置くと、磁性原子のないもう1つの焦点に、まったく同じ量子状態の蜃気楼が現われるという。つまり、原子のある場所から原子の存在しない場所へ情報が投射されていることになる。

この作用は、光学レンズや“ウィスパー・スポット(Whisper Spot)”によって、建物の中で光や音が1点に集中する仕組みに似ているという。ワシントンD.C.にある米国会議事堂の旧下院会議場の2つのウィスパー・スポットでは、一方で非常に小さな音が発生すると、遠く隔たった議場反対側にあるもう一方のウィスパー・スポットでその音がはっきりと聞き取れる。

なお、今回の研究結果は、国際科学誌『ネイチャー』2月3日号のカバーストーリーに発表されたという。

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