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すべての人に対等な、プロシューマーの時代がやってくる――テンポラリー研究会より

2000年01月31日 00時00分更新

文● 正月孝広 masa@catwalk.ne.jp

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1月28日、大阪科学技術センターにおいて“コーディネート活動支援事業'99 テンポラリー研究会”が開催された。7回目を迎えたこの研究会は、毎回先進的なテーマを取り扱い、関西で新ビジネスに取り組む人々の交流の場になっている。

大阪科学技術センター。各種セミナーが頻繁に催されている
大阪科学技術センター。各種セミナーが頻繁に催されている



主催は(財)イメージ情報科学研究所。この研究所は'92年に設立され、イメージ情報を具体的に活用する調査・研究や、官民学を結び産業の振興を支援するコーディネートなど幅広い活動をしている。当日は参加者多数のため、急遽(きゅうきょ)広い場所に移しての開場となった。

まずイメージ情報科学研究所常務理事、堀江多賀雄氏の挨拶と、今回のアドバイザーである宝塚造形芸術大学教授、大村皓一氏がテーマに関する現状を紹介。大村氏は'83年の映画『ゴルゴ13』のCG制作総指揮を務めるなど日本のCG制作の草分け的存在である。その後、2つの講演が始まった。

イメージ情報科学研究所常務理事、堀江氏
イメージ情報科学研究所常務理事、堀江氏



宝塚造形芸術大学、大村教授
宝塚造形芸術大学、大村教授



iモードが狙うマーケットはコンビニ

最初に“iモードの現状と将来展望”と題して、NTT移動通信網(株)、モバイルマルチメディア事業本部ゲートウェイビジネス部ビジネス企画担当部長、高木一裕氏のセッションが行なわれた。

NTT移動通信網、モバイルマルチメディア事業本部の高木氏
NTT移動通信網、モバイルマルチメディア事業本部の高木氏



この研究会の数日前に、中国の携帯電話の契約数が7000万人を越え、日本を追い越したとのニュースが流れており、参加者も携帯市場の動向に機敏に反応していた。高木氏は日本の総人口から考えて、携帯電話の普及は8000万人という数字が最終的な上限になるのでは?と分析している。もちろん人で考えた場合ので市場であって、今後は、自動販売機、クルマ、ペットなどでの利用拡大を研究中とのこと。

そのiモードの狙うこれからのマーケットを“デパートではなくコンビニを目指す”と表現した。高性能、多機能で、利用者に知識や技術を強要するPCとは異なり、必要な時に、必要なものが、早く安く、しかも簡単な操作で手にすることが重要だという。そのためには利用者に技術的なバックボーンを意識させるのではなく、コンテンツを充実させ、“iモードでできることはこんなにある”というアピールをすることが大切だとした。

そのコンテンツの成功例の1つとして、(株)バンダイの“いつでもキャラっぱ”を紹介した。

これからのiモードの展開であるが、今年の秋にはJavaなどを対応させたゲームのサービスが始まるとしている。そして2001年春にはWCDMAのIMT-2000が登場する。64kbpsをサポートしたリッチなコンテンツを展開できる。

ECビジネスで重要な認証レベルの問題

コーヒーブレークのあと、沖電気工業(株)、システムソリューションビジネスグループ理事・技術長、平松雄一氏のセッションへ移った。テーマは“これからのECビジネスについて”。

沖電気工業、システムソリューションビジネスグループ理事・技術長、平松氏
沖電気工業、システムソリューションビジネスグループ理事・技術長、平松氏



これからの社会の原点は、“生きることに対してすべて対等であること”と平松氏はセッションを始めた。産業革命以降、工業化による生産者と消費者の分離が起こったが、現在の情報革命において物質と情報が融合し、再びプロシューマーの時代が訪れるという。すべてに対して対等とは、全員が消費者の立場に置かれるということである。

今までの工業化社会とこれから訪れるネットワーク社会は、集団行動社会と個別行動社会と言い換えることができる。このような個人の意識が高まるネットワーク社会では、その個人の認証がECのビジネスにおいて非常に重要となってくる。

現在の認証は、入力されたデータとデータベースに蓄えられているデータの照合しかしておらず、本人の行動によって入力されたものかどうかは認証していない。本人以外の操作でも、入力されたデータは只のデータとして流れてしまう。今後は、この本人の行動による入力であるという認証レベルが必要とされている。

最後の質疑応答では電子マネーに関する活発な意見がでた。平松氏は電子マネーの活用は地方でこそ有効性を発揮すると述べた。高齢化の進む地方では、人を動かさずに情報を動かすことによって利便性が向上する。そのためには1つの端末で“支払い”、“入金”などの処理が可能で、社会的に安いコストで運営できるシステムを構築することが大切、と締めくくった。

セミナー会場。質問が飛び交う熱心な参加者が多く来場していた
セミナー会場。質問が飛び交う熱心な参加者が多く来場していた



この研究会、次回は2月9日に同じ大阪科学技術センターで開催される。テーマは“シーズ探索とニュービジネスを探る”と題し、宇宙開発特許や情報通信関連の最新技術を紹介する予定。

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