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【ビジネスカフェ会員通信特約】インターネットがもたらしたもの--盗作する人、煽る人、盗作度合いを測る人

2000年01月26日 00時00分更新

文● ビジネスカフェ 平川克美

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ビジネスカフェは、スマートバレージャパンの関係者などが関与して米シリコンバレーに開設した企業である。日本から米国に、米国から日本に進出しようというベンチャー企業、個人、NPOなどが、最初のよりどころとするインキュベーターの業務を中心とする。

ビジネスカフェのウェブサイトに年間100ドルを会費を払って登録すると、毎週、シリコンバレー発のレポートが電子メールで送られる。そのレポートの中から、ビジネスカフェの責任者、平川克美氏が書いた記事を、関係者の許諾を得て、転載する。用字用語は、原文のまま。


新産業革命-インターネットがもたらしたもの

インターネットが普及したおかげで、調べ物をするのが楽になった。たいていのことなら検索エンジンを使って調べられる。しかも、図書館に行くより効率的に、より新しい情報が手に入る。

この恩恵を大きく受けている人たちに、学生がいる。米国の大学では、レポートの課題が多いが、レポートを書くときに、インターネットが大きく活躍する。学生はテーマを与えられると、すぐにコンピュータに向かい、インターネットサーチを開始する。キーワードを入れると関係文献や事例などが瞬時に現れるから便利なのだ。

この文献検索に役立つサイトも登場している。たとえば、CyberEssays.comやSchoolsucks.com, あるいはCheater.comといったサイトで、過去に発表された文献をデータベース化し、無料あるいは有料で提供したり、またレポート執筆にアドバイスも与えてくれるという。

しかし、この弊害もまた大きい。インターネットで得た情報や資料を、そっくりそのままレポートに引用し、あたかも自分のオリジナルとして提出してしまう学生が、近頃は急増しているそうだ。もちろん、関連文献をいくつか探し、抜粋した文章を適当につなげてレポートを作成してしまうといった「盗作」は、昔から存在したのだが、インターネットで検索が便利になった分、よりこ
の盗作作業がやりやすくなったのかもしれない。盗作行為は厳しく禁止されていて、発見されれば落第の処分も下されることもあるだが。

さて、インターネットを利用してレポートを簡単に仕上げようという学生がいれば、その「盗作」を発見して違反学生を取り締まろうという先生も当然現れる。カリフォルニア大学バークレー校の教授が開発したサイト「Plagiarism.org」は、まさに盗作取り締まり用サイトだ。学生が提出したレポートを、このサイトで処理すると、内容のどの部分が既存の文献と類似しているかを判断し、類似部分は色分けして明示されるという。

ただし、レポートでは、自分の考えを裏付けるために、既存の文献から引用することがある。その場合、規則に従って出典を明記すれば盗作とはならない。上記のサイトでは、正式な形で出典が明記されているかどうかまでは判断してくれないので、最終的に盗作かどうかの判断を下すのは、人間、つまり先生
の仕事になるそうだが。

学生のレポートだけではない。日々開発されるソフトウエアのプログラムも、盗作の危険が高い。そしてこのソフトの盗作を探知するプログラムも開発されている。同じくバークレー校の助教授によるMOSS (Measure Of Software Similarity、www.cs.berkeley.edu/~aiken/moss.html)がそれだ。このプログ
ラムは、JavaやC++といったコンピュータ言語10種近くがカバーされており、あるプログラムを入力すると、既存のソフトウエアで同様の理論が使われていないかをチェックしてくれるというもの。1997年から公開されたこのプログラム、すでに世界各地で1000人以上のユーザー登録があるという。ただし、残念
ながら今はもう内容のアップデートを中止しているそうだ。

というわけで、インターネットで便利になったものの、その弊害も発生し、さらにはその弊害を取り締まるためのサービスを提供するサイトも生まれている。いたちごっこの感もあるが、このインターネットパワー、いったいどこまで行くのだろうか。

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