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【お知らせ】CSKグループと関東CCC会、新春講演会を開催――野口悠紀雄氏と篠田正浩氏を招く

2000年01月21日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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CSKグループと、同グループのユーザー企業で構成する関東CCC会は21日、新春講演会を都内のホテルで開いた。東京大学教授の野口悠紀雄氏と、映画監督の篠田正浩氏が講演し、「インターネットやコンピューターで新しい時代が始まる」などと語った。

「アカデミズムにおいても、インターネットを利用することで、今まで数ヵ月もかかっていた資料集めが数分で済むようになった。入手しにくい欧米の資料や文献を解説するだけの研究者は、必要なくなった」と語る野口氏
「アカデミズムにおいても、インターネットを利用することで、今まで数ヵ月もかかっていた資料集めが数分で済むようになった。入手しにくい欧米の資料や文献を解説するだけの研究者は、必要なくなった」と語る野口氏



『インターネット「超」活用法』など多数の著書で知られる野口氏は、“ネットワークがひらく新しい経済”をテーマに、インターネットで急速に変わりつつある社会経済と、日本の課題について語った。

野口氏はまず、「数百年に1度の大きな変化が起こっている」として、インターネットが引き起こした経済や産業の変貌について解説。世界一の書店となったアマゾンドットコムや、BTO方式の米デルコンピュータ社、自社工場を持たない米シスコシステムズ社などを例に挙げ、電子商取引による新しいビジネスモデルの誕生を指摘した。

このようなe-Businessを特徴付けるのは、事業展開やチャンスを判断するスピードの速さであり、小回りが利く小さな組織であり、どこにオフィスを置くかといった場所の制約から自由であることだという。「21世紀の日本の大事業は首都移転だというが、これは場所にとらわれたまったくのアナクロニズム。首都はどこでもよく、国会がオンラインになるようでないと日本に未来はない」と政府が進めるプロジェクトを皮肉った。

インターネットにより、米国の産業も一変した。「オンラインによる株式取引が進み、メリルリンチのような従来型の証券会社は手数料が割高になり、顧客はオンラインに移っていった。世界最高の百科事典であるブリタニカは、CD-ROMで出ていたマイクロソフトの『エンカルタ』に負け、ネット上で無料で公開を始めた。e-Businessは破壊的な力を持っている」。

とはいえ、この変化は始まったばかりなので、「新技術の使い方をまだ分かっているとは言えず、e-Businessのビジネスモデルも確立しているとは言えない」。しかしIT関連の成長をバブルと捉える見方を否定し、「将来、大きな変化が起こるのは間違いないとの考えが、現在の株価の高値に反映されている。'80年代の日本のように単なる期待が膨張しただけのものとは本質的に異なっている」とした。

米国に対し、日本は遅れていると指摘される。理由として、「例えばSOHOを日本で行なうとしても、恐らく税務署はSOHOの社員に対して支払う金を給与とは認めず、その分税金がかかるため企業は嫌がるだろう。また企業では、気心の知れたグループ全体で仕事を進める傾向があり、SOHO向けに仕事を切り離すこともできない」として日本型企業文化の弊害を挙げた。また「日本でアマゾンドットコムのようにオンラインで値引き販売を行なうとしたら、現状では再販制の壁を超えられない」として一層の規制緩和を求めた。

結論として、「日本人は1人ひとりは十分に創造的な能力を持っているが、社会的な制約が成長を阻んでいる。新しいものを受け入れ、社会が変われば日本はIT分野をリードしていくことも可能だろう」と語り、ネットワーク時代に対応した社会の変化を訴えた。

「1930年代の東京をCGで再現し、ゾルゲを主人公にした映画の制作を考えている」という篠田氏
「1930年代の東京をCGで再現し、ゾルゲを主人公にした映画の制作を考えている」という篠田氏



続いて映画監督の篠田正浩氏が講演した。篠田氏がメガホンを取った『梟の城』(昨年公開)の制作の苦労について触れ、「司馬遼太郎氏の原作には、秀吉が住んでいた聚楽第の屋根の上に忍者が登る場面がある。これを本当に再現すれば、瓦1万枚を焼いただけで予算がなくなってしまう。そこで、CGで聚楽第を再現し、俳優の映像と合成し、月明かりに照らされた安土桃山の建築物の上を忍者が走るシーンを制作した。アメリカの評論家はこのシーンに感心したが、アナログな日本の評論家は誰も何も言わなかった」などと語った。

また'50年、早稲田大学陸上部時代に箱根駅伝で2区を走った経験を語った。「補欠だったが、『新人の力でマンネリを脱する』というコーチの考えで本番のランナーに選ばれ、何人も抜いた。その甲斐があってその年は準優勝し、例年より成績が良かった。それ以来、私が得た教訓は1つ。“壁に当たったら新人を使え”、イノベーションが大切だということ」と述べ、新しいものを積極的に取り入れる努力が必要だと主張した。

「新技術と経済効果が結びつき、電話代が安くなればインターネット爆発寸前の年になる」と語る大川氏
「新技術と経済効果が結びつき、電話代が安くなればインターネット爆発寸前の年になる」と語る大川氏



そしてCSKグループ代表として、(株)CSK会長の大川功氏があいさつした。大川氏は、「一昨年と昨年、紅白歌合戦をNHKホールに見に行ったが、今年は派手さがなかった。神社などの初もうで客も少ないし、うちのゲームも競合他社のゲームも売れとらん。つまり正月は正月らしく、という考え方が変わって、自分の価値観を優先する個人の時代になってきたということだ」とし、インターネットを使用したマルチメディア配信など、より個人にフォーカスしたサービスが大切になると力説した。

また日本は米国に比べ遅れているとの指摘について、「政府とNTTが光ファイバー網を整備すれば、すぐに追い越せる。また政府に言いたいのは、公共事業予算のうち1兆円をITに回しなさいということ。パソコンなら1000万台分、ドリームキャストなら5000万台分にもなる。新しい産業がふつふつと沸いてくるだろう」と語った。その上で「日本は自動車でも料理でも、輸入したものをきめ細かく加工して、世界一のものに仕立て上げる力がある。だからインターネットでも絶対負けません。今までの遅れを取り戻し、新しいネット文化が生まれますよ」と述べ、自信を持ってネット時代に立ち向かうよう呼び掛けた。

またCSKグループについて、「セガのゲームセンターを光ファイバーで結ぶ構想や、ドリームキャストを使ったネットサービス事業も計画している。今年夏までに17社を上場していきまっせ」などと述べた。

新春講演会は、関西地区は26日、中部地区は27日に予定されている。

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