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日本版ECビジネスの創出が急務――ミレニアム会議“デジタルエコノミーの衝撃”より(前編)

2000年01月19日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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18日、東京大手町の日経ホールにおいて、日経新聞社の主催により“日経2000年プロジェクト ミレニアム会議“が開催された。このミレニアム会議は2年間にわたり内外の有識者を招き、今後の日本のあり方を探っていくもの。4回目を数える今回のテーマは“デジタルエコノミーの衝撃”。

日本電気社長、西垣浩司氏による基調講演や、ソニー取締役で多摩大学教授の中谷巌氏、東京大学総合研究博物館教授の坂村健氏らによるパネルディスカッションが行なわれた。本稿では第1部の基調講演を中心に取り上げる。

すべての社会の構成要素がネットで包まれていく

まず最初の基調講演では、日本電気の西垣氏が登壇し、“インターネットビジネスの進展”というテーマに沿って、パネルディスカッションのテーマにつながるようなインターネットビジネスの話題を提供した。

インターネット人口は爆発的に増加しており、世界で2.6億人に達している。日本もインターネット利用者が増加している。しかし、日本の場合、他国と少し状況が異なり、携帯電話すなわち“iモード”端末の爆発的なヒットがインターネットの普及に一役買っていると説明した。iモードの利用者は2000年中には1000万人になるとの予想もある。その一方で、米国ではインターネットにアクセスできない人々をどうするか?という情報格差の問題が起きているが、いずれ日本でも同じような問題が浮上してくるだろうと予測した。

日本電気社長の西垣氏
日本電気社長の西垣氏



デジタル革命についての言及では、かつては先が見えない時代であったが、今はその変化が見える特異な時代になってきた、と説明。先回りしてビジネスを創出した人が金持ちになれるとした。また、コンピューター業界の進歩の早さについて、性能面で例を挙げて説明した。'66年に0.2MIPSだったのが、'99年には約500MIPSになり、いかに進歩が早いかが分かる。「近い将来、光回線やIMT2000などが出てきて第3の波がやってくる。すべての社会の構成要素がネットで包まれていく」と述べた。

注目を浴びているインターネットのビジネスモデルの事例

西垣氏は、最近特に注目を浴びているインターネットのビジネスモデルの事例をいくつか紹介した。

BtoCの1例として、オークションサイトのeBAYがある。商品の掲載料と販売手数料で成り立っているが、最初から赤字なしのビジネスモデルで成功を挙げている。770万人のユーザーを擁し、たくさんの売り手のパフォーマンスをフィードバックすることで、逆に売り手の評価を下せるいう仕組みを作り出した。また、代金の支払いについては、i-Escrowへアウトソーシングしたことが成功の要因であるとも指摘した。

BtoBの事例としては、コマース・ワンを取り上げた。「自動車部品のインターネット取引サービスを扱い、GMとのアライアンスが成功したと発表した瞬間に株価が大幅に上がった。米国では、こういったビジョンを打ち出すことで、あっと言う間に時価発行総額が上がってしまう。そして株価が上がった力を利用してM&Aをしていく、あるいは技術を改革していくということが始まっている」と、現状を分析した。

「現在は、2年、3年という期間のプロジェクトでは、出来上がった頃には意味がなくなってしまう時代になってきた。バブリーな局面もあるが、実業家としては黙って口をくわえて見ているような状況では勝てないとの危機感がある」と説明した。

また、プライスライン・ドット・コムの事例も紹介した。同社のサービスは1時間以内にユーザーが希望する金額のホテルを知らせるというものだが、値段を決めるのはあくまで消費者。競売方式とは違い、買い手が提示する希望価格に見合う場合だけ売り手が応じる。最近ではグロサリーなども始めている。今年からはレンタカーなどにも手を広げるという。

この逆競りについてはビジネスモデルの特許を申請しており、マイクロソフトが同じような方式で旅行仲介会社を設立したときに、訴訟問題となったという。日本ではまだそういう状況にはなっていないが、これから大きな課題になってくるだろうと指摘した。

日本版ECビジネスのモデルとしては、2月に設立されるセブンドリーム・ドットコムの事例を挙げた。「約8000店舗のチャネルを利用することでデリバリーの問題を解決している。今まで培ってきた既存の流通インフラを活用しながらネットと積極的にドッキングさせることで、eビジネスの効果を高めていこうという動きが始まってきたように感じている」

日本でなければ発想できない“日本型ECへのチャレンジ”を

これらの事例の共通事項として分かることは、“完全マーケット”の時代に近づいた仕組みになってきたこと、あらゆる個人の情報が世界中を駆け巡るというように“個”の力がパワーアップしてきたこと、そしてビジネスモデルが変化していること、株公開におけるダイナミズムを利用していることなどが挙げられるという。

また、情報・通信コストの劇的な低減が行なわれることも予測した。最後に、米国に負けている分野であるが、“日本型ECへのチャレンジ”が必要だと提言した。日本でなければ発想できないようなiモード端末を中心とした新しいチャレンジや、セブンイレブンに見られるような既存のインフラを利用した新しいビジネスモデルがどんどん出てくることを望むとして、講演を終えた。

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