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編集工学研究所、相互記譜型編集交換システム“ISIS”を利用したサイト“編集の国”を開国

2000年01月11日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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9日、編集工学研究所の相互記譜型編集交換システム“ISIS”(Interactive System of Inter Scores)を利用したサイト“編集の国”が開国した。これは、編集工学研究所の松岡正剛氏がエグゼクティブディレクターを務め、約2年の構想期間を経て完成したバーチャルカントリー。インタラクティブな編集作業により、個人の才能や可能性をスコアに変え、松岡氏が提唱する“知財”の経済市場を実験化するものである。

ISIS編集の国ウェブサイト(http//:www.isis.ne.jp)。ここから編集の国へ入植できる
ISIS編集の国ウェブサイト(http//:www.isis.ne.jp)。ここから編集の国へ入植できる



玄関のCモードで意見交換、Mモードでさまざまなコンテンツを楽しむ

ISIS編集の国には、さまざまなコンテンツと、“ミーム”と名付けられた電子貨幣、参加者の成果価値を評価するスコアなどが用意されている。

ISISは、コミュニケーションを主体とした“Cモード”と、コンテンツでの創作やクリエーターの養成をサポートする“Mモード”を選択できるようになっている。Cモードには、ISISのトップージから登録を済ませれば直接アクセスできるが、Mモードの場合には、登録を済ませたあとISIS事務局から専用CD-ROMが配布される。CD-ROMに入っている専用ブラウザーESP(Editorial Scoring Pad)をパソコンにインストールすると、独自のインターフェースが現われ、ISISの基本情報単位“ミームカード”や、編集ゲーム“ミメテック・ゲーム”などを利用できるようになる。また、電子貨幣やスコアを利用できたり、コンテストの応募も行なえる。

システムの構成図。CモードとMモードが用意されている。Mモードを利用するには専用ブラウザーが必要
システムの構成図。CモードとMモードが用意されている。Mモードを利用するには専用ブラウザーが必要



サイトの玄関にあたるCモードには“エディットカフェ”があり、ユーザーが自由に意見を交換できる電子会議室“ラウンジ”を開設している(2月公開に向け準備中)。ここでは、趣味の話題からボランティア活動、お国自慢まで、さまざまなテーマに沿って話し合うことで相互コミュニケーションが可能となる。また、意見発信に対するリアクションを、“掛け声ボタン”や“投票ボタン”で返すシステムも搭載している。さらに、Cモードのラウンジで活躍したユーザーは、Mモードに活躍の場を移し、才能を発揮できるようになる。

Mモードでは、ESPをインストールするとISISの基本情報単位“ミームカード”や編集ゲーム“ミメテック・ゲーム”を利用できるようになる。ミームカードは表裏一対の情報から構成する定型カードで、履歴、リンク、コメントなどの編集機能が付いている。このカードを使って、ミメテック・ゲームの主催者が出すお題を投稿したり、コンテストに応募できる。また、バザール(4月公開予定)でカードを売買して、電子通貨ミームを貯め、“ミーム手帳”に貯蓄や収支を記録できる。

それぞれのモードに、は近日中にアコムと協力して決済システムを搭載する予定だ。また、これ以外にも、子供の学習や教育をテーマにした“Kモード”、障害者に対するサポートを行なうボランティアを支援する“Vモード”、携帯電話などのモバイル端末を利用する“Iモード”なども準備している。

ESP画面。ミームカードを編集、保存、コピーする“パクラ”、カードを整理するアルバム機能“ストッカ”、カードをアイコン化する“ユーナス”、“ミメテック・ゲーム”やバザールを開催する“ステージ”、基本操作を行なえるユーティリティーからなる
ESP画面。ミームカードを編集、保存、コピーする“パクラ”、カードを整理するアルバム機能“ストッカ”、カードをアイコン化する“ユーナス”、“ミメテック・ゲーム”やバザールを開催する“ステージ”、基本操作を行なえるユーティリティーからなる



Mモードでは“編集道場”などを

Mモードで利用できる編集ゲーム“ミメテック・ゲーム”には、さまざまなコンテンツが用意されている。編集道場型、ミュージアム型、編集工房型の3タイプのゲームがあり、スタート当初は編集道場型の4コンテンツをアップする。師範・山田源三郎氏が主宰する言葉遊び“言寄席(ことよせ)”、放送作家の川崎隆章氏が主宰するギャグ指南道場“お笑い大惨寺”、編集工学研究所の5万冊を擁する書棚や本の目次が見られる“SEIGOW'S BOOK-OS”、古田菜穂子氏&淳生氏、野村誠氏、坂部明浩氏、テッド・ネルソン氏などによる“日記ミュージアム”といった幅広い内容となっている。

道場型コンテンツの一例。山田源三郎氏主宰の“言寄席(ことよせ)”
道場型コンテンツの一例。山田源三郎氏主宰の“言寄席(ことよせ)”



道場型コンテンツの一例。川崎隆章氏主宰の“お笑い大惨寺”
道場型コンテンツの一例。川崎隆章氏主宰の“お笑い大惨寺”



これ以外にも、たくさんのコンテンツが続々とアップされる。編集道場型コンテンツでは、映画監督の押井守氏による“ワールド・ビルディング・ラボ”、落語家の柳家花録氏による“ミーム落語塾”、身体障害を持つ俳人、花田春兆氏による東京タワー征服計画の模様を伝える“天の尺”、いとうせいこう氏が主宰する“編集者養成ギブス”などをオープンする予定。

また、ミュージアム型コンテンツでは、アーティスト、横尾忠則氏の神話画“大いなる終わらない物語”、太鼓奏者の大倉正之助氏による“スピリッツ・ライダース”など、編集工房型コンテンツでは、日本見世物小屋学会が収集した資料をミームカード化する“カードの見世物小屋”、狂言師の野村万之丞氏による“アジア楽劇地帯の旅”、川端ネジ製作所の創作ネジアートを紹介する“KAWABATA SCREW WORLD”など盛りだくさんのコンテンツを準備している。

昨年12月15日に開かれた発表会では、デザイナー、ミュージシャンなどのアーティストからメーカーの取締役までISISにかかわるたくさんの関係者が駆けつけた。中央はソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役社長の丸山茂雄氏
昨年12月15日に開かれた発表会では、デザイナー、ミュージシャンなどのアーティストからメーカーの取締役までISISにかかわるたくさんの関係者が駆けつけた。中央はソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役社長の丸山茂雄氏



帝塚山学院大学教授、編集工学研究所所長の松岡氏
帝塚山学院大学教授、編集工学研究所所長の松岡氏



松岡氏は、'70年代に知の再編を目指すオブジェマガジン“遊”を創刊、'80年代にはそれまで培ってきた編集哲学を工学化し、'90年代に入ってからは電子ネットワーク上に相互編集社会を構築する各種のプロジェクトを推進してきた。最近では“京都デジタルアーカイブ”、“新規事業インキュベーション・プラットフォームPaddockシステム”などのプロジェクトを展開している。

今回の相互記譜型編集交換システムISISでは、豊富なコンテンツ群やトレーディングカード的な遊びの要素を盛り込み、“知財”という情報価値を経済市場に結びつける新しい実験を試みようとしている。“ISIS”編集の国がネットワークという無限の領土において、編集の国が新たな一大コミュニティーとして発展できるかどうか注目したい。

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