大阪市では、大阪市創業支援センター(通称:あきない・えーど)を2000年2月にオープンすることを発表した。市では、かねてより他の自治体にも増して強力に開業率の大幅なアップを図る施策を実施してきたが、今回は民間の協力を得て、“お役所色”を払拭した取り組みに意欲をあらたにしている。
そこで、創業支援センターの室長・吉田雅紀氏らに今後の展望などを聞いた。
室長の吉田氏は元サラリーマン。社内ベンチャーとして、アパレル店舗のチェーン展開を手掛け、その経験を生かして中小企業診断士試験に合格。その後、有限会社ベンチャー・サポート・ネットワークを設立し、関西の起業家支援のキーパーソンとして活躍してきた |
スタッフ全員が民間人。“お役所仕事”では終わらせない
――開設の目的についてご説明いただけますか?「関西は、もともと起業意欲の旺盛な地域です。なかでも大阪は、“中小企業国会”と言われる一連の国の取り組みが始まる前から、独自で創業支援に関するアイデアを練っておりました。しかも、民間主導で動いているのは、全国的にもまれなケースだと思います」
「この創業支援センターでは、大阪市民のみなさんの開業意欲をバックアップするために、公的制度の有効な利用のサポートにはじまり、ビジネスプランのブラッシュアップ、ベンチャーキャピタルとのマッチングにいたるまで、 トータルにサポートしようというものです。 京都リサーチパーク(KRP)などの好例を見習って、きめ細かいサービスとクイックレスポンスを心掛けていくつもりです」
――センターのスタッフは、全員が民間の方だそうですね?
「大阪市経済局の中小企業指導センターの業務として行ないますが、室長の私以下、スタッフ全員が民間人ですので、“お役所仕事”に終わらせるつもりはありません。 行政にありがちな縦割りを打ち破って、縦横無尽な創業支援サービスを行ないます。そのために、士業家(中小企業診断士、社労士、弁理士、会計士など)の方にも呼びかけて、メール相談やビジネスプランの評価などに力を貸していただこうと思っています」
――大阪市は、これまでもインキュベーターオフィスの設立など、他府県以上に、創業支援に力を入れてこられましたよね。
「'90年7月には“島屋ビジネス・インキュベーター”を、'99年2月は大正区の泉尾にメーカー向けの貸工場“テクノシーズ泉尾”を作りました。また、昨年オープンしたばかりのインキュベーターオフィス“iMedio”には、主にデジタル関連のクリエイターたちが集まって事業をスタートさせています。ここでは各種セミナーなども行なって参りましたが、企画運営からスポンサーにいたるまで、すべて民間が主導。おかげさまで、すでに2~3社には店頭公開の話が出るなど、成果が上がっているようで、スタッフも嬉しく思っております」
48時間以内のレスポンスで、事業のレベルに合ったサポートを
――どのようなサポートが受けられるのでしょうか?「まず、対象となるのは、これから開業をしようといている段階から、創業5年目くらいまでの若い事業です。個々で、事業のレベルが違いますので、問題の所在とその解決法もまちまちでしょう。そこで、“あきない・えーど”常駐スタッフに加え、強力な専門家チームを結成し、メールやホームページも活用した、オンライン相談やビジネスプランの作成支援など、48時間以内のレスポンスを実現させるつもりです。また、ミーティングで会員相互の交流を図り、創業者と創業希望者の集うコミュニティーとしても機能させたいと考えております」
「なお、ビジネスプランの秘密を守るため、会員制(入会は無料)で運営します。将来的には、よりレベルの高いサービスを一部有料化することがあるかもしれません」
――これからのスケジュールなどを教えてください。
「本格的なサービス開始は、今年の2月からになります。現在、新しい事務所の入るビルを、旧東区役所跡に建築中で、2001年1月に完成予定です。駐車場を完備し、イベントホールや研修室といった共同施設も準備する予定ですので、期待してください」
なお、現在公式ホームページ上では、マスコットキャラクターの愛称を募集しているほか、1月15日(金)より、コンサルティング事業、情報サービス事業、セミナー事業 などに関する詳細を、順次公開していく予定である。
また、サポートスタッフを集めての説明会が昨年12月6日に行なわれている。その模様も、別レポートにまとめたので、あわせて参照していただきたい。
スタッフには、中小企業診断士の上田実千代氏、SOHO'S REPORT東京情報局の菅原裕氏らを迎えた。室長の吉田氏を含め、彼らのネットワークで集まった数多くのブレインたちが、サポート部隊を編成する |