21日、(株)メディアヴィジョンがデジタルアートのための業界標準ペイントツール、Painterの新バージョン『Painter
6 日本語版』の年頭発売を記念して、“Painter 6リリースセミナー”を開催した。Painter
6 日本語版は2000年1月14日に発売する予定。会場となった東京・東中野のテラハウスICAでは、デジタル業界を目指す学生をはじめ、デジタルアートの現場に身を置くクリエイターまで熱心なユーザーが集まった。
Painter 6の新機能を中心にデモ
前半はメディアヴィジョンの宮田敏英氏によりPainter 6の新機能を中心にデモンストレーションが行なわれた。後半は2人の著名クリエイターが登壇し、Painterの魅力について、Painterはどうか変わったか、作品作りを通して感じた点などを語るパネルディスカッションとなった。Painterは、長い間にわたって世界標準のペイントソフトとしてデジタルアーティストやグラフィックデザイナーに活用されているソフトウェア。デジタルアートやグラフィックデザインはもちろん、ゲームデザインやウェブデザイン、建築、インテリアの世界まで幅広く利用されている。
復活したペイント缶のパッケージ |
今回のバージョンアップでは、そうしたクリエイターたちのさまざまな要望を実現させたもので、特にPhotoshopなどの業界標準ソフトがサポートしているレイヤー機能やCMYK
TIFFをサポート、新しいブラシの追加などを実現した。
Painter 6では、使い勝手が大幅に向上した。まず、ユーザーインターフェースを改善した。増えたパレット類を整理統合、より直感的なアクセスを容易にし、使い易い環境を実現している。また、新たなメモリー構造により、プロセッサーの処理時間を短縮し、高速なパフォーマンスを実現。
さらに、これまでのフローターから進化した形で、要望の多かったPhotoshopと互換のレイヤー機能をサポートした。透明レイヤー上で好きなブラシが使え、乗算、スクリーン、オーバーレイなどのレイヤーによる合成にも対応している。さらに、複数レイヤーをグループ化でき、効率的なレイヤー管理が行なえる。
Painter 6日本語版のインターフェース |
Photoshop互換でより業界標準としての役割を果たすレイヤー機能 |
また、高速かつスムーズな描画や盛り上げ塗り効果などで自然な表現力がさらに広がった。
複数ストロークのスプーリング、モーション抑制およびキュービック補間により、スムーズな描画が実現している。盛り上げ塗りでは、まるで油絵の具をキャンパス上に塗り重ねていくように、より自然な表現を実現している。別々の色を塗り重ねると混色するといった、より現実の画材へと近づいており、深みのあるペイントを実現した。
また、ブラシの設定に“傾き”や“ベアリング”などをサポートしており、アーティストの表現のニュアンスをより詳細に再現している。このほか、リアルなエアブラシやパターンブラシなどで多彩な表現を実現している。さらに“ダイナミックテキスト”によって、テキストをパス上に自由に配置できるなど、テキスト機能を強化した。
盛り上げ塗りを可能にするImpastoブラシ |
ファイルの互換性については、CMYK TIFF
形式を新たにサポートするなど幅広いファイルフォーマットに対応している。
対応システムは、MacOS 8 以降搭載のPowerMacintosh(MacOS 9については現在確認中)。Windows95/98/NT4.0日本語版搭載のPentium以上のプロセッサを搭載したコンピューター(互換CPUは動作保証外)。価格は6万8000円。アカデミック版(学生・教職員対象)は3万4000円。無償バージョンアップシールが貼られたPainter
5.5日本語版は、無償でバージョンアップ。アップグレードは、Painter
5.5 日本語版は2万円、Painter 4.0~5.5 日本語版は2万5000円。
今回、以前のPainterの大きな特徴でもあったペイント缶のパッケージが復活した。ユーザーからはペイント缶の復活を望む声が多く寄せられ、今回の復活となったとのアナウンスがあった。また、同社のAdobe
Photoshopプラグインモジュール『Kai`sPower Tools』をPainterと同時に発売することも発表した。
レイヤー機能サポートに注目
パネルディスカッションでは、Painter使いとして知られる石川浩二氏とPhotoshop使いとしても有名な海津宜則氏の2人が登壇し、メディアヴィジョン司会進行のもと、Painter 6の魅力について語った。パネリストの石川浩二氏(左)と海津宜則氏(右)《写真提供:メディアヴィジョン》 |
司会 お二人のPainterとの出会いや関わり合いをお聞かせください。
石川 「僕の場合、CGといっても最初は富士通のTOWNSなどでドットでタイル画のようなものを描いていました。これが7~8年前です。この後、突然Painterが出てきました。アンチエイリアスで現実に絵の具を描くように使えるのに驚きました。いまではペイントソフトと言えば、Painter以外にありませんね」
海津 「僕はどちらかというとPhotoshop使いとして知られているかもしれませんが、実はPainter使いでもあるんです(笑)。僕もやはりドット画を描いていました。元々、手描きはロットリング、それに対してエアブラシで、ボンベを湯水のように使っていました。元が
取れないなぁ、なんて思っていたところで出てきたのがPainterでした」
「Painterは、以前からあくまでPhotoshopの下絵の道具のように使っています。よくソフトウェアの機能すべてを使おうとしていると聞きますが、僕は機能のほんの一部しか使っていません」
司会 Painter 6のどのような機能が気に入りましたか?
海津
「これまでフローターの使い方がよく分からなかったので、レイヤーのサポートはいいですね。Illustratorでレイヤーを鬼のように使っているので。Painterでレイヤーが使えることで、後修正ができるようになりました。Illustratorだけでドロー系の仕事すべてはできませんからね」
石川
「僕はレイヤーは補助輪的に使っています。レイヤーということでは、下地に絵の具を塗って、上からスプレーをかけ、ペンでなぞるように削って絵を描く遊びを見つけました。子供のころに絵の具にクレヨンを塗って、ペンでなぞったようなものです」
「ブラシの機能が気に入っているので、Mac書道に対抗して、書の表現のような簡潔したものをやってみたいですね」
海津 「缶を使ったパッケージはPainterの良心です。遊び心を持って欲しいので、缶パッケージは復活は大歓迎ですよ」
現役デザイナーや学生など熱心なユーザーが詰めかけた《写真提供:メディアヴィジョン》 |
終盤にはプレゼント抽選会も
パネルディスカッションの終了後は、協賛で参加した(株)ワコムがデジタルアートに欠かせないツールであるプロフェッショナル向けペンタブレットの新製品『intuos(インテュオス)』を紹介した。価格は2万4500円から。また、コンシューマー向けのミニタブレット『FAVO(ファーボ)』も合わせて紹介した。FAVOは、ミントブルーおよびスケルトン5色が用意されており、ペンおよびコードレスマウスが付属する。価格は1万2500円から。
この後、お待ちかねのプレゼント抽選会が行なわれた。メディアヴィジョン製品のVirtual PCやCANOMA、ワコムのFAVOなどがプレゼントされ、当選者にはちょっと早めのクリスマスプレゼントとなった
なお、この“Painter6リリースセミナー”は1月8日にも大賀葉子氏、吉井宏氏、花山由理氏らが登場する第2回セミナー開催が予定されている(申し込み期限は終了)。