16日、ソフトピアジャパン・センタービルで、進出7社によるプレゼンテーションが開催された。今回は、学生起業家の戦略説明や産官学共同開発の現場紹介、ベンチャーのコラボレーションの試みなど、多彩な発表内容となった。
交流会が催されたソフトピア・ジャパンのシンボル”センタービル” |
'99年最後の“ビジネス交流会”は、場所を変更するほどの盛況ぶりだった。地元企業やベンチャーキャピタル、将来のベンチャーを目指している学生など、ビジネスチャンスを求めて来た100人ほどがプレゼンテーションを聞いた。
はじめに挨拶に立った堀事務局長によると、前回の交流会後に数件の商談が成立したり、企業間でのコラボレーションが発生したという。
それでは、今回の7社(グループ)を発表順に紹介しよう。
イントラネットと基幹系システムを統合
IWJ開発研究会(*1)の開発した『Integration Works』は、メーンフレームに蓄積されている企業のデータをイントラネットと容易に結びつけるためのソフトウェアだ。これを利用すれば、今まではオンライン端末で扱っていた基幹系のデータが、パソコンのブラウザーをインターフェースとして活用できるようになる。発表者によれば、この技術は日本で最初のものだそうだ。しかし、ブラウザー側のインターフェースデザインが現在のものではチープなので、その点を改善できる協力企業を求めている。
ブラウザーに表示されたメーンフレームデータを説明する担当者 |
*1)IWJ開発研究会
河合石灰工業(株)、太平洋工業(株)、PIシステム(株)の3社による共同開発プロジェクト。IW.info@pacific.pacific-ind.co.jp
インターネット利用のシステム開発
スイテック(株)は、インターネットを利用した基幹システムの開発を手掛けている。同社は過去に手掛けたシステム開発の事例をもとにプレゼンテーションを行なった。実績として今回発表されたのは、100円ショップの商品発注システムや親会社である(株)デリカスイトの商品発注システムだ。これらは、通信回線を利用して現場と本社LAMを結び、高度に自動化された発注システムを構築している。
実例をあげてシステムの効果を示す |
産官学共同研究からの1つの提案
岐阜経済大学の中島助教授は、ソフトピア内に研究室を持ち、産官学の本格的コンソーシアムを目指している。中島助教授によると、学生主体で行なってきたこれまでの活動によって育まれた“学生ベンチャーマインド”の成果が、今回発表した“LOF(Linux Ogaki Forum:リナックス大垣フォーラム)”の企画につながった、という。
LOFでは、参加企業がマーケティングを、ソフトピアジャパンはインフラを提供し、学生は“自由さ”と“身軽さ”を生かして、新技術開発と実験を担当することになる。
岐阜経済大学の中島助教授。“学生ベンチャーマインド”の成果がLOFに |
インキュベート最年少の学生社長
(有)ソフトウィンドプロダクツ社長の立石氏は、名古屋工業大学の4回生。同社は、ウェブサイトの企画から制作、運営までを一貫して行なう。同社は、この秋設立されたばかりで、本格的な業務はこれからになるだろう。発表内容は、来年から行なうインターネット戦略について。若さ溢れる発表だった。
プレゼンテーション後、別会場で開かれた懇親会では、14日、同氏が中心となって行なった“ビットバレー”の東海版“ミドルバレー”のオフ会についても紹介があった。
懇親会で名刺交換する立石氏(右端) |
情報型バーチャルモール“NAGARA”の挑戦
ソフトピアで出会ったベンチャーたち(*2)がこの秋、共同して立ち上げたのが、”OS-VAN”と名付けられたプロジェクトだ。プレゼンテーションにサンタクロース姿で登場したエルシード代表の小野木氏による発表は、OS-VANによる新しいバーチャルモール“NAGARA”の概要だった。NAGARAはクリスマスイブの晩に開設される。
NAGARAは、地元岐阜県を意識した情報型バーチャルモールで、いくつかの興味ある試みが用意されている。例として挙げられたのが、“花火の打ち上げサービス”の販売だ。イベント等で打ち上げる花火をモールで販売しようというもの。商品(花火)の情報は、ムービーによって再生されるように工夫されている。既存のカタログに載せにくかったサービスも、ブラウザーに表示されるオプションを選択しくことで見積もりが取れる。出店料金も平均より低く設定されている。
将来有望な分野への参入に伴い、OS-VANではベンチャーキャピタルなどからの投資を待ち望んでいる。
サンタに扮してプレゼンテーション |
*2)OS-VANプロジェクトを形成する4社(AMAマルチメディアセンタ、エル・シード、サイバーコンサルティング、デジドロウグラフィックス)
“文化庁メディア芸術プラザ”の運営
CG-ARTS協会の運営する文化庁メディア芸術プラザは、メディア芸術の普及と発展を目指したものだ。この発表したのは、IAMAS第1期卒業生で現在softcell代表の片岡氏。メディアアーチストの育成とメディアアートの社会的な認知活動を目的とし、文化庁の募集に応じて手を挙げた片岡氏らが、このサイトを作り、運営している。会員制サイトだが、参加はアーチストだけに限ってはいない。現在会員は3600名。岡山県立大学の若林助教授がサイト内のカレッジやミュージアムの責任者を務めている。
文化庁は作品の著作権について大変心配し、CGIによって動的にHTMLを生成するように、などの細かな配慮をしている。会員制もそのための対策の1つ。そのためか、会員数に比べてアクセス数は伸び悩んでいるのが現状である。
softcell代表の片岡氏 |
子供たち向けの映画で世界に通用する映像ビジネスを目指す
ザッツ・オン代表の岩木呂氏(*3)は、日本映画産業の復活を願い世界に通用する映画を制作しようとしている。今回のプレゼンテーションでは、ハイビジョンで制作した“マレーシアおもしろ昆虫日記”の一部が上映された。これは、子供と自然をテーマに映像を撮り続けたいと語る同氏が、塩屋氏(*4)の協力を得て制作した作品。
まずは海外で認められるような作品を作りたいと語る岩木呂氏は、最後に制作費等の援助を求めた。
岩木呂氏(右)と塩谷氏(左) |
(*3)岩木呂氏のCD-ROM作品“虫の楽園”はアスキーから出版されている。
(*4)学校の怪談2,3やモスラのCGを担当。デジタルウィザード代表。
懇親会は華やかに開かれたが
プレゼンテーション後、会場を移して開かれた懇親会には、ほとんどの出席者が参加して、活発に情報交換や商談が重ねられた。くつろいだ中にもある種の熱気が感じられる会場で発表者から聞かれたのは、岐阜(大垣)という立地に関しての課題だった。懇親会はビジネスチャンスの場 |
あるベンチャーは、ここを撤退しようと思っているという。その理由は、「結局ここでしているのは、“東京の仕事”ばかりだ」と言うのだ。
日本最大のインキュベートルーム数を持つ“国際インキュベートセンター”の第1期募集もすでに始まっている。将来有望なベンチャーが萌芽する中、顕著な仕事の地域的需要の格差を、どのようになくしていくのかが岐阜県の大きな課題である。それができなければ、せっかく育てたベンチャーも東京に居を移すことになりかねない。かって、天下統一を夢見た織田信長が、岐阜から安土に城を移したように。
ソフトピアジャパン・センタービルのロビーに立つ信長像 |