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【Content Japan1999 Vol.2】デジタル放送時代に向けNHKが進める総合放送サービス“ISDB”――セミナープログラム“デジタル放送とコンテンツ”より(上)

1999年12月07日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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1日から3日まで、東京・北青山のTEPIAにおいて、(財)マルチメディアコンテンツ振興協会(MMCA)の主催により“Content Japan1999”が開催された。本稿では、3日に行なわれたセミナープログラム“デジタル放送とコンテンツ”の模様を報告する。

本セミナーでは、コーディネーターに日本放送協会、放送局専門委員の為ヶ谷秀一氏が、講師には(株)フジテレビジョン、放送本部技術局開発室室長の上瀬千春氏と、日本放送協会、放送技術研究所マルチメディアサービス部長の福井一夫氏が招かれた。
 
まずはじめに、コーディネーターの為ヶ谷氏は、「来年12月から始まるデジタル放送を控え、デジタル放送時代にどのような映像コンテンツを制作していけば良いのか? ということについて考えたい」と、セミナーの趣旨を説明した。

為ヶ谷氏はハイビジョンの宇宙利用に関するプロジェクトで有名。'98年に、世界で初めてスペースシャトルにハイビジョンカメラを搭載した
為ヶ谷氏はハイビジョンの宇宙利用に関するプロジェクトで有名。'98年に、世界で初めてスペースシャトルにハイビジョンカメラを搭載した



2000年のBSデジタル放送は、デジタルHDTVが7チャンネル

NHK放送技術研究所の福井氏は、BSデジタル放送がどのようなサービスを可能にするか? という技術的な観点から、NHKが進めるデジタル放送を中心に解説した。まずデジタル放送時代は、2000年のBSデジタル放送からすべてが始まるとし、BSデジタル放送では1チャンネルで2つのハイビジョン番組が放送でき、それに加えプラスアルファのサービス(データ放送)が可能になるというメリットを挙げた。

NHK放送技術研究所の福井氏。NHKが進めるデジタル放送技術を紹介
NHK放送技術研究所の福井氏。NHKが進めるデジタル放送技術を紹介



現在、BS4先発機は、WOWOW、NHK BS、NHK BS第2、ハイビジョンの4チャンネルがシェアしている。BS4後発機では、2×4の8チャンネル(*1)をシェアできる。このうち1チャンネルは、従来のアナログ放送で、残りの7チャンネルがデジタルHDTVのチャネルになる。

(*1)放送衛星を用いるデジタル放送では、通信衛星より送信電力が大きいので、より高速のデジタル伝送が可能になる。この高速伝送技術と映像圧縮技術の組み合わせ、1つのトランスポンダー(中継器)でデジタルハイビジョンを同時に2チャンネルぶん伝送できる・/font>


郵便番号で地域の天気が分かる--NHKの総合放送サービス“ISDB”

次に、デジタル時代の放送の1つの形として、デジタルハイビジョンをベースに、NHKが開発している総合放送サービス“ISDB”について説明した。

ISDBは、高品質、高機能、人に優しいという3本柱で進んでいる。ハイビジョンでの高品質放送と、EPG(番組表やインデックス)による高機能性、字幕や操作画面の向上による人に優しいサービスを、特徴として挙げている。

このうち、EPGや字幕などのサービスは、データ放送によって実現する。データ放送サービスは、番組と連動してして、その関連情報などを引き出せる。また、見逃した番組をさかのぼって見ることができたり、字幕サービスを可能にしたりする。

その例として、地震などの緊急情報や、地域に密接したローカル情報、料理番組のレシピ表などを紹介した。ローカルな情報には、その地域の天気予報がある。たとえば、自分の住んでいる地域の郵便番号を利用すれば、その地域の天気が分かる。

これ以外にも、字幕サービスでは図形が使えたり、番組内容の確認、アンケート調査、テレビショッピング、クイズ番組の解答、ホームページへのリンクなどのサービスも提供できるという(
*2)。

(*2)ISDBは、導入初期には基本的なサービスの提供からスタートし、次第に上記のようなサービスを高度化すする発展形態が考えられる


進化するテレビ受像機。モデムも内蔵

ISDBの時代には、テレビ受信機も進化し、統合サービス型のテレビ“ISテレビ”(
*3)が出現する。ISテレビは、モデムを内蔵し、電話回線と接続する。一時的なアクションがあった場合にインターネットに接続する、といったことが考えられている。ISテレビは録画しながらテレビを見れるホームサーバーのイメージである。ISテレビの構造は、テレビ放送とデータ放送をチューナーで受け、多重分離する。内蔵しているハードとソフトでデータ放送を処理し、画面上で統合する。

(*3)このテレビは、ハイビジョンディスプレーを使用し、番組や情報を選択できる“見出し画面”、ニュースやドラマを好きなときに視聴できる“いつでも機能”や、通信、コンピューターとのメディア相互利用機能を持つ


BMLが利用される、デジタル放送時代のコンテンツ

デジタル放送時代のデータ放送用のコンテンツには、BML(Broadband Markup Language)が利用され、データ放送とリンクしたネットワークコンテンツも登場するという。

BMLは、HTML4.0のタグをベースにしている。従来の文字放送では、画面に表示する大きさや配置が固定され、操作も限られていたが、BMLを使えば、画面上に絶対座標を指定でき、カーソルの移動やイベント(タイマーなど)を処理できる。

また、コンテンツ制作では、TVML(TV program Making Language)の紹介があった。TVMLはテレビ番組をまるまる1本記述できるように考えられたテキストベースの言語。

このTVML言語で番組台本を書けば、パソコン上で専用プレイヤー“TVMLプレイヤー”がコマンドを1行1行解釈(
*4)し、リアルタイムでテレビ番組を作り出す。ユーザーはワープロなどを使って、自分だけのテレビ番組をデスクトップ上で制作できる。

(
*4)番組内容を誰にでも分かる表現、例えば“タイトル#1を表示”、“カメラズームイン”などのテキストで記述する。“TVMLプレイヤー”は、このTVMLで書かれた台本を読み取って、自動的にリアルタイムで番組の映像音声を出力する。詳細はwww.strl.nhk.or.jp/TVML/Japanese/JsitemapB.html


これからのBS放送サービスは、ハイビジョンによる高品位サービスと、データ放送による多機能化により、その用途は広がっていくと予想される。コンテンツ制作では、気象情報や株価情報などをリアルタイムに自動制作するような装置も必要になる。

福井氏は「コンテンツ制作のポイントは情報化である」と述べ、講演を締めくくった。

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