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日本クアンタム、“DLTtape WORLD '99”を開催──SuperDLTが初お目見え

1999年10月29日 00時00分更新

文● 編集部 佐々木千之

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日本クアンタム ペリフェラルズ(株)は28日、東京・新宿のヒルトン東京において、*DLTを用いたバックアップ製品とサービスを紹介するセミナー“DLTtape WORLD'99”を開催した。同社が来年の出荷を目指して開発中の『SuperDLT』が初めて一般に公開され、来場者の注目を集めていた。

*DLT(Digital Liner Tape):米ディジタル・イクイップメント社(現コンパックコンピュータ社)が開発した、バックアップを目的としたテープドライブの規格。ストレージ部門がクアンタムに売却された際に、権利がクアンタムに移行し、その後も開発が続けられている。DATを使ったバックアップシステムであるDDS(Digital Data Storage)規格と異なり、記録・再生は回転ヘッドではなく、固定ヘッドで行なう。テープカートリッジのサイズは幅106×奥行き105×高さ25mmで、重さは220g程度。

今回が2回目となる、このDLTtape WORLDでは、“21世紀に向けた企業経営と情報戦略”というテーマで、“これからの企業戦略と情報システムにおける危機管理としてのバックアップ・ソリューション”であるハードウェアやソフトウェアが、クアンタムと、パートナー企業13社から展示やセミナーが行なわれた。昨年10月に開かれた第1回が好評であったため今回の開催となったという。

開発者を対象に開かれたSuperDLT技術セミナー
開発者を対象に開かれたSuperDLT技術セミナー



このセミナーでの注目は、米クアンタム ペリフェラルズ社Advanced Products Group Senior Marketing Managerのジェフリー・ホーガン(Geoffrey G.Hogan)氏の基調講演と、セミナーに先立って開発者を対象に行なわれた技術セミナー。ここで、次世代DLT規格である“SuperDLT”規格の詳細が初めて公開された。メカニカルサンプルながらドライブとテープカートリッジも公開・展示され、人だかりとなっていた。

技術セミナーの内容と、ホーガン氏へのascii24の独自取材によるSuperDLTについての情報はこうだ。

現行のDLTは、パソコンやワークステーション、およびミドルレンジまでのサーバーのバックアップ市場において、約30パーセントとトップシェアを持つ(売り上げベース。IDC調べ)。SuperDLTは、このDLTのと互換性を保ち、ユーザーがシームレスにアップグレードできるようにしながら、協力で拡張性の高い製品となることを主眼として開発された。

SuperDLTでは、STORM(Servo Tracking Optical Read/write Magnetic)と呼ぶ技術が使われている。SuperDLTテープでは、裏面に光学式ガイドトラックと呼ばれる、レーザーで読みとり可能な線(トラック)がつけられている。SuperDLTのヘッドは、このトラックにレーザーを当てて、記録・再生ヘッドの位置決めを行なう。これにより、テープが走行中にゆれても、精度の高い位置決めができることで、従来のDLT規格では200本程度であったデータトラックを、倍以上の460本にすることが可能になったという。

また、この光学式ガイドトラックを採用することで、キャリブレーション時間が短くなるなど、現行のDLTではカートリッジ挿入後、読み書きが行なえるようになるまで60秒程度かかっていたものが、20秒程度にまで縮まったとしている。

米クアンタム ペリフェラルズ社Advanced Products Group Senior Marketing Managerのジェフリー・ホーガン(Geoffrey G.Hogan)氏
米クアンタム ペリフェラルズ社Advanced Products Group Senior Marketing Managerのジェフリー・ホーガン(Geoffrey G.Hogan)氏



このほか、表面はすべて磁性面であり、全面をデータ記録に使用できることや、Advanced Metal Powderと呼ばれる磁性体そのものの性能向上、記録・再生ヘッドの高密度化、および*PRML技術によって、カートリッジ1本あたり100GB以上の容量が可能になったという。最終製品でのカートリッジあたりの最大容量については、「まだ決定しておらず、100GBプラスアルファとしかいえない」(ホーガン氏)とのことであった。なお、このSuperDLTtapeの開発については、富士写真フイルム(株)と日立マクセル(株)が協力しているという。

*PRML(Partial Response Maximum Likelihood):クアンタムが米ルーセント社と共同開発した技術。データトラックが非常に近い距離で隣り合っている場合、読み出すべきデータ信号が隣の信号の影響を受けて劣化し、正しく読みとりにくくなる。この信号が正しくなるように、補正を行なう技術がPRML。HDDでは広く使われている技術。テープに応用することで、15~20パーセントの記録密度向上がはかられたとしている。

テープカートリッジ自体も、外形は従来のものと同じだが、耐久性向上のために内部の構造は変更されたほか、テープの引き出し部分の構造も変更され、カートリッジのロード/アンロードテストでは100万回以上を達成したとしている。

1台だけ展示されたSuperDLTドライブとカートリッジのサンプル。リール部分などは動作するが、新型ヘッドは搭載されていない。規格ごとに異なるテープカートリッジの色はダークグリーン色になりそう
1台だけ展示されたSuperDLTドライブとカートリッジのサンプル。リール部分などは動作するが、新型ヘッドは搭載されていない。規格ごとに異なるテープカートリッジの色はダークグリーン色になりそう



テープドライブでは、フロントパネルや、シャーシ、ドライブユニットなど、いくつかのモジュール化されたデザインとすることで、「7分程度で組み立てられる」(ホーガン氏)とし、製造コストを下げるとともに、信頼性も向上したという。テープのロード/アンロードは、従来レバーを使って手動で行なっていたが、軽く差し込んだだけで自動的にローディングが行なわれるようになった。また、従来のDLTテープも、書き込みはできないが、読みとることは可能。

出荷時期については、現在OEMに対してサンプルを出荷中であり、2000年の第1四半期には量産製品が出荷されるとしている。テープドライブ価格は現時点の最新製品である「『DLT-8000』にプレミアのついた価格」(ホーガン氏)、テープの価格は「(現行の最大容量のものに比べて)2倍まではいかないが、容量は2.5倍にはなるので、容量あたりの単価は低くなる」という。

さらに、SuperDLTの将来の製品については、現在研究レベルでは、1本あたり500GBの容量を達成しており、将来は1T(テラ)B以上も十分可能になるという。データ転送速度についても向上しており、最初に市場にでてくる製品は毎秒10MBだが、毎秒100MB以上まで延びるということであった。

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