このページの本文へ

OMG、CORBA3.0のプレリリースに先がけてセミナーを開催

1999年10月28日 00時00分更新

文● 若菜麻里

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

オブジェクト・マネジメント・グループ(OMG)と(株)創研プランニングは26日、“第3回OMG分散コンピューティング・セミナー”(以下、OMGセミナー)を東京都内で開催した。年内にプレリリースを予定する業界標準の“CORBA3.0”の話題を中心に、CORBAの歴史、3.0の新仕様、今後の課題などについて講演が行なわれた。

インターネットと結びつくことでメジャー化したCORBA

OMGセミナーではまず、OMG日本代表で創研プランニング代表取締役の鎌田博樹氏が、CORBAの歴史について講演した。

CORBA(コルバ=Common Object Request Broker Architecture)とは、分散オブジェクト技術に関する標準仕様だ。現在CORBA2.3まで定義されており、市場には80種類以上のCORBA準拠製品があるという。分散コンポーネントなどの仕様が追加され、より容易かつ柔軟なシステム構築を可能にする最新バージョンのCORBA3.0は、その予告仕様(プレリリース)が年内に、また正式仕様が2000年前半に発表される予定だ。

分散オブジェクトコンピューティングは'80年代半ばから後半にかけて確立された。OMGは分散オブジェクト技術の標準化団体として'89年4月に設立され、現在は世界中で約780社が参加している。なおセミナーを主催した創研プランニングは、OMGの正式なパートナーとして、CORBA仕様の翻訳や普及・啓蒙活動などを行なっている。

CORBAが事実上初めて発行されたのは、'91年のCORBA1.1で、インターフェース定義言語(IDL)によるAPIや基本メカニズムが規定された。'95年のCORBA2.0では、インターネットORB間プロトコル(IIOP)による相互運用性が導入された。当時のインターネットブームの潮流に乗り、CORBAは業界で主流の標準として認知されていった。

鎌田氏によると、「OMGの成功要因のひとつは、オブジェクト間通信の標準を定める際に、実装ではなく、実装のためのインターフェースを規定したことだ。実装について合意するのは容易でなく、ベンダーの独自性により実装を行なっている」としている。

OMG日本代表を務める創研プランニング社長の鎌田博樹氏
OMG日本代表を務める創研プランニング社長の鎌田博樹氏



CORBA3.0でより容易かつ柔軟なシステム構築が可能に

OMG日本代表の技術担当補佐で、創研プランニングの鈴木純一氏は、CORBA3.0の新しい仕様について詳しい説明を行なった。3.0では、分散コンポーネントのサポート、QoS機能、新しいメッセージング形式のサポート、完全なインターネットとの融合、既存の環境のサポート、といった分野にフォーカスが置かれている。新仕様は次のとおり。

・Interoperable Name Service
ブートストラッピングのための標準的な方法の規定など、ネーミングサービスの拡張

・CORBA Component Model
CORBA分散環境におけるサーバサイドのコンポネント仕様

・CORBA Scripting
スクリプト言語を使ったCORBAコンポネント/オブジェクトの操作

・Multiple Interface
CORBAオブジェクトに複数のインタフェースを持たせるメカニズム

・Fiwewall
ファイヤウォールを越えてIIOP通信をするための仕様

・Realtime CORBA1.0
リアルタイムシステムでCORBAを利用するための機能

・Minimum CORBA
組み込みシステムなどでCORBAを利用するための最少限のORB(Object Request Broker)機能

・Messaging
非同期通信のための仕様、クライアント側のQoS(Quality of Service)管理

鈴木氏は、「分散オブジェクト技術の第一目標(CORBA1.x)の“抽象化・透過性”、第二目標(CORBA2.x)の“相互運用性”というステップを経て、第三の波であるCORBA3.0がほぼ確定した」と説明。3.0の登場はORB技術の完成を意味しており、2000年以降のコンピューティング市場に構造的な変化をもたらすと、OMGでは予測しているという。

また「CORBAを利用することのメリットは何か」という会場からの質問に対し、鈴木氏は「抽象化されたインターフェースで分散環境が構築できるため、システムインテグレーションを低コストで行なうことが可能だ」と回答した。

OMG日本代表にて技術担当補佐を務める鈴木純一氏
OMG日本代表にて技術担当補佐を務める鈴木純一氏



大規模システム統合におけるCORBAでは、非同期通信や拡張性がポイント

鎌田氏を司会に、6人のベンダーおよびユーザーで構成されたパネルディスカッションでは、CORBAの大規模システムへの適用や今後の課題などについての発言が交わされた。2時間におよぶセッションの中から、コメントの一部を紹介する。

「CORBAによるEAI(Enterprise Application Integration)では、システムが大規模で複雑になるほど非同期通信技術が重要だ。非同期については、今後も要望を出していく必要がある」(富士通(株)・成田雅彦氏)

「ORB製品に求められているのは、品質と性能とスケーラビリティー」(日本アイオナテクノロジーズ(株)・小野沢博文氏)

「証券業界では、インターネットにおけるサービスの提供やコールセンターサービスの提供、マーケティングや事務の合理化などを考慮した場合、EAIは必須。注目している技術的は、レガシーラッピングや、インターオペラビリティー、ノーティフィケーション、XML、ファイヤウォール、セキュリティーなど」((株)大和総研・本谷知彦氏)

「CORBAをプロモーションするには、医療や交通といった公共的な分野で、CORBAがオープンスタンダードの中で利用される機会が創出できるとよいだろう」((株)東芝・河込和宏氏)

「最近やっとCORBA2.0対応の製品が出てきたという感があるが、今後CORBA3.0対応と謳っている製品がどこまで3.0仕様に対応しているのかについては、注意が必要だ」(日本オラクル(株)・鈴木俊宏氏)

「CORBAの今後の課題としては、シンプルなオブジェクト指向プログラミングインターフェースの提供、仕様の洗練化などが挙げられる」((株)NJK・萩本順三氏)

「IT化に不可欠なスケーラビリティーやインターオペラビリティーなどは、今後もCORBAの課題」((有)インアルカディア・藤野晃延氏)

パネリストの面々、向かって右から、鎌田氏、藤野氏、鈴木氏、小野沢氏
パネリストの面々、向かって右から、鎌田氏、藤野氏、鈴木氏、小野沢氏



向かって右から、成田氏、河込氏、萩本氏、本谷氏
向かって右から、成田氏、河込氏、萩本氏、本谷氏



なお、このセッションの議事録、および会場からのQ&Aは、2~3週間後に創研プランニングのホームページに公開される予定。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン