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最新の産業用ロボットが一堂に--“'99国際ロボット展”開催に

1999年10月28日 00時00分更新

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東京有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で26日から“'99国際ロボット展”が開催中だ。このイベントは隔年ごとに開催されるもので、今回で13回目。主催は、(社)日本ロボット工業会と日刊工業新聞社。各種ロボットとその応用システム、関連機器メーカー91社11団体が出展する、世界的にも最大規模のトレードショウだ。日本はロボットに関しては生産、稼働実績ともに世界1、2位を争うロボット大国である。最近はパーソナルロボットの発売などで注目が高まっていることもあって、多くの来場者が見込まれている。テーマは“人との共生-ロボットはさらに変化する”。会場には特別企画として非製造分野のロボットを展示する“ロボットテクノプラザ”も用意されている。

展示の中で最大のトピックは“オープンロボットネットワーク”(Open Robot Interface for the Network:ORiN)だ。産業用ロボットはロボット本体と制御用のコントローラーで構成されている。近年、3Dグラフィックスを駆使したシミュレーターや動作モニター、生産管理などパソコンやワークステーションと接続してより効率的な運用を行なうケースが増えているが、コントローラー部分のインターフェースが各社まちまちで、アプリケーション側の対応が大変だった。ORiNは、各社のロボットコントローラーとパソコン間の通信インターフェイスプロトコルの標準化を行なうもので、これによりユーザーはひとつのアプリケーションで各社のロボットに対応できるようになる。ORiNはWindowsの分散オブジェクトモデル(DCOM)やXMLなどを用いて実装される予定だ。各社のブースにEthernetで接続されたロボットが設置され、Windows 98やWindows NT搭載のパソコンでネットワーク上のロボットの動作をモニターするデモを実施していた。

 ORiNで接続されたロボットを監視するパソコン。右側がネットワーク上に接続されたロボット全体の様子で、左がローカルロボットの様子
ORiNで接続されたロボットを監視するパソコン。右側がネットワーク上に接続されたロボット全体の様子で、左がローカルロボットの様子



このほか目を惹いた展示は、3Dシミュレーションだ。実際にロボットを動かすことなく、生産工程の確認や設計を行なうことができるもので、ロボットをどう動かすのが効率的か、どんなツールを持たせるのがいいのか、作業環境や配置は何がベストなのかをシミュレートできるバーチャルファクトリーとでもいうべき存在だ。また400kgの荷物を持ち上げられる最大級のロボットやセンサー能力を向上させたロボットなども展示された。また、各ブースでは精密作業を反復動作する産業用ロボットではおなじみのデモが多数行なわれ、ビールをついでくれたり、シャープペンの芯を通したり、ゴルフボールを積み上げるなど、健気なロボットの姿が目立った。より精密な作業をより高速に、そしてよりインテリジェントに行なう、同時にコンピュータ技術との融合とネットワーク化、最新産業用ロボットはそんな進化の道をたどっていると言えるだろう。

 3Dグラフィックスによるシミュレーターはまさにバーチャルファクトリーだ
3Dグラフィックスによるシミュレーターはまさにバーチャルファクトリーだ



 ゴルフボールを積み上げるロボット。右側に転がしたボールは上からのカメラで撮影して位置を検出、あらかじめボールの場所を教えなくてもつかみに行くことができる
ゴルフボールを積み上げるロボット。右側に転がしたボールは上からのカメラで撮影して位置を検出、あらかじめボールの場所を教えなくてもつかみに行くことができる

 400kgの荷物を持ち上げられる世界でも最大級のロボット。ビールケースを持ち上げるデモを行なった。FANACブース
400kgの荷物を持ち上げられる世界でも最大級のロボット。ビールケースを持ち上げるデモを行なった。FANACブース

 ロボットを制御するコントローラもパソコンベースへシフトしつつある。これはPentiumベースのパソコンライクなコントローラー。FANACブース
ロボットを制御するコントローラもパソコンベースへシフトしつつある。これはPentiumベースのパソコンライクなコントローラー。FANACブース

 アーム先端に3次元の物体センサーを持ち、対象物の形状と位置を把握、同時に力センサーで加える力加減ができるロボット。クラッチを組み上げるデモを行なった。FANAC製
アーム先端に3次元の物体センサーを持ち、対象物の形状と位置を把握、同時に力センサーで加える力加減ができるロボット。クラッチを組み上げるデモを行なった。FANAC製

 ブースでのデモステージ。やや見にくいがステージ上のロボットがカメラを持ち、中央のロボットがパソコンを操作している。不二越のブース
ブースでのデモステージ。やや見にくいがステージ上のロボットがカメラを持ち、中央のロボットがパソコンを操作している。不二越のブース

 左右の部品を並び替えるデモの途中、垂直に立ったシャープペンに芯を押し込むデモ。当然1mm以下の位置合わせ精度が保たれている。不二越ブース
左右の部品を並び替えるデモの途中、垂直に立ったシャープペンに芯を押し込むデモ。当然1mm以下の位置合わせ精度が保たれている。不二越ブース

 スペースを占有しない垂直関節型のロボットは、各社が取り組む次世代のロボット
スペースを占有しない垂直関節型のロボットは、各社が取り組む次世代のロボット



一方、企画展示の“ロボットテクノプラザ”では企業や大学が開発した非製造用のロボットが多数展示された。ホンダのP3やセコムの介護用食事ロボット(スプーンで食事を食べさせてくれる)などすでにおなじみのロボットを始め、原子力発電所内の作業用ロボット、惑星探査用ローバー、警備ロボット、遠隔手術システムなどが展示された。

 病院内での食事を運ぶロボット。安川電機
病院内での食事を運ぶロボット。安川電機

 リハビリを支援するロボット。安川電機
リハビリを支援するロボット。安川電機

 2体のロボットが協調して仕事をする双腕ロボット
2体のロボットが協調して仕事をする双腕ロボット

 スプーンですくった食事を口元まで運んでくれるロボット。危険がないようさまざまな工夫されている。セコム製
スプーンですくった食事を口元まで運んでくれるロボット。危険がないようさまざまな工夫されている。セコム製

 SECOMがヤマハやカーネギーメロン大学と共同で開発中の自律操縦するラジコンヘリ。視覚を持ちGPSで位置を認識する。テクノプラザでの展示
SECOMがヤマハやカーネギーメロン大学と共同で開発中の自律操縦するラジコンヘリ。視覚を持ちGPSで位置を認識する。テクノプラザでの展示

 ビル内の清掃や警備を行なうロボット。エレベーターを使って移動することもできる。富士重工製
ビル内の清掃や警備を行なうロボット。エレベーターを使って移動することもできる。富士重工製

 惑星探査ロボットのデモ。重量5kgと軽量ながら5つの車輪で運動性能を高めている。明治大学、宇宙科学研究所などの共同開発
惑星探査ロボットのデモ。重量5kgと軽量ながら5つの車輪で運動性能を高めている。明治大学、宇宙科学研究所などの共同開発

 オムロンなどが開発した感情を持つネコ型ロボットのゴマアザラシ版
オムロンなどが開発した感情を持つネコ型ロボットのゴマアザラシ版


'99国際ロボット展は29日の金曜日まで開催されている。

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