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ウェアラブルコンピューターの最先端動向を探る--第3回ISWCレポート

1999年10月27日 00時00分更新

文● (株)エイガアル 伊藤淳子

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10月18日~19日の2日間、米サンフランシスコにおいて、“第3回ウェアラブルコンピューター国際シンポジウム(以下ISWC)”が、ザ・カセドラル・ヒル・ホテルで開催された。ウェアラブル関連の学会としては世界最大規模のISWCには、400名近い研究者が世界各国から集まった。

“ウェアラブルコンピューター”というと、マサチューセッツ工科大学(MIT)が先鞭を切った眼鏡型のモニターや刺繍型キーボード付ジャケットなどがすでに知られているが、「なにがウェアラブルコンピューターか?」という点では、決め手となるものがまだ明確ではない。

ウェアラブルという単語が日本では単純に“着用する”と翻訳されたため“衣服”のイメージが強いが、欧米では衣服やファッションにこだわらず、コンピューター機能の拡張というなかでの、活用提案のひとつとして考えられているものも多い。

ISWC参加者に配られたグッズたち。デイバッグ、ボーイング社のボールペン、ISWCのロゴ入り空気枕、特製サンバイザー(縁についた小さな電球が光る!)
ISWC参加者に配られたグッズたち。デイバッグ、ボーイング社のボールペン、ISWCのロゴ入り空気枕、特製サンバイザー(縁についた小さな電球が光る!)



バイク便のためのウェアラブルデバイス

第3回目の開催となった今回は、研究発表のみならず、実用性を追求した提案も見られた。

たとえばノルウェーのオスロ大学とエリクソン社が発表した『Wearing BikeComponents』は、バイク便などでの利用を想定したもの。自転車やバイクで書類等を届けるビジネスは、ニューヨーク、東京、そしてノルウェーでもポピュラーであるということで、その3都市における利用状況をリサーチしたレポートが発表された。

バイク便では、テレコミュニケーション手段として携帯電話が50パーセント以上利用されている。また、通常必要とされるメモ帳、連絡用ポケベルやPDA、伝票や警笛をはじめ、ニューヨークでは口笛、ノルウエーではベルなど(日本では通常使われない)といった、いわゆる“七つ道具”が必須とされている。Wearing BikeComponentsでは、これらの道具をパッケージ化したウェアラブル情報端末をターミナル化している。

Wearing BikeComponentsにおいては、荷物の受け渡しの際に集荷センターやバイク便同士のコミュニケーションを、“移動しながら”“ハンズフリーで”“利用に合わせたコンポーネント”として、さまざまなデバイスが備えられると予想している。それらはマイク、カメラ、キーボード、オーバーレイのタッチセンサーディスプレー、GPSなどのセンサーや血圧計などといったものだ。

また、このシステムでは単純に通信の受送信のみならず、深夜における視界の悪さを解消すること、目的地や地形を認識すること、極寒地で手足が動かしにくい状況でも操作できること、記憶を補助すること、などといったバリエーションも提示された。

センサー付きジャケットでスイングをチェック!

また、オランダのフィリップス社は、ウェアラブルコンピューターのためのセンサーを発表した。これは、人の動きをセンシングする衣服としての機能を強調した“ウェアラブルジャケット”や“センサーバッヂ”に組み込まれたもの。

ウェアラブルジャケットのプレゼンテーション。なぜか周囲は女性研究者ばかり、学会には珍しい華やかな一幕
ウェアラブルジャケットのプレゼンテーション。なぜか周囲は女性研究者ばかり、学会には珍しい華やかな一幕



ウェアラブルジャケットには肩や袖、背中など11ヵ所にセンサーが内蔵されており、着用している人の姿勢がコンピューター画面上でわかるようになっている。このジャケットは、ダイナミックなスポーツシミュレーションゲームに活用できるほか、ゴルフや野球におけるフォームのチェック、医療分野での活用なども期待できる。

装着している人が立ったり座ったりしていることがわかるセンサー・バッヂは、たとえば携帯電話に応用するといったことが可能だ。ドライブ中にはハンズフリーモードへと自動的に切り替えたり、横になっているとき(つまり寝ているとき)や揺れているとき(バスや電車に乗っているとき)には自動的に留守番モードにする、といった機能を発揮することができるという。

そのほか、伝導性の繊維を使ったサスペンダーや、小型のセンサータグ、バックパック旅行者のためのウェアラブルシステムなど、回を増すごとにより実用性を求めた研究がなされているように感じられた。

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