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【INTERVIEW】「動画のデジタル変換機などに展開」――札幌が誇るビジュアル系エンジニア集団 “ヴィ・ソニック”に聞く

1999年09月30日 00時00分更新

文● 尽田万策

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今春に設立したばかりのエンジニアリング会社“ヴィ・ソニック”。社名はVisual(映像)とSonic(音声)を合成したものだという。社名にあやかり、製品も社員の外見も共に“札幌を代表するビジュアル系エンジニア集団”と呼ばれるよう努力に励んでいる。

通信技術と画像関連技術を組み合わせ、技術的に優位性のある事業に

--会社の概要について教えてください

「当社ヴィ・ソニックは札幌のソフトベンチャー企業のジャステックラボとシンクフリーが合併して'99年5月6日に設立されたばかりの会社です。そして、今日はようやく引っ越しして両社が同じフロアーに席を構えるという記念すべき日です(社内風景が煩雑としている理由)。'92年にジャステックラボの憩いの場、兼、仮眠場所として2畳でスタートした畳スペースも念願の6畳にまで育ちました」

6畳にまで成長した畳スペース
6畳にまで成長した畳スペース



「さて、ジャステックラボはデービーソフト出身の私(加野島氏)が'82年に設立、主に業務系アプリケーションや通信系のドライバーソフトなどの受託を中心に開発を行なってきました。一方、舞台女優出身の星野さんが'91年に設立したシンクフリーはテレビ朝日の選挙速報システムやFM局向けニュース配信システムなど、放送関連のシステム開発をしてきた会社でした」

「その私と星野さんが、たまたま飲み会で居合わせたのは今年の冬でした。今後は放送デジタルや高速インターネット、次世代携帯電話などメディアインフラの革新に伴って、デジタル映像配信に関連する技術ニーズが高まるという認識で大いに一致しました。そしてジャステックラボの通信技術とシンクフリーの放送、画像関連技術を組み合わせることにより、技術的に優位性のある事業を展開できるのではないかと、2度目の飲み会で合併を決意するに至ったのです」

2度目の会合で合併を決意したという加野島社長
2度目の会合で合併を決意したという加野島社長



「また、両社とも社員数が10人程度で、このままでは大掛かりな規模の業務プロジェクトにチャレンジするには人数的に足りない、かと言って一気に社員を採用するには勇気がいるという同じ悩みを抱えており、合併により規模の効果を図りたいということもありました。それと、私は根っから開発が好きなためにどうしてもマネジメントをさぼりがちなもので、財務に強い星野さんと一緒になれればありがたい、という下心もありました」

「ヴィ・ソニックという社名はVisual(映像)とSonic(音声)の合成です。現在26名の社員も全員社名にあやかり、製品および社員の外見共に“札幌を代表するビジュアル系エンジニア集団”と呼ばれるよう努力に励んでいます」

舞台女優出身の星野専務
舞台女優出身の星野専務



テレビ朝日の選挙報道や、日本中央競馬会の情報通信を舞台裏で支える

--現在の業務概要について少し詳しくお聞かせください。

「'91年にCGテロッパーの開発に加わったのが縁で、テレビ局向けの映像システムの開発に携わってきました。“選挙ステーション”という名称のテレビ朝日の選挙報道番組で使われる、系列各局向けの選挙システムが代表的な開発事例です」

「このシステムはCGを出力するためのベースとなるデータベースエンジンとその速報データをCGにレンダリングするアプリケーションから構成されています。前回の'98年参院選挙では、開票所の集票データの収集からデータ解析、映像化、テレビ出力までの一貫した流れを1台のPCシステムで処理し、より速報性とコスト性を高めました。電話端末を使用した集票システムから上がってくる得票データと、局内の担当記者からのニュース原稿を取り込むリアルタイムCGシステムとなっています」
「ただ選挙システムの難しさは、速報性から来る技術的な問題もさることながら、実はいつ解散や選挙が行なわれるか読めないという部分だったりします」

取締役企画・営業本部長の高津氏(シンクフリー出身)
取締役企画・営業本部長の高津氏(シンクフリー出身)


「セイコーエプソンに勤めていた'80年代から、98互換機上のドライバーやファームウェアの開発を加野島と行なっていました。その後、ジャステックラボを設立してからはWindowsまわりの通信、プリンタードライバーの開発を手掛けました。わかりやすいものとしては'94年に日本中央競馬会の競馬情報通信専用ナビゲーターである『馬ナビ』などを開発しました。そして、ここ3年ぐらいはインターネットテレビ、ワープロ、テレビセットトップボックス、携帯電話機など組み込み型インターネットブラウザーの開発に力を注いできました」

「振り返ると、製品の企画書(どんなサービスを提供するのかというコンセプト)をもとに、基本設計の段階から開発に携わることが多いし、好きですね。特に、iモードに採用されている“Compact Html”については企画の段階からチームに参加させていただきました。限られた表示体の中でどれだけ豊かなコンテンツ表現ができるか、実際は苦労しましたがとても勉強になりました」

取締役技術本部長の山本氏(ジャステックラボ出身)
取締役技術本部長の山本氏(ジャステックラボ出身)



情報家電端末の時代に向け、周辺技術の充実を図る

--今後の抱負についてお聞かせください。

「この世界は2,3ヵ月に一度は聞いたこともないプロトコルが登場する状況なので、先を深読みしすぎるというか、長期的な開発戦略を固めてしまうのはあまり意味がないと思っています」

「しかし、基本的にPCの時代はすでに先が見えていて、いよいよPDA、ネットワークゲーム、電話など情報家電の時代へと突入していると認識しています。で、そのときに問題なのは多様な端末や情報インフラをつなぐインターフェース、ドライバー、周辺機器技術の充実が果たせるかどうかで、その部分の技術を提供していくのが当社の役割と考えています」

「具体的には安価で高性能な動画デジタル変換機や関連デバイスの製品開発を現在進めています。これまではさまざまな制約があった情報家電端末がいろいろと可能性を広げていく中で、どんな役割を担っていけるか楽しみですね」

「画像系の分野については、プラズマディスプレーやデジタルの大型表示機器が良くなって来ており、今後は放送局以外のサービス分野も手がけていきたいです。もとになるデータをネットワークやデジタル放送で受信して、画像変換を自動的に行なう簡単で安い端末の開発を進めます。また、GISとの連動による地震速報などのコンテンツ分野も開拓したいです」

「札幌にはヴィ・ソニックが提携できる情報メディア系のソフト企業が次々に育っており、開発体制としては、徹底して外部提携を進めるつもりですが、提携先の技術も深く把握することを基本にしているので、社員はこれからまだまだ増えると思います」

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