千葉県の幕張メッセで“国際プラスチックフェア'99”(International
Plastic Fair:IPF)が開催されている。IPF'99はアジア地域最大のプラスチックの総合見本市で、3年ごとに開催され、今年で3回目。原材料、各種成型機、関連機器、金型などプラスチック産業全般にわたる展示が行なわれている。出展社数は前回を超える798社をカウントし、幕張メッセの全ホールを利用。海外からの参加も米国やドイツ、韓国を中心に300社を超え、ワールドワイドな展示会として定着している。主催は国際プラスチックフェア協議会。
携帯電話の筐体。こうした複雑な形状もワンショットで成型できる |
金型をシール、材料を流し込み、圧力をかけて成形、取り出すまでの過程を0.99秒で行なう超高速成型器。成型品は小さいコネクタで下にポロポロと落ちる |
言うまでもないことだが、プラスチックという素材は生活や産業に欠かせない存在になっている。パソコン関連でも筐体やキーボード、コネクタ、液晶パネルの偏光板や導光板など、数え切れないあらゆるところにプラスチックが使われている。また最近はノートパソコンの筐体やデジタルカメラに、マグネシウム合金が採用されているが、これもプラスチックの成形技術を利用したものだ。CD-ROMやDVDなどのディスクも、同様の技術が使われている。会場でも最も注目を集めていたのが、こうした射出成型器。これは金型に溶かした材料を流し込み、大きいものでは何百トンという圧力をかけて固める装置だが(プラモデルの製造過程と同じ原理)、この分野で日本は世界をリードする位置にいる。特に超高精度、高速成形といった分野では群を抜いており、今回も各社から最新製品の展示が行なわれた。
多色成型品の作り方。複数の色を持つプラスチック製品を作るベーシックな方法のひとつ。異なる材質を組み合わせることもできる |
光ディスクの製造装置。成形されたものがロボットアームで手前のテーブルに取り出される |
たとえばCDやDVDでは、マスター盤に付けられたピットの凸凹を、スタンプの要領で生ディスクにコピーするわけだが、これを製造するスタンパー装置は数μmというピットのサイズを正確にトレースできる性能を持っている。数μmの凸凹の間に材料を流し込んで金型を離し、取り出す。簡単にプレスしているように思えるが、超高精度な加工が行なわれているわけだ。また、「金型に材料を入れて圧縮して固めて取り出す」という製造サイクルを速める分野では、小さなコネクタ部品を1回あたり0.99秒という速さで作り出す装置が展示されていた。コストの削減やスピード納入などメリットは多い。一度に複数の部品を加工したり、加工後の製品を取り出す高速なロボットアームなどの展示もあった。
やや見にくいが、中央の銀色の部分に金型があり、右側から溶けた材料が流し込まれて、現在プレス中。上からアームで製品が取り出される(A) |
アームで取り出された製品は、静電気を除去し、重さをチェックすることで良品か不良品かをチェックする(B) |
出来上がりの成型品。ノートパソコン用のカバー(C) |
写真A~Cを行なう成型器の全景。350トンレベルの圧力をかけられる |
軽量ノートやデジカメに多用されているマグネシウム合金を加工する成型器も展示されていた。圧縮して固める部分は従来のプラスチック用のものと変わらないが、マグネシウムのチップを溶かして型に流し込む過程で“チクソモールド法”という方式を採用しているのが特徴。金属であるマグネシウムをプラスチックの要領で加工できる。最初にマグネシウム筐体を採用したソニーのVAIOノートもこの製法のおかげで誕生したものだ。
マグネシウムのチップ。“もと” |
VAIOノートやCOOLPIXなど最近の製品にはマグネシウム合金を使ったものが多い |
日本製鋼所(JSW)のマグネシウム成型器。成形部分はプラスチック用と大差ないが、右側上の黒い部分がマグネシウム仕様になっており、筒の中でマグネシウムを溶かして流し込む |
会場ではリサイクルコーナーも設けられており、環境に優しい業界の取り組みを紹介していた。ペットボトルの再利用品の展示や、家電リサイクル法をにらんだリサイクルを前提にした設計(解体のし易さ、資源の分別)なども紹介されていた。
リサイクル品からペットボトルを再生する装置。ペットボトルの再利用はこの業界の大きな課題とされている |
リサイクルコーナーにはNECのコンセプトパソコンが展示されていた。プラスチックが使用されている部分はリサイクルしやすいよう配慮されている |
開催は28日まで。詳細はhttp://www.a-tex.co.jp/plastics/。