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【テレワーク99 国際シンポジウム Vol.2】――欧州では3兆5000億円の基金でテレワーク推進

1999年09月06日 00時00分更新

文● 若菜麻里

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3日に東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された“テレワーク'99 シンポジウム”において、欧州委員会第13総局のマーチン・ボッターマン氏は“ヨーロッパのテレワーク最新事情”について紹介した。

欧州委員会第13総局のマーチン・ボッターマン氏
欧州委員会第13総局のマーチン・ボッターマン氏



変わる産業構造――新しい雇用を創出するテレワーク

ボッターマン氏の報告は、新しい雇用の創出がヨーロッパでは政治的な課題になっているということから始まった。現在、失業率は日本や米国で5パーセント前後なのに対し、ヨーロッパの平均では下落傾向にあるものの依然として10パーセントを超えているという。

それぞれの産業別に見た場合に、失業者が多いのは、1次、2次産業である。しかし、情報技術などのサービス部門、いわゆる3次産業では雇用が伸びているため、もし失業者が情報関連技術を持っているならば、新しい職を得るチャンスが増えていくとしている。そして、3次産業を支える新しい仕事のアプローチとして、近年はテレワークが注目されてきている。

次に、ボッターマン氏は、各国のテレワーク利用状況について、現状がどのようになっているのか? を図表を使って説明した。昨年のEITO(European Information Technology Observatory)の推定では、600万~800万人のテレワーカーがヨーロッパにいるという。労働人口の比率でみると、EU平均で4.5パーセント、南欧やギリシャで1~2パーセント、デンマークで5~7パーセント。オランダは12~18パーセントと突出している。なお、米国では12.9パーセントほどである」と説明した。

ヨーロッパにおけるテレワーク利用の推移を図表で説明するマーチン・ボッターマン氏
ヨーロッパにおけるテレワーク利用の推移を図表で説明するマーチン・ボッターマン氏



ヨーロッパで既に動き出している、年間約300億ユーロ規模の基金と200を超すプロジェクト

EUでの取り組みについては、「'89年以来、テレワークに関する調査研究を進めている。'93年からは政策や白書、行動計画に着手、'96年以降、テレワークを社会政策の一環として、各国のアプローチ方法を模索してきた。EUでは年間約300億ユーロ(約3兆5000億円)規模の基金を設立し、200を超すプロジェクトを展開している。このプロジェクトには、産業構造の変化に関する“ADAPT”、雇用問題を解消する“EMPLOYMENT”、地域経済開発を行なう“LEADER”などがある」と紹介した。

また、「ヨーロッパ全体の取り組みにより、さまざまなイベントが企画されており、産業、学会および政府の情報の公開と、市民の直接参加を呼び掛けている」としている。9月下旬にデンマークで開催される欧州議会では、テレワークに関する会議がもたれる。また11月1日から8日は、ヨーロッパのテレワーク週間だという。

ボッターマン氏は、「テレワークの普及において、政府の役割は非常に重要。しかし、政府機関は民間よりテレワークの導入が出遅れているのが実状だ」と指摘している。「ヨーロッパの省庁の中では、オランダの運輸省がテレワークのパイオニアである。省庁がテレワークの効果を実証するのは大切なことだ」と語った。

ヨーロッパの中で、テレワークの導入の最も進んでいるのがオランダである理由は、政府が率先し、政策として取り入れているという点にもあるようだ。

当日は300人近くの来場者が詰め掛けた。会場の後部席では大型モニターが設置され、講演の模様を伝えていた
当日は300人近くの来場者が詰め掛けた。会場の後部席では大型モニターが設置され、講演の模様を伝えていた

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