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【テレワーク99 国際シンポジウム Vol.1】基調講演で一人ひとりに実践を呼びかける

1999年09月06日 00時00分更新

文● 若菜麻里

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9月3日に“テレワーク99 国際シンポジウム”が、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。このイベントは、8月31日から9月3日の4日間にわたり催された“第4回テレワーク国際会議”に付随して行なわれた公開シンポジウムで、13ヵ国から約250人が参加した。

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回目を迎えたテレワークに大きな期待

会議およびシンポジウムを主催したのは、アムステルダムに本部を置く国際的なテレワーク推進団体の国際テレワークファウンデーション(ITF)および、NPOの国際フレックスワーク・フォーラム。この国際シンポジウムは、'96年のロンドンにはじまり、アムステルダム、ツルク(フィンランド)に続いて、今回の東京が第4回。また日本では、会議の開催に伴い、テレワークの推進に関わる諸団体と連携、“テレワーク99”として各種イベントやキャンペーンを展開している。

テレワーク99では、テレワークの視点として、“ビジネススタイルを創造する”、“SOHO社会を実現する”、“バリアフリーを実現する”、“地域間の距離を越える”、“マルチ・ライフスタイルを可能にする”という5つのポイントを掲げている。国際フレックスワーク・フォーラム会長の大西隆氏は、「テレワークとは、オフィスで働くワークスタイルから、在宅で働くことに切り替えるという変化だけでなく、これまでの型にはまった働き方を破り、それぞれにとって自由な働き方を発見することだと考えている。来場者の方々もぜひそれを発見してほしい」と開催の挨拶を述べた。

国際フレックスワーク・フォーラム会長の大西氏
国際フレックスワーク・フォーラム会長の大西氏



同じく冒頭の挨拶で、ITF会長のポール・ジャクソン(Paul Jackson)氏は、「今年の会議のテーマは、“新しい労働力のための戦略”であり、この先の2、3年で、テレワークについてどんなアジェンダを作ったらよいかを模索するのも大切な目的だ。テレワークに関する新しい技術や考え方を取り入れ、さまざまな変化に対応していきたい」と語った。

ITF会長のポール・ジャクソン氏
ITF会長のポール・ジャクソン氏



郵政大臣の野田聖子氏もビデオで挨拶し、「テレワークの可能性は、情報通信産業の分野でますます大きくなり、行政が担う役割は重要と認識している。政府では、テレワークに関する関係省庁連絡会議を設置し、6月には第1回目の会合が開催された。郵政省としても、今後、官民協力のもとでテレワーク推進施策を行なっていく。今回の国際会議では、有意義な情報が発信されることを期待している」と語った。

新しいワークスタイルを創出するテレワーク--米国の事例

基調講演では、“テレワークは何を変革し、どのような未来をもたらすのか~テレワーク先進国の現状と将来”と題して、テレワークコンサルタントのギル・ゴードン(Gil Gordon)氏がスピーチを行なった。

テレワークコンサルタントのギル・ゴードン氏
テレワークコンサルタントのギル・ゴードン氏



ゴードン氏は、テレワークの成長過程で起こることや必要なことについて、次の3つを予測した。「まず、雇用者はテレワークというワークスタイルを勝ち取るために、変化を拒絶する組織のマネージャと闘う必要がある。2つめに、テレワークで必要となる技術が、旅行セットのように、パッケージ・ソリューションとして提供されれば、テレワークの普及にも弾みがつくだろう。3つめに、大卒予定者が就職活動の際にフレックスタイムやテレワークを、当然の雇用条件として考える日はそう遠くない。それは、彼らがそれをしたいからというよりは、そういう柔軟な社風の会社で働きたいと考えるからだ。賢明な経営者はテレワークを実施する努力をするだろう」

ゴードン氏によると、「米国国内には、少なくとも約1000万人のテレワーカーがおり、毎年10から15パーセントの割合で増加している」という。その中には、在宅で働く人以外に、これまでオフィスで週5日働いていたが、現在週に1回はオフィス以外のところで仕事をしている、といったワークスタイルも含まれる。「テレワークは一時的な流行ではない。また、全ての人がそういう働き方をしなければならないということでもない。テレワークという働き方が当然のこととして近い将来受け入れられるということだ」と、ゴードン氏は語っている。

将来的には、「就業者の数は減り、起業家が増加するだろう。通信においても高速アクセスが可能になり、農村など人口密度が低いところでは、CATVや無線伝送がポピュラーになるだろう」、「通勤が困難な障害者にとっても、ベネフィットがある」としながらも、「職場が分散することで多少は車が減るものの、テレワークによって交通渋滞や大気汚染問題が解決するまでには至らないだろう」としている。

さらにゴードン氏は、「働き方に柔軟性を持たせることで、共働きの父母が、家庭で子供と過ごす時間が増えれば、社会が改善され、より豊かな生活が享受できるだろう」と語った。

最後にテレワークの促進のために、個人ができることとして、「週に1日でもテレワークが実践できる方法を考え、仲間と話をすること。大型プロジェクトではなく、小規模でもいいから始めるということ。テレワークが不必要だと思う人に対しては、電話が発明された当初、メッセンジャーボーイがいるから必要ないと企業は言っていたものだと伝え、啓蒙していって欲しい」と、一人ひとりに実践を呼びかけた。

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