【Seybold San Francisco 99 Vol.5】PostScriptからPDFへMac OS Xが加速する――セミナー後編
1999年09月06日 00時00分更新
こちらも“Seybold S.F. Seminars”でキーワードとなった |
Eコマースの展示ブースから
今回のSeybold S.F. Seminars展示会場。派手で大きな展示を行なったキヤノン、 |
会場にアメリカを象徴するような大型トラックを持ち込んで
2000年の春に登場する『Mac OS X』が注目のキーワードに
展示会の話題は新しく発表されたアップルのハードウェア『PowerMac G4』に集中したようだが、セミナーでは2000年に発表される同社の新しいOS『Mac OS X』が一気に注目のキーワードになった。“Publishing Strategies Conference”と題されたセミナーの最終日、事実上の最後に行なわれたセッション。ここまでくると参加していた日本人も1人抜け、2人抜けして、ついにこのセッションでは2、3人になってしまった。このセッションは題名もそのままの“Mac OS X:Apple's Next Generation Publishing Platform”。現状のMac OS 8.6はそのユーザー数が3600万人に上るが、この後にMac OS 9を挟んで、2000年の春にはいよいよMac OS Xが登場する。
Mac OS Xと一口に言っても、もちろんMac OS X ServerというOSもあるが、このMac OS Xこそは、すでにアナウンスされているように、これまでのMac OSとUNIX OSの流れを引き継ぐ“Machマイクロカーネル”の統合系である。アップルの Mac OS X and new API Technology DirectorであるKen Bereskin氏が図解したアーキテクチャーは、Machをコアにその周囲を重要な技術であるJAVA、BSD 4.4、WebObject、File、NetBoot、Apache/Application Serverが囲む形になっていた。
このうち、BSD 4.4はMachマイクロカーネルと同様にUNIX OSの流れを引き継ぐ技術だが、ここでは現在の製版工程、プリプレス工程では欠かすことのできないOPI(Open Prepress Interface)がサポートされている。その他、Mac OS Xにはメモリー関連が“Protected Memory”という形で、従来のマルチタスクも“Preemptive Multitask”になるなど、それぞれ強化が図られている。
Mac OS Xで新しいOSの機能を報告してくれたKen Berenski氏 |
注目されるMac OS Xの構造
さらに、注目すべきはMac OS Xの構造である。ここでは、今回“Open Source”を採用して核になる“Darwin”の上に、グラフィックレイヤーである“Quartz”の層が重なる。この基本構造2層の上に3つのユニット“Classic”、“Carbon”と“Cocoa”が並ぶ。それぞれユニークな名前(開発名)だが、それぞれ重要な機能を果たしている。“Classic”は従来(現在)のアプリケーションをサポートするためのレイヤーである。これは何ら新しいものではないが、過去の資産を引き継げるという意味でうれしい要素である。また、“Carbon”は新しいアーキテクチャーを持ったアプリケーションで、“Cocoa”は、JAVAベースのアプリケーションに関する部分である。
また、下の層に戻ると、実はグラフィックレイヤーである“Quartz”が重要な機能をサポートしている。ここには“2Dグラフィックシステム”、“2Dグラフィックライブラリー”、“PS/PDFイメージングモデル”のインプリメントが含まれている。“Quartz Technology”では、PDFのダイレクトサポート、“ColorSync”のビルトイン、アンチ・エリアシング、座標の概念、グラフィックスに特化した“PowerPC G4 Velocity Engine”などに関わる技術がある。
この技術が2Dグラフィックの品質向上、PDFのコピー・アンド・ペースト、PDFのドラッグ・アンド・ドロップ、オンザフライ・レンダリング、ドロップ・シャドウ、オンザフライ・ローテーション、透明(transparency)の表現、コンポージング、オブジェクトのマスキングなどを実現する。さらに、Mac OS Xでは“リアルワールドPDFサポート”と呼ばれるPDF関連の機能が他にもある。実際に、このセッションで行なわれたデモでは“PDF Playground Window”の中で、これらの機能が快適な速度で実行されていた。
Mac OS XがPDF、OPIとこれらのプリプレスに必要な機能を積極的にサポートしたことは、これまでのプリプレスシステムを変えるかもしれない。これまでは、どうしてもOPI技術を必要とするプリプレスシステムはMacintosh+Windows NT、SGIサーバー、もしくは専用システムなど、異機種を統合した形で構築されていたが、今後はMac OS X Server+Mac OS X Clientという、すっきりした形になるだろう。さらにプリプレスのワークフローがPostScriptからPDFに変わるのを加速するだろう。このあたりはまさに“21th Century Publishing”という感じだった。Mac OS(Mac OS X Server)の登場が待ちどおしい。
≪水無月 実≫
・Seybold San Francisco 99
http://www.seyboldseminars.com/
Events/sf99/
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