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【Seybold San Francisco 99】「2002年には600dpiの表示解像度をもつ専用読書端末」--マイクロソフト基調講演から

1999年09月01日 00時00分更新

文● 水無月 実

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8月30日から9月3日までの5日間、サンフランシスコのMoscone Centerで開催される“Seybold San Francisco 99”について、昨年と同じ、水無月実氏の寄稿でお届けする。“Seybold”は、出版、DTP、ウェブパブリッシング、デジタルクリエーション、印刷などを中心としたコンファレンスと、展示会である。

Sebold史上で最大規模

今年も“Seybold San Francisco 99”が開幕した。コンファレンスと展示会からなるこのセミナーは、毎年秋口に、サンフランシスコのダウンタウンにあるMoscone Centerで開催される。今年の会期は、8月30日から9月3日までの5日間。セミナーと展示会を合わせて、すでに3万5000人以上が事前参加登録を行なっている。また、展示会では350社以上が数百点にも上る新製品の発表を予定するなど、これまでで最大規模のセミナーとなる。

“Seybold San Francisco 99”の会場、Moscone Center
“Seybold San Francisco 99”の会場、Moscone Center



今年のコンファレンスは3本立て。ウェブのソリューションが検討される“The Web Conference”と、それから印刷および出版では、“Best Practices For Printing Conference”、“Publishing Strategies Conference”が準備されている。いずれのコンファレンスでも、今年のテーマである“21th Century Publishing”を反映して、21世紀の姿を語るという内容の講演が多い。

初日の今日(30日)は、同時に開催されている2つのコンファレンス、“The Web Conference”と“Best Practices For Printing Conference”で、それぞれConference Keynote(基調講演)が開かれた。

キーノートスピーチに登場するスピーカーと司会者が一堂に会した
キーノートスピーチに登場するスピーカーと司会者が一堂に会した



ここでは“The Web Conference”の基調講演を紹介する。“Vision of The Future”と題されたこの基調講演のスピーカーはマイクロソフト社の技術開発副社長、Dick Brass氏、CommTouch Software社社長のIsabel Maxwell氏、Strategic News Service社のMark Anderson氏である。

2000年に電子ブックリーダー“MS Reader”を発売

最初に登壇したMicrosoft社Dick Brass氏の講演テーマは、日本でも注目を集めている電子ブック“Electric Book”である。講演の冒頭では、書籍から電子ブックへの進化をたどるビデオが流された。ここには、2枚の表示液晶で、本来の書籍の形態である見開き表示を可能にする電子ブック用の読書端末も登場した。

キーノートスピーチの最初に登場したマイクロソフト社のDick Brass氏
キーノートスピーチの最初に登場したマイクロソフト社のDick Brass氏



電子ブックの先駆けは、古く、'81年にRandom House社が開発した電子辞書に遡るが、特に'95年~'97年に掛けて、急ピッチな開発が進んだ。その間に、読書端末を含めた電子ブックの販売価格が、15万ドルから2万5000ドルに下がり、総出荷台数が約1.5倍になった。この分野の先駆者であるRandom House社は、IBM PCで見る形を採用した。しかし、'98年にハンディー端末で読書を可能にするRocket eBookまでに、最も商業的に成功したのは、ソニーのその名も“電子ブック”であった。

これからも電子ブックの開発は進むであろうが、マイクロソフト社は、将来の電子ブックに使われるプラットフォームのスペックは低いもので十分と考えている。この意味では、プラットフォームの準備はすでに終わっていて、周辺技術の詰めを待つ状態になっている。ハードウェアの分野では優れた性能で低コストという条件を満たす液晶の登場、ソフトウェアの分野ではコピープロテクトなどセキュリティーの技術を待つのみである。

マイクロソフト社は、同時に2000年以降の予測を公開した。ここ数年は読書端末にはPCが使われるが、2002年にはいよいよ600dpiの表示解像度をもつ専用読書端末が登場するという。その翌年には、1回の充電での連続表示時間が8時間、価格が89ドルから899ドル(安価な方はモノクロ)に、2006年にはスタンド型の“Kiosk eBook”が登場。マガジンなど読書のコンテンツをそこから個人の端末にダウンロードする時代がくるという。

コンファレンスの資料を“eBook”に入れて帰る時代が来るのか
コンファレンスの資料を“eBook”に入れて帰る時代が来るのか



その後は、著者が編集と出版、さらにマーケティングまでを行なう時代になる。重さが8オンス、連続表示時間が24時間になるのも2010年という。ついに、2018年になれば、“eBook”をブックと呼び、今の書籍はペーパーブックと呼ばれるそうだ。

その予想を踏まえて、Microsoft社は“MS Reader”というソフトウェアを公開した。もちろん、これは2000年に発売される電子ブックソフトウェアである。ここにはスクリーン上で可読性の良いフォント“ClearType”が含まれる。“MS Reader”では本のデザイン(レイアウト)を重視している。

フリーメールビジネスの先進企業、CommTouch

次に登壇したIsabel Maxwell氏は、電子メールが、いかに現状の生活に入り込んでいるか、その先はどうなるかを紹介してくれた。彼女は、これまで電子メールとはまったく関係のない生活を送っていたが、今では電子メールが彼女の生活スタイルを変革したという。

キーノートスピーチで2番目に登場したCommTouch社のIsabel Maxwell女史
キーノートスピーチで2番目に登場したCommTouch社のIsabel Maxwell女史



電子メールによる生活スタイルの変革は各地で急速に進んでおり、2000年までにニュースサイトの数が急速に増えるであろうという。2000年のインターネットでは、アメリカ以外の地域のユーザー(母国語が英語ではない)の数が、ついにアメリカ内のユーザー数を超える。このように世界に広がり、地球を覆いつつあるウェブは、われわれの持つ時間感覚も急速に縮めていく。今後、オンライン上に生活の場を見出していく人々は、デジタルマーケットを実現させるだろう。その結果、インターネット上では、個人と個人の市場が確立する。

現在、すでに“HTMLベース”の電子メールを活用したカタログ(通信販売)会社が成功を収めている。また、教育用のコンテンツもあり、そこでは1日単位、1週間単位での頻繁なアップデートが繰り返されている。このように生活のペース、人々のレスポンスの速度は確実に速くなっている。すでに、日常生活でそのことを実感している人も少なくないだろう。

最後に登壇したMark Anderson氏は、デジタルの将来を語ってくれた。現在、デジタル化で断続的に進んでいる変化は、この後、より深いものになる。電子商取引が進むだろう。ここでは、これまでにない新しいユーザーを迎え、ウェブは、さらに巨大化していく。まさに、先にも述べられたように、PCの登場は人生全体の流れ(Human Life)を変えたが、インターネットの登場は、その生活スタイル(日常生活:Life Style)に革命をもたらしている。

キーノートスピーチの最後に登場したStrategic News Service社のMark Anderson氏
キーノートスピーチの最後に登場したStrategic News Service社のMark Anderson氏



近々、インターネットの生活には電子マネー(Universal Smart Card)が加わり、それが消費のスタイルを変えることは確実であると、Anderson氏は結んだ。

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