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【田中維佳のシンガポール報告 Vol.1】「1人2台以上のコンピューターを持っているのはザラ」--JSP(PTE)LTD. 高森徹夫社長

1999年09月01日 00時00分更新

文● 取材/文:田中維佳

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マレー半島の先端にある島国シンガポール。このシンガポールが、わずか33年前まではマレーシアの一部だったことを知らない人も多い。独立以前にはマレーシアの証券取引はシンガポールで行なわれていたほどで、経済と文化の両面において、両国の結びつきは強い。

マレーシア報告の続編となるシンガポール編では、マレーシアがMSCを推進するにあたって参考にしたと言われるシンガポールの現地事情をお伝えすべく、現地で情報誌を発行している日系企業を取材してみた。


シンガポールでクルマに乗ると、ダッシュボードのあたりに、小さな機械とそれに挿し込まれたプリペイド型ICカードを見つけることができる。これはERP(Electric Road Pricing)システムに対応した機械だ。

左側に挿さっているカードの大きさと比べると、ずいぶん小型の装置であることがわかる
左側に挿さっているカードの大きさと比べると、ずいぶん小型の装置であることがわかる



シンガポールでは交通渋滞を緩和するために、都心部に入る車両から通行料金を徴収する制度を採用している(夜7時以降と土日を除く)。この課金制度が'98年に自動化され、ERPシステムが導入された。自家用車はもちろん、タクシーやレンタカーに至るまでこの機械が備えつけられている。

装置のディスプレーから“72.00”という金額の表示が読み取れる
装置のディスプレーから“72.00”という金額の表示が読み取れる



“ERP”と表示された地点を通ると、通行料金がICカードから引き落とされる。ICカードの“度数”は、ガソリンスタンドや銀行で補充することが可能。日本ではまだ実験段階のICカードだが、70万台の車両を抱えるシンガポールでは各車両が1~2枚のカードを保有していると言われ、少なく見積もっても100万枚以上のICカードが、ERPシステムの設置と共に発行されたことになる。

“ERP”の表示が目立つ課金ゲート、かなり大掛かりな仕組みだ
“ERP”の表示が目立つ課金ゲート、かなり大掛かりな仕組みだ



このようなICカードによる電子決済は、駐車料金やガソリンスタンドでの支払いにも利用でき、シンガポール全土では約9000ヵ所の商店で利用可能だという。

こんなシンガポールの現地事情を、広告代理店でもあり『週刊シンガポール』や『月刊パルティ』を発行しているJSP(PTE)LTD.の高森徹夫社長、高森一徳会長に聞いた。

--週刊シンガポールと月刊パルティについてお聞かせください

「シンガポールには日系企業が約900社、日本人は約2万5000人が居住しており、これら日本人を対象に発行しています。フリーペーパーの月刊パルティは7000部発行で、6500人に郵送し、400部あまりを書店に置いています。こちらはシンガポール在住日本人女性向けの月刊コミュニティーマガジンです。また、週刊シンガポールは発行部数約1000部で1部4シンガポールドル(約260円)。書店でも購買できますし、パルティと同じく定期購読も受け付けています」

金属表面加工の専門家でもある高森一徳会長(左)、アフリカや中近東で井戸掘りの経験もあるという高森徹夫社長(右)
金属表面加工の専門家でもある高森一徳会長(左)、アフリカや中近東で井戸掘りの経験もあるという高森徹夫社長(右)



「この両誌をウェブページとして9月6日に立ちあげ、日本やシンガポールはもとより、アジア各国の日本人ビジネスマンに向けてシンガポールの現地情報を提供することにしました。当面は無料での公開ですが、電子マネーの導入を待って有料化を目指すつもりです」

週刊シンガポール
週刊シンガポール



--シンガポールのインターネット事情について教えてください

「幼稚園によってはコンピューター完備のところがほとんどで、2歳半からコンピューターに触れる機会があります。シンガポールは生活水準の上の層と下の層に非常に差がありまして、一概には言えないのですが、中流から上流の人は1人2台以上のコンピューターを持っているというのはザラです」

街じゅうに子ども向けのソフトがあふれている、これは5歳児向けのコーランを学ぶソフト
街じゅうに子ども向けのソフトがあふれている、これは5歳児向けのコーランを学ぶソフト



--シンガポールにはいくつプロバイダーがあるのですか?

「2004年にNTTやBT(ブリティッシュ・テレコム)、政府系のコングロマリットが参入する予定になっており、市場開放に向かうことは確かですが、今のところは3つです」

「その代わり、規制はしっかりしていますよ。どこの親もそうでしょうけれど、子供達がネットに触れる機会が増えれば増えるほど、“悪影響のあるサイトを見ていないか”というのが最大の関心事です。政府は徹底的にこの規制をしており、主だったアダルトサイトはシンガポールのプロバイダーからは一切見ることができないようになっています」

--それは、未成年だけではなく国民全体に対する規制ですか?

「そうです。大人も子供も関係なく一切触れることができないようになっているのです。美観を損ねるから全島でチューインガムの販売を禁止し、国外からの持ち込みも規制されているという、シンガポールの“「チューインガム規制”をご存じですよね? あれと、まったく同じ考え方です。良くないものはすべて切り捨てるという」

--でも、ウェブサイトは世界中にあるわけですし、それを全部網羅して規制するというのは政府側も大変なのでは?

「これはシンガポール独特とも言えるのですが、“青少年によくないサイトがこのアドレスで見える”といった、いわゆるチクリですね。こういった住民からのいわゆる通報が非常に多いのです」

・週刊シンガポール
http://www.npo.co.jp/ss/
・パルティ
http://www.npo.co.jp./parti/

「シンガポールは“日本に一番近い外国”」--Minook International 鈴木康子氏

鈴木康子氏は、パルティの編集長を勤めたのち、'98年にMinook International社を起業した経営者。同社が発行する『マンゴスティン倶楽部』は、ウェブサイトと雑誌の両方でシンガポールの情報を発信している。サイト版のヒット数は1日あたり6000~8000ヒットにのぼり、Yahoo! JAPANのオススメサイトにも登録されているという。

--なぜシンガポールでの起業を考えられたのですか?

「インフラが整っており、通信白書によれば20パーセントの国民がインターネットユーザーであるということが第一ですが、私は女性ですし“治安のよさ”という点でもシンガポールを選びました。シンガポールは他民族国家ゆえ、人々が私を外国人として扱わないでくれるというところも魅力です。言葉をかえれば解け込みやすい、入っていきやすい国とでもいいましょうか……。私はシンガポールを“日本に一番近い外国”と呼んでいるのですが、住んでいても違和感はないですし居心地もいいのです」

Minook International社の鈴木康子氏
Minook International社の鈴木康子氏


--外国人起業家に対する、政府の措置などはどうなっていますか?

「外国人だから特別ということはありません。税金もシンガポール企業同じで法人税23パーセントです。もちろん賄賂も必要ありません。最近では電子ポストカードを発行する若い男の子達が運営するウェブサイトを、政府の貿易開発省がバックアップして利益体質にまで引っ張ったという話も聞きました」

「シンガポールはローカルのIT産業を育成するために、IT開発に意欲的な起業に対して資本金が(日本円にして)7000万円以上であれば、政府が最大50パーセントまで援助するとも宣言しています」

--マンゴスティン倶楽部の展開についてお聞かせください

「現在はシンガポールの情報を提供することで広告収入を得ており、デパートの大丸と提携して小さい島ならではの小回りの利くお買い物デリバリーサービスなどを行なっています。今後はウェブのほうに力を入れていき、お隣のマレーシア、タイ、台灣、バリなどアジアのコンテンツを充実させていきたいと考えています」

マンゴスティン倶楽部、お弁当の宅配サービスも受け付けている
マンゴスティン倶楽部、お弁当の宅配サービスも受け付けている



--マレーシアのMSC、サイバージャヤについてはどう思われますか?


「早くシンガポールのレベルに追いついて来てくれれば、パートナー関係を築けるような企業が、これから沢山出てくるのではと期待しています」

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