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【Interactive Education Vol.4】“インタラクティブ”な教育とは?

1999年08月23日 00時00分更新

文● 編集部 寺林暖

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19日から2日間、大手町の日経ホールで、コンピューターやインターネットを活用した新しい教育のあり方を探る“Interactive Education'99”が開催された。2日目の午前には、“いまできるInteractive Education”という題目で、パネルディスカッションを実施した。

司会進行は筑波大学人文学部助教授の山内祐平氏。パネリストは宮崎大学教育学部助教授の中山迅氏、筑波女子大学短期大学助教授の余田義彦氏、東京都立明正高等学校教諭の吉岡有文氏、七尾市立徳田小学校教諭の八崎和美氏の4氏である。情報機器を用いた教育を実践している各パネリストが、それぞれの“Interactive”な教育方法について、具体的な体験を述べていく形で進んだ。

宮崎大学教育学部助教授の中山氏
宮崎大学教育学部助教授の中山氏



中山氏は、'95年から全国の中学校100校による『全国発芽マップ』を実施している。参加校全校が毎年一斉に同じ植物の種を栽培し、メーリングリストやホームページ、テレビ電話などを通して、自分たちの植物の成長状況、自分達で発見した育て方のノウハウ、などの情報を交換し合っていくというもの。'98年からは紙パルプの原料“ケナフ”を栽培。収穫したケナフから手作りのはがきを作成し、参加校同士で交換したという。同氏は「認知的な道具としてケナフ、インターネット、教師を組み合わせることにより、子供はリアリティーのある思考と表現を学んでいった」と語った。

筑波女子大学短期大学助教授の余田氏
筑波女子大学短期大学助教授の余田氏



続いて余田氏は、東京都八王子市にある柏木小学校での体験を紹介。同小学校では、6年生の卒業研究に“わたしたちの住んでいる‘宇宙船地球号’の環境について考えていこう”というテーマを設定した。しかし、一般的な卒業研究のように「発表したらそれで終わり」ではなく、発表後のプロセスを重視したという。

まず、発表後に、各生徒の研究レポートを“スタディノート”と呼ばれるグループウェア上に公開。3週間の討論期間を設け、スタディーノート上の他人の研究レポートに、感想や批判、疑問などのコメントを付けさせた。コメントでは、互いの人格を尊重した温かい表現が目立ったという。そのほか、討論が進むにつれ、問題点を分析した上で建設的な批判を行なう生徒や、自分で実験し結果報告を行なったり、次のテーマを提案したりする積極的な生徒が増えていった。

吉岡氏は「科学の学びの実現には、“先生”、“生徒”、“科学”の3つが互いにInteractiveな関係を持つ必要性がある」と語り、モノ作りや課題研究の重要性を指摘した。同氏が担当する都立明正高等学校の選択物理の授業では、'94年ごろからモノ作りと課題研究を積極的に導入している。同氏は「(工作などの)モノ作りは、マニュアル通り行なってもまず成功しないものだ。実際に自分の手で試行錯誤しながら製作することにより、新しい発見に気づき、さらなる疑問も湧き出てくる」と語った。

東京都立明正高等学校教諭の吉岡氏
東京都立明正高等学校教諭の吉岡氏



八崎氏は“環境”に関する共同学習を、東京、鳥取、石川、という地域環境がまったく異なる3つの小学校で実施した。お米を通して“人と環境のかかわりを考える”というカリキュラムを立て、定期的に小学校間でテレビ電話による討論を開催した。内容は農薬米/無農薬米の育ち方の違いに始まり、農薬が人体に与える影響、農薬使用の是非、にと発展。最後には「安全であるはずの無農薬米がなぜ農薬米より安い価格で売られているのか」、という世の中の矛盾を問う具体的な内容になったという。

同氏は「農村と都会という環境の違いは“生産者”と“消費者”という立場、考え方の違いを生み出した。さまざまな意見や異なる立場を、インターネットやテレビ電話を通して認識させることにより、自分自身のあり方を見つめ直すような環境学習が可能なのではないか」と語った。

七尾市立徳田小学校教諭の八崎氏
七尾市立徳田小学校教諭の八崎氏



最後に司会進行役の山内氏はパネリスト達の話を次のようにまとめた。「“Interactive”な教育は“教師の子供に対する願い”、“実際に学習者がどのような学習を行なうのか”、“どのような道具を用いるか”、“どうカリキュラムや組織を組み立てるのか”の4点が大事。その実践方法も典型的なものはなく、さまざまな方法が存在する」と語った。

司会進行役を務めた筑波大学人文学部助教授の山内氏
司会進行役を務めた筑波大学人文学部助教授の山内氏

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