インターネットの普及に伴い、電子商取引が盛んになっている。しかしこの電子商取引に関して、法律的な問題を含めた国際基準はいまだに定められていないのが現状である。1月に設立されたGBDeは、この電子商取引におけるビジネススタンダードの確立を提言しようとする国際的な非営利組織である。
日米欧の大企業がそろい踏み
GBDeは'97年に欧州委員会委員によって提唱され、'99年1月14日に正式発足した。参加するのは、米IBM、米ヒューレット・パッカード、AOL、フランステレコム、ウォルト・ディズニー・カンパニー、日本電気(株)、(株)東芝といった内外の大企業の首脳陣である。これらが緩やかに結合して、今後の電子商取引市場の法律面、経済面のあり方を模索していくという。GBDeでは、電子商取引における問題を次の9項目に分類。世界を3つの地域に分け、それぞれの問題にそれぞれの地域ごとの担当企業を振り分けて、世界レベルでの議論を重ねてきた。
(1)IPR
(2)プライバシー
(3)認証/セキュリティー
(4)消費者保護
(5)ライアビリティ
(6)税、関税
(7)インフラストエラクチャ
(8)準拠法
(9)コンテンツ
9月13日には、パリ、カルーセル・ド・ルーブルで、これまで論議を重ねてきた提言を発表する総会が開催される。19日に行なわれたプレスセミナーでは、GBDeの取り組みの経過を説明した。
左より欧州議会員エルマー・ブロック氏、GBDe世界議長でBertelsmannAG会長兼CEOのトマス・ミデルホッフ氏、GBDeアジア/オセアニア地域担当で富士通取締役副会長の鳴戸道郎氏 |
消費者の利益と安全を強調
プレスセミナーにはGBDe世界議長兼欧州/アフリカ地域スポークスマンでBertelsmannAG会長兼CEOのトマス・ミデルホッフ氏、同アジア/オセアニア地域スポークスマンで富士通取締役副会長の鳴戸道郎氏のほか、GBDe設立に大きく貢献した欧州議会員エルマー・ブロック氏らが出席した。「電子商取引の利用者は地理的に多岐に渡るので、コンセンサスを取るのは非常に困難だった」と語るトマス・ミデルホッフ氏 |
挨拶に立ったミデルホッフ氏は、「驚くべき速さで拡大するインターネット上でのビジネスの現状に対応するため、一刻も早い電子商取引における法律的整備がGBDeの役割である」と述べた。また、法制上の整備の際に重視すべきなのは消費者の利益と安全であると強調した。
鳴戸道郎氏は、個人はもちろん、企業団体や政府を含めたネットワーク利用者それぞれの意見を調整して、有効な指標を提示していきたいと発言。
アジア/オセアニア地域スポークスマン鳴戸道郎氏 |
公的規制を抑え、自主規制にゆだねるべき
具体的な提言に関しては、先に挙げた9項目のうち、認証/セキュリティー、プライバシー、準拠法の3項目を担当するアジア/オセアニア地域の代表がそれぞれ説明した。NEC専務取締役の吉川英一氏は、電子商取引の安全を確保するという認証/セキュリティーの問題を担当。この問題に対する提言には、公開鍵や暗号鍵のみならず、指紋や声紋による電子認証に関する項目も含まれるという。
プライバシーの問題を担当する東芝の取締役上席常務の岡村正氏は、「エレクトリック・コマースはいまだ発展途上にあるため、過度の法的規制はこの市場の発展を阻害する」と述べ、規制を最小限に抑えて企業側の自主規制にゆだねるべきだと発言した。
準拠法を担当する三井物産(株)専務取締役の島田精一氏は、経団連情報通信委員会、情報化部会の電子商取引推進WG座長でもある。島田氏は経団連の立場から、電子商取引を日本経済の活性化の契機にしたいと発言した。
欧州議会員エルマー・ブロック氏 |
エルマー・ブロック氏は、「インターネットは国境のない新しい経済世界。現存の法律では対応しきれないのは当然である」と述べて、ビジネススタンダードの確立と、その世界レベルでの普及への期待を見せた。