このページの本文へ

【LinuxWorld Conference & Expo レポート Vol.3】「OSのエラー画面はマイクロソフトにまかせる」--リーナス・トーバルズ氏講演

1999年08月18日 00時00分更新

文● 草薙 尚

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

米国サンノゼで開催されたLinux Worldについて、在米のシステムズエンジニア、草薙尚氏の寄稿でお届けする。メーンイベントとも言えるリーナス・トーバルズ(Linus Tovalds)氏の基調講演の模様を中心にお伝えしよう。

Linuxが成長していく過程には、幾多の困難が待ち受けているだろうが、着眼は未来、着手は現在という心がまえで踏み出せば、道は開ける。向かって左がトーバルズ氏Linuxが成長していく過程には、幾多の困難が待ち受けているだろうが、着眼は未来、着手は現在という心がまえで踏み出せば、道は開ける。向かって左がトーバルズ氏



Windows関与者は0.1パーセント?

シリコンバレーの中心地ともいえるサンノゼコンベンションセンターでLinux Worldが開催された。今年3月にも同じ場所においてLinux Worldが開かれたのでわずか半年後に同じ展示会が開催されたことになる。メーンイベントとも言えるリーナス・トーバルズ(Linus Tovalds)氏の基調講演の模様を中心にお伝えしよう。

会場は満員
会場は満員



講演は、夕方6時30分から、展示会と同じサンノゼコンベンションセンターで催された。半年前にもLinus氏の基調講演が行なわれたばかりだし、前回ほど大混雑することはないだろうと思ったのが甘かった。やはり長蛇の列。最後尾はコンベンションセンターの建物の外までつながっていた。全員の収容に時間が掛かってしまったため予定より10分遅れてスタート。

司会者は、Linuxコミュニティーのすばらしさを強調するために、ちょっとしたデモンストレーションというか示威行動を見せた。まず、Linuxのリリースのためにプログラムコード、ドキュメント、パッチなどの提供をしたことのある人たちに挙手を求めた。ざっと見渡しても数百人といったところか。次に彼ら全員が起立したときには会場全体から喝采の拍手が起こった。

続いて「WindowsのCDに貢献している人はお立ちください」の声が掛かった。このときに起立した人はたったの2名。これには会場が大爆笑。

なごやかな雰囲気の中、講演会は進む
なごやかな雰囲気の中、講演会は進む



「Linuxはこのエキスポに出展している人たちだけではなくて、会場に来ている多くの人々の参加によって成り立っているのです。これがLinuxコミュニティのエキサイティングなところなんです」とオープニングを締めくくってリーナス・トーバルズ(Linus Tovalds)氏が紹介された。

見ず知らずの人の協力の上で存立

型どおりの講演を好まないリーナス氏は、まずLinuxの過去と将来について紹介したのち、約30分間の質疑応答を行なった。

トーバルズ氏の語るLinuxの過去、現在、未来
トーバルズ氏の語るLinuxの過去、現在、未来



今から7年前、'92年、リーナス氏がまだフィンランドのヘルシンキに在住していたころ、一緒にLinuxの開発を行なってきた同僚宛てに見知らぬ人から小切手が送られてきたことがあった。「これはインターネットで詐欺行為をして得たものじゃないんだよ」とジョークを交えながら語った。「Linux人口がいまの半分にも満たない数だったのに、まったく見ず知らずの人がLinuxの開発のために(資金面で)協力してくれた、これがLinuxコミュニティーのすばらしさなんです。基本的な考え方は今も変わっていません」--。

子供がコミュニティーの中で育つがごとく、Linuxはトーバルズ氏の目の届く範囲にいながらも、コミュニティーの協力の中で育ってきた 子供がコミュニティーの中で育つがごとく、Linuxはトーバルズ氏の目の届く範囲にいながらも、コミュニティーの協力の中で育ってきた



次に、2.2.11から2.4まで、各バージョンについて、以下のように説明した。

安定版カーネルの最新版である2.2.11が8月9日付け(米時間)でリリースされた。2.2.11は2.2シリーズの最終バージョンになるであろう。今後は安定バージョンの開発は一切お預けにして開発バージョン2.3.xの最後の仕上げに掛かっていく。2.2.11では、基本的に、セキュリティーの強化と、セキュリティーに関するいくつかのバグ修正を果たした。

次期安定版のバージョンは、2.4となる。2.4のコードが書き上がって固まるのは1~2ヵ月後、正式にリリースされるのは年末ごろになる予定である。

笑みをたたえながら、しかし、力を込めて語る 笑みをたたえながら、しかし、力を込めて語る



2.2で、開発開始からリリースまでに2年半も掛かってしまった反省を踏まえ、2.4シリーズではリリースのタイミングに重点を置く。2.4で特筆すべきことは、SMPの安定とUSBの改善である。クラスタリングとファイルの履歴管理機能については間に合わなかった。

OSのエラー画面はマイクロソフトにまかせる

途中、リーナス氏の赤ちゃんが泣き出したりして、氏がおろおろする場面も見られたが、講演自体は、和気あいあいと進んでいく。

子供をあやしながら講演 子供をあやしながら講演



「本当は、ふじ色のデッドスクリーンも取り入れようとした。だけど、マイクロソフトがブルースクリーンと呼んでいるOSのエラー画面には、いろいろとマイクロソフトの特許がからんでいるから止めました。ごめんなさい」と、いつものメジャー批判のジョークを飛ばしたから、会場は大爆笑。

質疑応答のなかでは、USBでサポートされるデバイスの種類とDVDプレーヤーのサポートについてのやりとりが記者(草薙)の興味を引いた。USBデバイスははマウス、キーボード、カメラ、スキャナーなどの基本的なものだけをサポートする予定だ。DVDについては、ハードウェアレベルでの対応と商用ベースのDVDプレーヤーを使う方法の2通りを検討している。しかし、どちらもまだ実現できていないという。

Linuxの開発については、商業ベースのディストリビューションとLinuxコミュニティーの開発者との間で、リリース時期などについて考え方の相違がある。しかし、商業ベース(企業)とコミュニティーの開発者が協力することによって得るものも多いのではないかといった意見で締めくくられた。

2万5000ドルの小切手の前で
2万5000ドルの小切手の前で



最後に、Linux Worldの主催者であるIDGが、Free Software Foundationに2万5000ドル贈呈して、お開きとした。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン