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【夏季特別企画 Windows編 Vol.1】「Windows 2000はWindows 98の後継ではない。技術的にはWindowsとUNIXぐらい違う」

1999年08月11日 00時00分更新

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夏季特別企画Windows編では、現在Winodws 2000 β3を使ってバリバリ執筆活動を行なっておられるライターの本田雅一氏をお招きし、Windows 2000の位置付けから、β3を実際に使用されている感想、一般ユーザーがβ3を利用する際のアドバイスなどを語ってもらった。その模様を3回に分けてお伝えする。

『Windows 2000』の持つ意味とは?

本誌編集部「Windows編では、今年度中に製品版の出荷が予定されている新OS『Windows 2000』を中心に、話を進めていきたいと思います。まずは、Windows 2000の位置付けからお願いできますか」

本田「最近パソコンを使い始めた人というのは、これまでWindowsというものがどういうふうに歩んできて、その中で今のWindows 2000がどういう意味を持っているのかということをよく知らないと思うんですよ。例えば、僕にしたって、昔からライターやってたりシステムを開発してたりしてる人にしたって、Windowsの世界で仕事をしてる人たちは、Windows 2000にすごい期待してるわけじゃないですか。それはやっぱり今までのいろいろな経緯があると思うんです。

Windowsは、もともとMS-DOSの世界があって、それにグラフィカルなインターフェースをアドオンしようというのが目的だった。ただそれだけだったんですよね。一方、それとは別に、ちゃんとプロセッサーの機能を活かしたオペレーティングシステムとして、OS/2というものをマイクロソフトとIBMとで共同で開発してたんですよね。こういう話なんて、いまどきのユーザーは全然知らない」

本誌編集部「今ではOS/2という製品自体も知らない人が多いでしょうね」

本田「IBMとマイクロソフトが一緒にOSを作ってた、なんて話はね。そして、それとは別に、既存のMS-DOSユーザーにもグラフィカルなユーザーインターフェースを提供しようということでWindowsを開発した。ところが途中でIBMとマイクロソフトが仲が悪くなっちゃうわけ。その原因は、マイクロソフトのWindows 3.0が、比較的ユーザーに受け入れられて、OS/2を使わなくても、ある程度Windows 3.0でいいかなっていう雰囲気になったから。しかもWindows 3.0はそんなに速いマシンじゃなくても動いたし。平たく言えば、Windows 3.0は現実的なソリューションとして受け入れられたわけです。そして、ユーザーが爆発的に増えた」

本誌編集部「Windows 3.0は、企業にもどんどん導入されていきましたからね」

本田「それと同時に、戦略的にもマイクロソフトとIBMは仲が悪くなっていった。マイクロソフトとIBMは、メジャーバージョンを1つずつ交互に開発するようになっていたんですよね。OS/2 1.xはマイクロソフトが中心になって開発をして、次のOS/2 2.xはIBMが開発して、というように。そしてOS/2 3.0をマイクロソフトが中心になって開発した後、IBMとマイクロソフトが仲たがいして別れた。そしてそのOS/2 3.0の技術をもとにしてWindows NTを開発し、その後Windows NT 3.1が出荷されるわけです。ここら辺になってくると、少し前からパソコンを使っている人は、だいたいわかってくるかな」

本田雅一氏:8ビットパソコンの時代から、マイナー機種に愛を注ぎながら細々とパソコンを使っていたものの、オープンなハードウェア環境に憧れてIBM PC/AT互換機の世界に足を踏み入れる。それ以後、無謀にも専業フリーライターへと転職し、企業向け情報技術関連のニュース、動向などの記事を書きながら、個人向けデジタル製品にも手を出しつづけている本田雅一氏:8ビットパソコンの時代から、マイナー機種に愛を注ぎながら細々とパソコンを使っていたものの、オープンなハードウェア環境に憧れてIBM PC/AT互換機の世界に足を踏み入れる。それ以後、無謀にも専業フリーライターへと転職し、企業向け情報技術関連のニュース、動向などの記事を書きながら、個人向けデジタル製品にも手を出しつづけている



本田「だから、OS/2とNTは、実は兄弟だったわけ。そこでWindows NTでインテルのCPU性能を100パーセント使用できるOSを作ったんだけれど、Windows NTの機能を 100パーセント活かしたアプリケーションは、Windows 3.1じゃ動かなかったんですよ。いわゆる16bitアプリケーションと32bitアプリケーションですね。最近では何も言わなくなったけれど、16bitのAPIを使って動いていたWindows 3.x用アプリケーションは、NTでも一応は動いたんだけど、機能を活かせない。一方、32bitアプリケーションは、Windows 3.1では動かない。

そこでマイクロソフトは、Windows 95を、将来32bit環境に移行するためのクッションとして作ったわけです。Windows 95が発売されてからは、あまり言わなかったけれど、Windows 95が出る前は、32bit環境へ移行するためのステップだということをマイクロソフトの人たちも言っていた。そしてWindows 95が出荷されたわけですが、それが成功して、今では『32bitアプリケーション? 何それ?』という感じですね」

本誌編集部「うん。ほとんどのWindows対応アプリケーションが32bitになっちゃったから、あえて“32bit”という必要がなくなった」

Windows NTへ移行する際の障壁

本田「ほとんど全部が32bitアプリケーションになって、マイクロソフトは純粋な32bit環境にいくための第1段階の環境を整えたわけ。だけど、すぐにWindows NTに移行できるかというと、そんなことはなくて、問題は2つある。

1つは周辺機器のサポート。この問題を解決するために、サウンドやマルチメディア系の周辺機器のドライバーに関して、WDM(Win32 Driver Model)という、新しいドライバーの規格を作って、これをWindows 98に実装した。このWDMという規格はWindows 2000にも実装されている。つまり両方のドライバーを共通化することで、周辺機器のサポートの負担を軽減しようとしたわけです。

これ以外にもドライバーを作りやすくするために開発キットを改良するなど、周辺機器に関する問題を解決しようとした。これらの最終的なゴールは、Windows 98というクッションも入っているけれど、要はWindows 2000に移行しやすいようにするということです。

さらにもう1つの問題は、Windows NTは、Windows 9xと比較すると、より進んだOSだということは言えるんだけれど、でもWindows 9xが持っている機能すべてをWindows NTが持っているかというと、そんなことはない。

例えばゲームに関する機能、具体的に言えばDirectXとか、操作性がユーザーフレンドリーかどうかという部分、パワーマネージメント機能、プラグ&プレイ、PCカードのサポートなど、欠けている機能はたくさんある。これらの欠けてる機能が備わっていないと、『Windows 9xに比べて上位の、より進んだものですから、みなさんWindows NTに移行してください』というわけにはいかないじゃない。

そこで、Windows 2000では、その部分を解決して、Windows 98でサポートしている機能を、すべてNT上でも使えるようにしようとしている」

Windows 2000の先にあるもの

本田「マイクロソフトとしては、たぶんWindows 2000は最終目標ではなくて、これもやっぱり緩衝材の1つなんですね。Windows 2000に、今言ったような機能を持たせることによって、ある程度パワーユーザーは移行してくれるだろうという見込みがあるだろうし、おそらく企業を中心に採用は増えていくと思う。機能差を少なくしていくことで、周辺機器のドライバーのサポートも、Windows 98と変わらないレベルに持っていくことはできるだろうと思うんです。

そうやって、Windows 9xとWindows NTの差をだんだんなくして、以前の16bitアプリケーションから32bitへの移行と同じように、問題のないところまで市場の環境を整えてからから、Windows 2000をもとにしたコンシューマー向けのOSを作ろうというのが最終的な目標ですね。

Windows 2000のクライアント向け製品は『Windows 2000 Professional』なんだけど、Windows 2000 Professionalというのは、完全にパーソナル用途ではないかもしれない。機能がすごく多くて、個人向けとしては無駄なものたくさんある。設定項目など細かく見ていくと、一般ユーザーにはよくわからないプロ向けの設定もあるかもしれない。

だけど、Windows 98の代わりとして、使おうと思えば使えないことはない、というレベルまできているわけです。マイクロソフトは、こうして、ゆっくりゆっくりWindows 98の世界からユーザーが足を洗っていくことを期待しているのかなと。そういう位置づけですよね」

Windows 9xの世界から足を洗えるのはいつ?

本田「ただ、製品リリース予定として、Windows 2000の出荷が大分遅れた。もう5年ぐらいずっと開発してますよね。Windows 2000そのものが遅れちゃったせいで、Windows 2000をもとにした真のコンシューマー向けのOSの開発も遅れている。もともとは西暦2000年にそういうものを出すと言っていたのが、今は“リリースは2001年以降”という予定になってますから、いつの話になるのかわからない状態。まあ、うまくいけば2001年か、2002年の前半に、Windows 2000をもとにしたコンシューマー向けOSが出るんじゃないかな」

本誌編集部「開発が遅れたことによって、Windows 2000の位置付けも若干変わってきてるんでしょうか」

本田「マイクロソフト側は、開発を始めてからいままでの間に、市場がOSに対して要求する事柄、機能が少しずつ変化してきたから、それに合わせて改良していたせいで開発が遅れたという話をしてましたね。このことに関しては、予測してもしょうがないので、その説明を信じるしかないんじゃないかなとは思うんだけど。ただ、どういった機能が予想されていても、OSに求められるものは、機能というよりは、ちゃんと動作すること。ちょっとさっきの話に戻っちゃうんだけど、もともとWindowsはDOSのアドオンソフトだったわけじゃない」

本誌編集部「そうですね。まずDOSをインストールして、それからWindowsを入れてました」

本田「そこで求められてるのは、互換性だったり、手軽さだったりで、決して安定性じゃなかったんですよ。でも、その後だんだん安定性が求められるようになってきて、建て増し、建て増しでよくしてきたんだけれども、やっぱり限界はあるわけです。実際、Windows 98なんかは割と安定しているほうだとは思うけれど、安定か不安定かというレベルで語っているようじゃだめですよね。Windowsは止まらないものだ、OSというのは止まらないものだということじゃないとだめなわけでしょう。そういう見方からすれば、もうWindows 98は捨てちゃって、Windows NTの技術に移行するほうが幸せだと思うんですよね。

UNIXを使っている人たちは、『そんなことはない、Windows NTはクラッシュしやすい』と言うかもしれないけれど、それはサーバーレベルの話であって、ワークステーションレベルだったら十分なものだと思いますよ。クラッシュする大半の原因は、ドライバーの不具合なんです。

だから、実績のあるドライバーを使って、Windows NTで動かしてれば、そうそうめったに落ちるものじゃないし、不安定にはならないです。Windows 2000はβ3の段階でもうWindows 98よりはるかにマシですよ。1ヵ月ぐらいマシンの電源つけっ放しでも全然平気。うち、パソコンの電源切りませんから。

Windows 9xだと、システムリソースの問題があるから、ある程度リブートしたほうがいいんですよ。だけど、Windows NTやWindows 2000をクライアントで使っているのなら、つけっ放しにしておいてもいいんじゃないかな。それぐらいの信頼性はありますよ」

Windows 2000はWindows 98の後継ではない

本誌編集部「一般ユーザーは、Windows 9xとNTの違いがわからない人が、以外と多いようです」

本田「そうですね。Windows 2000という名前から、Windows 98の後継だと思っている人がいると思うんですよ。技術的に言えばすごく違うんだけど、端的に言うとどうなんでしょうね。Windows 3.1を改良したのがWindows 95だった。また、Windows 95とWindows 98は、ニアリーイコールなわけです。それに対して、Windows NTというのは、過去との互換性とは全然関係なく、一番最初から作り直したものですよね。

Windows 9xとWindows NTと、どれぐらいの違いがあるかというと、同じアプリケーションが動くだけで、中身の構造の違いといったら、WindowsとUNIXぐらいの差があると思いますよ。だからまったく別のものです。たまたま同じアプリケーションが動くだけ。

Linux上でもエミュレーターを使ってWindowsアプリケーションを動かせるじゃないですか。あれは完全に動作するものじゃないけれど、もし完全に動いたとしたら、それはWindowsみたいなものでしょう。だけど、下で動いているものは全然違うわけ。だから、Linux上でWindowsアプリケーションを動かすのと同じくらいの構造的な差はある。表面的には変わらないけれど、中身は違うもの」

本誌編集部「下で動いているものは全然違うぐらいの意識は持っておかなければ、ということですね。こういった意識は、一般ユーザーには浸透しないのでしょうか」

本田「浸透しないよ。というより、OSをWindows 2000に変える理由があるとしたら、そこしかないってことですね。たぶんマイクロソフトは、個人ユーザー向けにWindows 2000は売らないだろうけれど、そういうことをちゃんと理解した上で使うのであれば、すごく有益だと思いますよ」

(Vol.2に続く)

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