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“マルチメディア考房”で学生主体のプロジェクトを運営――金沢工業大学のマルチメディア教育への取り組み

1999年08月11日 00時00分更新

文● 編集部 白神貴司

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石川県金沢市にほど近い石川郡野々市(ののいち)市に、工学部単科(11学科で構成)の大学、金沢工業大学がキャンパスを構えている。ここでは全学でおよそ8000人の学生が自由に使えるマルチメディア施設として“マルチメディア考房”を開設している。今月中旬にリニューアルを控えた同考房を取材したので、レポートする。



マルチメディア考房は“夢考房”からスタートした

金沢工業大学は'65年に、工学部単科の大学として設立された。設立から27年後の'93年、学生に開放し、工作や技術学習を目的とした作業を行なえる施設、“夢考房”を開設した。夢考房には木工用旋盤や金属加工用旋盤など、工作機械が導入されており、学生はこれを用いて自動車の仕組みを学ぶキットカーを組みたてたり、電子部品を試作したりできる。

工作機器がずらりと並ぶ夢考房
工作機器がずらりと並ぶ夢考房



ちなみに、「工房」ではなく、「考房」としたのは、「単に作業をするのではなく、考えるための場としての意味合いを持たせたかったから」(同学システム部長、得永義則氏)だという。

夢考房では、毎年夏に琵琶湖で開催される人力飛行機コンテスト“鳥人間コンテスト”に参加したり、オーストラリア大陸をソーラーカー(太陽発電自動車)で縦断するレースに参加したり、というプロジェクトが実施されている。同学はソーラーカーでは“強豪”で、'97年に鈴鹿サーキットで開催された耐久レースでは、学生チームとして史上初となる総合優勝を達成している。

学生がプロジェクトを運営し、大学はサポート役に徹するマルチメディア考房

この夢考房をデジタル・マルチメディアの方向に特化させたのが、マルチメディア考房だ。マルチメディア考房は'96年、“ライブラリーセンター”(図書館)の一角にパソコン10数台を導入して発足した。学生が運営スタッフとして参画しており、大学側はサポート役に徹している。

マルチメディア考房の入り口。この奥にパソコンが設置されたブースがある
マルチメディア考房の入り口。この奥にパソコンが設置されたブースがある



今年4月のリニューアルにより、マルチメディア考房には“マルチメディアプロジェクトブース”、“マルチメディアコンテンツ制作コーナー”、“LANコーナー”という3つのエリアが設けられた。

マルチメディアプロジェクトブースでは、マルチメディアオーサリング技術の習得および制作活動(プロジェクト)が行なえる。同学の学生ならば誰でも参加資格があるが、各プロジェクトに参加するにはメンバー登録が必要となる。ここでは、4月のリニューアルで、日本SGI(株)のグラフィックスワークステーション『Indy』や、『O2』が導入されている。

マルチメディアプロジェクトブース。日本SGI製のグラフィックスワークステーションが鎮座する
マルチメディアプロジェクトブース。日本SGI製のグラフィックスワークステーションが鎮座する



マルチメディアプロジェクトブース内の機材は、登録メンバーのみが使用できる。登録していない学生は、見学のみが可能となっている。

写真は、ノンリニアビデオ編集を行なっているプロジェクトのメンバー
写真は、ノンリニアビデオ編集を行なっているプロジェクトのメンバー



現在、プロジェクトブースでは以下の4つが実際に稼動している。

・“CG制作プロジェクト”
2次元/3次元CG、アニメーション、ポスターなどの制作

・“映像制作プロジェクト”
映像(ビデオ)のデジタル編集(ノンリニア編集)や、テレビCM、プロモーションビデオなどの制作

・“Medium(インターネットラジオ)プロジェクト”
インターネットラジオ放送局を運営。番組の制作・放送を行なっている

・“Web運営プロジェクト”
学内の研究室や各種プロジェクト、学友会に所属する団体などのホームページの管理とサーバーの運営


マルチメディアコンテンツ制作コーナーは、動画や音声ファイルなどコンテンツの編集・制作が行なえるエリア。全学生が利用可能となっており、時間制(1回当たり30分)を採用している。ここでは、ウェブブラウジングを行なう学生が目立つ。同学の情報処理サービスセンターシステム部の北村了氏によれば、就職活動の一環として、志望企業のウェブサイトをチェックする学生が多いという。

1人1台のパソコンを持ちこんで、LANコーナーはいつも盛況

学生に開放し、主に自習用のスペースとなっているのがLANコーナーだ。ここでは、すべての机にLANインターフェース(10BASE-T)が装備されている。

取材時は夏季休暇中のため、学生は少ないが、普段は満員御礼状態だという
取材時は夏季休暇中のため、学生は少ないが、普段は満員御礼状態だという



金沢工業大学では、入学時にすべての学生が、ノートパソコンを購入することになっている。大学が大手パソコンメーカーと提携し、市販価格の半額程度で提供している。ちなみに、'98年度の入学生は、モバイルMMX Pentium-133MHz、メモリー32MB(SDRAM)、HDD 2.1GB、12.1インチTFT液晶カラーディスプレー(解像度SVGA:800×600ドット)最大20倍速CD-ROMドライブ内蔵というスペックの富士通(株)製ノートパソコン『FMV-BIBLO』を所有している。もちろん、10BASE-T対応のLANカードが付属している。

このパソコンを校内ネットワークに接続して、ウェブブラウジングや電子メールなどを利用できる。学生には入学時に電子メールアドレスが配布され、校内のネットワークインターフェースに接続すれば、どこからでもメールの読み書きが行なえる。机にインターフェースが装備されているマルチメディア考房のLANコーナーは、学生にとって格好の“ネットワーク自習室”というわけだ。

LANコーナー以外にも、同学には至るところにLANインターフェースがある。教室はもちろん、食堂にも設けられているのには驚いた。

また、2000年4月の完成を目指して現在建設中の7号館には、24時間オープンの自習室を設置することも決まっているという。当然、この自習室にもLANインターフェースが配備される。

建設が進む7号館。学生のためのミーティングスペースと、24時間オープンの自習室が設置されるという
建設が進む7号館。学生のためのミーティングスペースと、24時間オープンの自習室が設置されるという



リニューアルでさらに活性化を目指す

マルチメディア考房は、今月中旬に2回目のリニューアルが施される。今回は、マルチメディアコンテンツ制作コーナーのパソコンのリプレースが中心となる。エプソンダイレクト(株)のPentium III搭載デスクトップ、『Endeavor PC』シリーズや、同じくPentium IIIを搭載した富士通(株)の『FMV-DESKPOWER』シリーズの導入が決まっている。

また、オーサリングソフトウェアなど、マルチメディア関連のソフトウェアも新規導入を予定している。たとえば、オートデスク(株)の3Dグラフィック/アニメーションソフト『3D Studio MAX Release 2.5』や、エイリアス・ウェーブフロント(株)の3Dモデリング/レンダリング/アニメーションソフト『Maya 1.5』などが導入される。

同学では、リニューアルを契機に、学生のマルチメディア考房の利用をさらに促したいとしている。

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