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「ホームラン狙いのパッケージ箱売りより、ヒットの見込めるパッケージインテグレーション」--日本コンピュータ研究所、中野社長に聞く

1999年07月29日 00時00分更新

文● 文:大木美穂、聞き手:編集部 中野潔

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(株)日本コンピュータ研究所が、攻勢を掛けている。4月に北海道支社函館分室を開設、7月1日に福岡市の九州支社を開設した。6月25日には、RAD(Rapid Application Development)ツールの米ダイナスティ・テクノロジーズの日本法人設立に際して出資した。さらには、2000年秋以降の株式公開を見据えて、組織改革も進めている。不況下にあって、インターネット事業と“パッケージインテグレーション事業”などを積極的に展開し、その甲斐あってか、'97年9月期に43.7億円、'98年6月期に実質9ヵ月で49.6億円と、売上が急拡大。代表取締役社長の中野正三氏に近況をうかがった。
 

ビジネスユーザー向けを中心として好調なインターネット事業

--インターネット事業が好調だそうですね。プロバイダー事業のほかにウェブページの製作なども請け負うのでしょうか?

「大手企業のウェブページも多数お引き受けしていますよ。我が社の社名ではなく、発注主の企業の名前なので、ページを見ても分かりませんが。例えば、住宅メーカーのホームページでは、ウェブ上で住宅ローンのシミュレーションができるシステムなども作りました。それからプリンターメーカーのオンラインカタログやテレビの番組情報提供会社のページなども手掛けています。また、ブラウザー向けに、CATVの動画データの画像形式を変換したり、いろいろな企業のサーバーをうちで用意したりしています」

「インターネット事業は弁当と似ている?」と(株)日本コンピュータ研究所の中野正三社長
「インターネット事業は弁当と似ている?」と(株)日本コンピュータ研究所の中野正三社長



「昨年には、”BENTO(ベント)事業部”という名のインターネット部門を新設しました」

--なぜBENTOという名称にされたのですか?

「BENTOは、ラテン語です。オブジェクト指向分野での、プログラミング用語にも、同じ言葉があります。また、弁当箱という意味も持たせています。レンタルスペースという箱をうちで提供し、中はユーザーさんに自由に使って欲しいとの思いで付けました」

--対象は、どういった層のユーザーさんですか?

「ビジネスユーザー向けです。中堅から大手企業のホームページの設計・制作、管理などをアウトソーシングの形で請け負います。当初、コンシューマーも対象にするつもりで準備していました。しかし、得意な方に注力した方が、お役に立ちやすいということで、絞り込みました」

--コンテンツ作りからサポートするのですね。

「コンテンツは基本的にユーザー企業さんが作ります。うちはそれ以降の作業ですが、中でも24時間稼動し続けてのサーバーの運用が一番大変です。管理者はポケベルを携帯してトラブルに備えていますよ」

中国は開発拠点、米国では日本向けローカライズ

--海外事業も進めていらっしゃいますね。

「海外では、今のところ米国と東南アジアを対象としています。東南アジアというのは、具体的には中国のことです。経費の安い現地でソフトウェアを開発するのです。日本での受注を中心に展開します」

「日本に持っていくソフトを米国で探したいというのもあります」
「日本に持っていくソフトを米国で探したいというのもあります」



「米国では、日本向けソフトのローカライズをします。ライセンスの問題もあり、日本にソフトウェアのソースを持ち込むのは難しいので、現地で作業します。開発元との連携も取りやすい。それと、扱う品数をもう少しそろえたいという狙いもあります」

--パッケージソフトの品数ですか。そういえば'80年代なかばに、理容業向けパッケージの“サロンマスター”というのを出されていましたね。

「流通が整備されてない時代だったので、直販で若干売れたにとどまりました。それ以前に開発したFM-11向けワープロソフトも、大当たりしたとは、いいがたい状況でした。当時は、大規模投資する力がなかったんですね。本格的にパッケージを始めたのは'93年からです」

--どのようなものを出されていたのですか。

「開発ツールの“MARS”、コンバージョンツールの“MOTTOシリーズ”などでした。“旅友”も出していました。なお、3つとも現在は、販売していません」

--“旅友”もビジネスユーザー向けですか。

「旅費算出と経路確認ソフトの“旅友”は、前2者とは、かなり性格が違いっていましたね。コンシューマー向けには、“旅友”と、現在も販売している音楽教育用の“Music Ace日本語版”があります。“旅友”は秋葉原などのショップでも購入できました。一時期、ソフトの自動販売機でも買えましたね。”Music Ace”は、米国で開発され、普及しているものの日本語版です。でも日米で音楽の教育指導要綱も音符の読み方がかなり違うので、米国ほどには売れていません」

「音楽教育の仕方が日米で違うから、パッケージを持ってくればいいというものでもないのですね。箱売りは難しい」と中野社長
「音楽教育の仕方が日米で違うから、パッケージを持ってくればいいというものでもないのですね。箱売りは難しい」と中野社長


「“マルチメディアで学ぶためのC/Sシステム”というのもあります。これは、クライアント/サーバーについて学ぶCAIソフトです。ただ技術進歩が速く、内容の改訂が追いついていません。“発創力”は、KJ法のようなアイデア処理のソフトです」

ホームランよりヒットのパッケージインテグレーション

--パッケージの売り切りだと、低価格競争に陥る危険性がありませんか?

「箱売りするパッケージ販売の他に、開発ツールのパッケージを軸にインテグレーションを加え、カスタマイズして納入する事業があります。これを、パッケージインテグレーション(PI)と呼んでいます」

「パッケージ販売では、当たりはずれのぶれが生じ、販売数の読みが難しいのです。もちろん、複製費用はそうかさみませんから、たくさん出れば、大きな利益が見込めます。PIでは、工数原価を積み上げますから、大儲けはできません。しかし、需要の確実にあるところに売り込みに行きますから、需要が読めます」

「パッケージではホームランか空振りか読めませんが、パッケージインテグレーションならヒットが見込めます」
「パッケージではホームランか空振りか読めませんが、パッケージインテグレーションならヒットが見込めます」



「そうした利点があるので、箱売りよりもPIに注力するようになってきました。一方、ゼロから開発する受託開発と比べても、メリットがあります。パッケージがあると説明や提案がユーザーにも理解しやすいのです。パッケージの説明書は、提案書作りにも役立ちます」

--PIでは、どのようなパッケージを扱っていますか?

「統合型カスタマー支援ソフトの“Carify”やレポート環境ツールの“Actuate”、ビジネスモデリングツールの“ProVision”などです。CTIシステムの“VOISTAGE”は、PIに入るか入らないかといった性格ですね。PI事業本部では、大きなシステムとなる前3者を扱います。その他は、受託開発を実行している技術者が、合間を見つけてカスタマイズできます」

「“Clarify”はNECや富士通のバックアップがあり、営業体制が整っているので、うちはカスタマイズを受け持ち、また、“Clarify”のコールセンターを社内に設置しています“Dynasty”では、合弁会社を設立しました。サポートや日本語化はうちでやります」

--PIが稼ぎ頭なのですか?

「年商のうち、PI(パッケージインテグレーション)とSI(システムインテグレーション)の合計が1割前後、パッケージ販売がその半分程度、インターネット関連やテクニカルコミュニケーションがさらにその半分程度で、あとは、広義の受託開発です」

米国企業の支社から始まった

--貴社は、外資系企業として出発したそうですね。

「'66年に米コム・スチュアート社の日本支社として、コンパイラーの専門会社を目指してスタートしました。創業者の姉が住むミシガン州を登記上の本社にしていましたが、活動の場は主に、創業者が暮らす日本でした。しかし、日本で融資を受けるには国内の法人格が必要ということになり、'76年に(株)日本コンピュータ研究所を設立しました」

--創業以来、一本調子で伸びてきた感じですね。

「'60年代末から、発注元企業に常駐して受託開発する方式を加えてから成長軌道に乗りました。'97年9月期の売上高が43.7億円、'98年6月期は実質9ヵ月ですが、49.6億円。'99年6月期は約60億円を見込んでます」

--7月1日の組織改革は、店頭公開を見据えて、という触れ込みでしたが。

「ええ、2000年秋以降になると思いますが、店頭公開を考えています。今が公開するいい時期だと判断しました。筆頭株主は社員持株会ですから、社員に還元できます。公開後には支店も増やすつもりです。また、日本に進出を希望するいい会社があれば合弁会社の設立や企業買収も考えていきます」

「筆頭株主が社員持株会なので、株式公開すれば、社員は喜ぶだろうな」と中野社長
「筆頭株主が社員持株会なので、株式公開すれば、社員は喜ぶだろうな」と中野社長

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